松井哲也

大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部ロボット工学科講師 著書:「ロボット工学者が…

松井哲也

大阪工業大学ロボティクス&デザイン工学部ロボット工学科講師 著書:「ロボット工学者が考える「嫌なロボット」の作り方: ヒューマンエージェントインタラクションの思想」青土社 研究室:https://sites.google.com/view/tetsuyamatsuioit/

最近の記事

樋口円香に花束を

本記事は、2023年10月27日に研究室ブログに掲載したものの再掲である。 私事で恐縮だが、私の父は恐ろしく趣味のない人間である。しかし、何年かに一度の頻度で、何かに異常なほどにのめり込むことがある。一時期はコーヒーを挽くのにハマり、寝ても覚めても豆を挽いていた。 「アイドルマスターシャイニーカラーズ」(以下シャニマス)の、樋口円香の過去の物語であるS.T.E.P編が実装された時、初めて公開された円香の部屋を見て、私は真っ先に父のことを思い出した。 このシナリオのテキス

    • 大津市のサバンナモニター脱走事件によせて

      本記事は、2023年8月28日に研究室ブログに掲載したものの再掲である 滋賀県大津市で、大型トカゲの「サバンナモニター」が脱走したというニュースが流れた。 ニュース記事によると、この個体はケージに入れず、室内で放し飼いにしていたらしい。 私もサバンナモニターを飼育しているが、サバンナモニターは要求する温度と紫外線量が大きい種である。 我が家では三種類の保温器具(バスキングライト、パネルヒーター、暖突)で保温し、紫外線ライトも我が家では最も強いものを使用して、もちろんケ

      • 動物愛護問題における他者モデルと「宣王のジレンマ」

        本記事は、2023年8月4日に研究室ブログに掲載したものの再掲である HAI分野の一部には、ロボット・エージェントが他者とインタラクションする他者を「他者モデル」によって実現しようとする一派がいる。 他者モデルとは、「単純化・理想化された他者」であり、我々が他者と関わり合うことができるのは、この「他者モデル」を持っているからだ、と、この一派は説明しようとする。 私はこの研究姿勢には一貫して批判的立場である。このことは、青土社から上梓した「ロボット工学者が考える『嫌なロボ

        • 猫と爬虫類:human-reptiles interactionの可能性

          本記事は、2023年7月18日に研究室ブログに掲載したものの再掲である 私は50匹ほどの動物を飼っている。猫とウサギとモルモット以外は、爬虫類・両生類・節足動物だ。 (再掲時追記:その後、残念ながらウサギは死んでしまった) 爬虫類好きの人間は、かなりの確率で猫好きでもあると言われる。私は、飼育動物としての猫と爬虫類には重大な共通点があると考えている。 それは、「モデル化できない」ということだ。 モデル化できないとは、簡単に言い換えれば「予想できない」ということである。

        樋口円香に花束を

          天然知能で考えるSHHis

           本記事は、2022年5月24日に研究室ブログに掲載したものの再掲である。  なので当然ながら、記事中の考察はその時点でのシャニマスのストーリーに基づく 拙著「ロボット工学者が考える嫌なロボットの作り方」では、郡司[1]の「人工知能・自然知能・天然知能」モデルを援用している。だが、この前提となるモデルをわかりやすく伝えることは、なかなか難しい。そこで、このモデルを説明するのに、ゲームの「アイドルマスター シャイニーカラーズ」に登場するユニット・SHHisを例にするのがいいの

          天然知能で考えるSHHis

          おばけ工学(HGI)宣言

          本記事は、2022年5月16日に研究室ブログに掲載したものの再掲である HCI(ヒューマンコンピュータインタラクション)、HRI(ヒューマンロボットインタラクション)と比較して、HAI(ヒューマンエージェントインタラクション)では、インタラクションの相手が実体を持っていなくてもいいという特色がある。 それでは、相手が実体どころか実在性すらも想定できないような対象とのインタラクションを考えることはできないか? ――そのような発想で始まったのが「おばけ工学」であり、これまで

          おばけ工学(HGI)宣言