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日本におけるデジタルノマド誘致は成功するのか?

日本で初めてのデジタルノマド・サミットが福岡で行われました。僕自身も日本デジタルノマド協会顧問として名前を連ねさせていただいているのもあり、そこでお話させていただく機会をいただきました。

まずは日本ではいちはやく海外から50名を超えるデジタルノマドを誘致して1ヶ月近くさまざまなプログラムを実践している株式会社遊行のネットワーキング力と行動力、実践力がすごいなと思います。

ネットワーキングの様子

まさに日本はデジタルノマド元年を迎えたと言えそうです。これを皮切りにインバウンドの観光と並んで特にビジネス、スタートアップの文脈からもデジタルノマドへの注目が高まりそうです。

デジタルノマドをどう捉えるか?

この流れの中でデジタルノマドをどう捉えるのか?海外を中心に研究論文もかなり蓄積が進んでいる印象を受けます。これまでも例えば以下のようなものを紹介しました。

日本においてポイントとなりそうなのは目的としてのデジタルノマド、アプローチとしてのデジタルノマドという整理かなと思います。個人のワークスタイルやライフスタイルとして、また企業における働き方の制度や人材の面では前者になります。一方で、地域で移住や観光、ビジネスという意味では後者として捉えることが重要になります。

デジタルノマドとワーケーションは何が違うのか?

この違いもこれから多く聞かれそうです。ただ思い返して欲しいのですが、ワーケーションという言葉はそもそもデジタルノマドたちのワークスタイル、ライフスタイルを指して名付けたという経緯があります。

一方で、関係人口・移住促進や社会課題解決などの色合いが濃い「日本型ワーケーション」は海外のデジタルノマドにとって魅力的に映るポテンシャルを秘めています。

これらを踏まえてシンプルに違いを言えば、デジタルノマドは「人」、ワーケーションは「経験」です。デジタルノマドでワーケーションをしていない人はいないと言えそうですが、ワーケーションをしている人はデジタルノマドとは限らないと言えるかなと思います。

この両者をうまく重ねる、組み合わせる連結点として「一肌脱ぐ」という概念を探っています。先日はワーケーションの文脈で書きましたが、両者をつなげるという文脈でまた近々考えたいと思います。

オリジナリティをつくるために

今回の福岡での一連のデジタルノマド誘致は非常に成功していると思います。海外ではチェンマイやバリ島、マデイラ島などの先行事例もあります。自分たちの地域でもデジタルノマド誘致を!となったときに「先行事例探し」に固執しすぎると失敗しそうです。他の地域も福岡や海外に倣え、となっても全く同じ地域ではないので難しい部分があります。

振り返ればワーケーションでは軽井沢や白浜などが先行事例として取り上げられました。もちろん両地域とも素晴らしい展開をしています。しかしそのままそれをコピーすれば自分たちの地域もうまくいくというわけではありません。少し文脈は異なりますが中国でも「コピー観光地」が乱立し、どこにいっても似通ってしまう状況があるようです。

そこで留意すべきは以下の2つを区別・整理することだと思います。

  • 最低限整えること

  • 差別化できるオリジナルな要素を見出す・打ち出すこと

前者に関してデジタルノマドたちにとって必要なデジタル環境や中長期滞在のための食・住、英語など言語サポートや情報提供を整えることです。これらに関しては先行事例を見て、参考にすることが効率的です。そしてそれはバックパッカーなども含めて「中長期滞在する観光客」ではなく仕事をしている人々という認識を持った上での環境整備になるべきです。

一方で後者は他国ではなく日本が、他の地域ではなく自分たちの地域がデジタルノマドたちに何を訴求するのか?自分たちのコンセプトやメッセージが問われます。そこで重要になるのは他の国・地域の事例ではなく考え方や思想、感じ方、枠組みなど少し上のレイヤーを共有し、頭を動かして捻り出すことです。

地域で考えるとそもそも中長期の滞在やニーズなどを考えると、広く広報して何万人と押し寄せることを目指すべきではないでしょう。今回の福岡は50人でしたが、まずは10人を考えてみるとよい規模かなと思います。

デジタルノマド・ビザの整備も日本でこれから進めるということでインバウンドと併せて動きはより活発化してくると思います。ロシア・ウクライナ、イスラエルなど国際情勢の不安定さもあるなかでデジタルノマドについてこれからも研究を進めていきたいと思います。

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