一昨日、台風22号がセブ島を直撃しました。

僕がオフィスを構えているセブ島は特に甚大な被害で、24時間以上経った今もまだ、電力もインターネットも回復していません。ガソリンスタンドは半分ほど閉店しており、開いているスタンドはどこも長蛇の列です。また、あちこちで電信柱や街路樹などが倒れ、交通が滞っています。上水道も寸断。回復にはどんなに早くても１〜２週間はかかりそうです。

そんなわけで、昨日はずっと経過を見守っていました。そして被害状況が明らかになるにつれ、 急遽メルマガの執筆を取りやめ、 安否確認に当たりました。しかし当初は携帯電話さえ繋がらず、かなり焦りました。

焦っても仕方ない。

そんなことは分かっています。でも、こんな時って焦ってしまうものですよね。

「動かされないようにしっかり立ち、主の業に常に励みなさい」

これ、 20年以上前にキリスト教系の幼稚園に通っていた長男が、当時習ってきた聖句です。すごく心に残り、それ以来ずっと大切にしてきました。そして何か大変なことがあるたびに、いつもこの言葉を思い出すようにしています。

いつも冷静にどっしりと構えている人。そんな人に憧れますよね。

僕はそうそうパニックを起こす方ではありませんが、流石にここまでの非常事態が起きると、やっぱり冷静ではいられません。僕が焦っても状況が改善しないことはわかりきっているのですが、とは言え安否が確認が進まない中、冷静を保つのは難しいものです。

心が揺れないほうがいいけれど

もちろん心を揺らさずに済むならそれが理想だとは思うのですが、現実にはなかなかそうもいかないものです。実際、この2年間で人間の心の脆さを痛感した人、すごく多いと思うのですね。

また、感情を揺らさないようにしようと頑張ると、かえってものすごく消耗します。しかもこれ、科学的にも実証されています。感情を堪えることを指示されて悲しい映画を見たグループと、特に何も指図されずに同じ映画を見たグループが映画鑑賞の前後で体力測定をしたところ、感情を抑えることを求められたグループの方は、映画鑑賞の前後で体力の減退が見られるのです。この本、他にもさまざまな実験が紹介されていますが、感情を堪えるって、ものすごく消耗する作業なのです。

なので短期間なら心を揺らさないようにできても、そのうちに必ず折れますし、仮に折れなくても、 体力を消耗して他のことができなくなってしまったり判断力が低下してしまうのです。 

なので、「心を揺らさないようにする」というアプローチが、そもそも間違っていると思うのです。 それよりもむしろ、「揺れてもいいから、素早く元に戻れるようにする」方が、より現実的です。

「元」ってどこよ？

そこで問題になるのは、「『元』ってどこ？」という話です。 つまり、揺れた心を戻す場所です。定位置がわからなければ、戻しようがありません。

で、思うにこの定位置こそが、聖書の言う「主の業」なのです。

人間の心って不思議なもので、自分のことだけ考えていると心配事が膨らんで、ますます激しく揺れるものです。コロナでこれをまざまざと体験した人、とても多いと思うのです。でも、なぜか他人の幸せを願って行動していると、落ち着きを取り戻せます。

自分自身、自分の家族、あるいは友人や同僚たちの幸せを願い、それを叶えるべく考え、行動するとでも言えばいいのでしょうか？　

別に世界を変えることも、社会運動を起こすことも、大発明の必要もなくて、ただ半径３メートルくらいがハッピーに生きられることに集中したらいいと思うのです。たったそれだけのことで、なぜか心が落ち着くからです。

なので、給料を稼いで家族を養うとか、家事や子育てや塾の送り迎えをするとか、そういう平々凡々な日々の繰り返しが、まさしく「主の業に励む」ということだと思うのです。そして周りの人がちょっとだけ幸せに生きられたら、それでもう十分だと思うし、心の定位置として、これ以上のものはないように思うのです。

なので今日も仕事します

と言うわけで、今朝はいつも通り瞑想から1日をスタートし、まったく普通通りに過ごすことにしました。安否確認もだいぶ進み、あと11名まで来ました。先程オフィスの非常用電源も入り、インターネットも回復。スタッフとZoomで対策を話し合いました。

現地はまるで、爆撃を受けた戦地のようです。

明日にはわずか講師２名だけですが、レッスンを提供できそうです。二人ともオフィスの徒歩圏に住んでおり、仕事復帰を申し出てくれました。本当にありがたいことです。そしてこうやって他者に貢献することが、本人たちの心をも落ち着けると思うのです。自分のことばっかり心配していると、心って揺れまくりますが、他人のために動き出すと、なぜか落ち着くものだからです。

明日はメルマガをお休みしますが、来週からは通常運行に戻せると思います。

それでは皆様も、動かされないようにしっかりと立ち、主の業に励みください！