夏になると
自分の死臭を感じていたあの頃
それから長い間それは消えていたのに
また始まったようだ

今度こそ
今度こそお迎えがくる
今度こそ
本物を感じることすらできなくなる
頭の中にテロップがぐるぐる巡り出した

緊張で心が砕けたからだろう
人の心が見えて
しかも悪い思いが見えたので
パニックになり
頭の中が真っ白になり
でも追い打ちをかける様に
嫌だと思わているという相手の意識が
ズンズンズンと心を侵食した

私はもう駄目なんだろう
今度こそ本当に駄目なんだろう

覚悟を決めた私は
見知らぬ駅で暖房の効いた電車を降りた

次の電車が来た

ここは特急電車は停まらないらしい

視界が真っ黒で
その臭いが立ち込める3歩前まで
私は静かに歩みを進めた

もう死臭を感じることはない
本物の屍人になれたのだから
もう心引き裂かれることはない
この体が裂かれる事があっても