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受け取る勇気


「そうなのよ!今年も良いのができちゃったのよ~!」
電話から、母の明るい声が聞こえる。

以前から母は、家庭菜園でタマネギが採れたとか、キュウリが食べきれないほどできてしまったとか、よく電話してくる。

私ったら、仕事の日は料理自体ができなくて、休みの日なんて寝て終わってしまうので、キュウリを切ることすらレベルが高すぎるって感じだ。

だから、母の「いっぱい採れちゃったから送ろうか?」が、ちょっと煩わしかった。

「こっちでもタマネギとか売ってるから。宅急便の料金を考えたら、こっちでスーパーで買った方が安いでしょ。」

いつも、そうやって断った。
実家に帰省した際に、食べ物をたくさん持たされて帰ってきて、腐らせてしまったことがあった。その時の罪悪感ったらなかったし…。


この前、近所のスーパーに行ったら、とても大きなプリプリした新タマネギが売っていた。広告の品で38円…!私はそんなにタマネギ好きではないけれど、何だか無性に美味しそうに見えた。

思わず手に取ろうとしたけれど、引っ込めた。そのまま買おうかどうか、店内をぐるぐる歩きながら悩み、結局買わなかった。自分でもどんな心境だったのか不思議だけれど…


宅急便で送ってもらう手間も料金もかかるけど。
送ってもらって腐らせてしまうかもしれないけれど…。

でも、せっかくなら、お父さんとお母さんが育てたタマネギ、送ってもらおうかな…。

なぜだか、そんなことを思った。


「やっぱり、タマネギ送ってもらおうかなぁ。」
母に電話したら、私が言い終わらないうちにすごい勢いで
「何個送る?」ってかぶせてきた。
母は、張り切ってるみたいだった。


電話から母に送ってもらった段ボール箱には新タマネギの他に、調味料やらお茶やら色々入っていた。

最近の私は弱っているのか、よく分からないけれど、何だかありがたくて涙が出た。タマネギをスライスしたら、もっと泣けてきた…。



私は自分にぴったりの物じゃないと、正直、いらないと思っている。
それは物だけじゃなくて、気持ちとか感情とか、そういう形にならないものも含めて。

でも、自分の思ったとおりの物じゃなくても、もらっていいんじゃないのかな…とも思った。例えば、黄色の色鉛筆が欲しかったとして、12色セットの色鉛筆をもらったっていいじゃない?使わない色があったとしても。

「受け取る」って、そういうことも含めて、受け取ることなのかもしれない。
私は器が小っちゃい方だから、一緒に受け取ってしまうもの…煩わしさとか面倒くささとか、罪悪感とか、そういうものがこわくて断ってしまう。

でも、勇気を出してガバッと…!一気に大きな器で受け取る。
そこで初めて感じる幸せも、あるかもしれないなぁって思った。



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