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デジタルノマドを受け入れる・獲得する準備はできているか?

日本でもデジタルノマドへの注目が高まってきています。2023年8月には日本デジタルノマド協会も立ち上がりました。松下も顧問として末席に加えさせていただいております。英語での論文や書籍など研究領域でもワーケーションよりもデジタルノマドをキーワードにしたものをよく目にします。

デジタルノマドというとバックパッカーでフリーランスのしごとをしている人というイメージが強いかもしれません。しかし近年はそうしたイメージとは異なります。

ワーケーションは日本的な視点だと2-3泊を想定していることが多いかと思いますが、DNEは1ヶ月、さらにはデジタルノマド・ビザなども議論されているように観光ビザを超えて1年単位などを想定したものになります。

以前、デジタルノマドというよりもDNE(Digital Nomadic Employees: デジタルノマド的社員)にも注目すべきではないかということについて書きました。

例えばMBP Partnersの調査ではアメリカのデジタルノマド人口は2019年に730万人だったのが2022年には1690万人と2倍以上になっています。ただしその内訳を見ると独立ワーカー(2019年4.1%→2022年5.8%)よりも社員ワーカー(2019年3.2%→2022年11.1%)が多くなっています。

Nomad Listによるデジタルノマド調査でもフルタイムが42%で最も多く、フリーランス17%、スタートアップ創業者16%と続きます。また収入も平均で約12万ドル(1700-1800万円)、中央値で約85万ドル(1200万円)と日本で考えるとかなりの高所得層になります。

実際にコロナ禍以降に訪問したデジタルノマド村があるマデイラ島などでも同じような印象を受けました。

DNEを含めて彼ら彼女らは移動(越境)マインドとそれを可能にする経済力・スキルを持っている人びとと位置づけられそうです。

観光の文脈ではこうしたDNEのニーズやそれへの対応を考えることが重要になります。例えばデジタルノマド・ビザが日本でも解禁されたとして3ヶ月や1年滞在する人を観光としてどのように受け止めるのか。あるいはさきほどのNomad Listの調査では女性に限ると職種はマーケティングとクリエイティブがそれぞれ15%で最も多くなっており、エンジニアではありません。こうした職種の人に対してそれぞれの地域においてどのようなものが資源(や刺激)になりうるのか、環境整備について考えてみる、つくってみることがこれまでのワーケーション事業・施策の延長として重要になりそうです。これは観光だけではなく移住や産業振興などの部署や領域とも重なるものです。

また企業の文脈でも海外ではDNEが増えているなかでコミュニケーションや協業のやり方をそれに適応することが求められそうです。自社の社員も国内・海外含めてDNEとして働きたいという人も増えてくるでしょう。人手不足も叫ばれるなかで、そうした人材を引き付ける、引き止めるようなワークスタイルや報酬体系含めた制度を整えることは人材確保・育成の視点からも重要になってくると思います。


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