ゆってぃのモノマネ1発で農学部を制覇したんだ(大学デビュー天下獲り物語②)
前回の①の続きです。
https://note.com/matsumototakeuma/n/n26f9eedc92db
今回は、僕が大学で成り上がっていく栄光時代のお話しです。
大学デビューのポイントは、「まず女の子より男から仲間にしていく」「スタートダッシュが肝心。ゴールデンウィークまでが勝負」「流行ってる芸人のギャグをパクるとかは、恥を捨てて全力で」です。
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(※昔の素人の感覚で書いてるので、敬称は略させていただきます)
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大学の入学式の5日後、僕らは3人で大学の学食にいた。
僕と村崎、そして入学式のときに僕が勇気を出して話しかけたオシャレ関西人、新一郎だ。
新一郎はとても気さくなヤツで、僕が関西のノリの良さを褒めるとすぐに心を開いてくれた。
そこからは自虐に太鼓持ち、そして今までの人生でウケた話しを必死にして、なんとか新一郎の笑いを取った。
そして、新一郎は仲間になったのだ。
高校生活で僕は学んでいた。あのときは、自分から声をかけたり、一歩踏み出す勇気が出ずに、変に声をかけられるのを待って、1軍入りが取り返しのつかない時期になってしまった。
スタートダッシュこそ肝心というのが、絶対なのだ。そして初めに誰と仲良くなるのかも。
最初に新一郎を仲間にできたのは、僕の大学天下取り計画では良い足掛かりだった。
オシャレで身長の高い新一郎が仲間にいるだけで、グループのセンスが5上がった。
僕は自分の大学デビューがバレないように、新一郎のペースに合わせて喋った。
新一郎が大学に入るまでにやっていたヤンチャなことも、あたかも自分も経験したことがあるかのように相槌を打った。
女の子の話しになったとき、新一郎がドキっとすることを聞いてきた。
「まっちゃんってさ、童貞じゃないよね?」
なんて言おうかと一瞬迷ったが、横には村崎もいる。
ここで嘘をついて、後でバレた方がヤバい。僕は瞬時にそう考えた。
「実は童貞なんだよなーまあ機会がなかったことはないんだけど…」
「マジで!じゃあ合コンしようや、合コン!」
「お、おお!頼むわ!童貞捨てさせてくれー!」
女の子関係は新一郎にマウントを取らせた方が良さそうだ。そっちの方が後々困らない。
新一郎が入学前に、すでにモバゲーで連絡をとっていた看護科の女の子と合コンするという話しになったところで、僕らは昼からの講義に向かった。
教室に入ると、すでに僕ら以外にも何個かグループができていた。
しかし、おそらく今の時点で1番派手なグループは7色ヘアーの僕とオシャレな新一郎がいるこのグループだ。
村崎と新一郎を2人掛けの席に座らせて、僕は1つ空いてる席に座った。
僕がこの天下取り計画でもう1人、なんとしても仲間に加えておきたい人物、隆志の隣りだ。
隆志は入学式のときから目立っていた。
左耳に大きなピアス、清潔感のあるソフトモヒカン、甘いマスク。そしてガタイが良い。絶対ケンカ強いだろうっていう体格の持ち主だ。
こいつがグループにいると、もし他のグループから因縁をつけられても、絶対倒してくれそうだ。
大学生だろ?国立の?
因縁つけるとかないだろ、中学生じゃないんだし。ケンカ強そうってなんだよ。
と、今になっては思うこともあるが、当時の僕は本気で思ってた。
隆志はケンカ強そうだから絶対仲間に入れたい。
まったく興味のない稲の刈り取り機の流通がどうとかの講義が始まった。
僕は小声で隆志に話しかけた。
「この講義さ、今後の人生で全く必要ないよな?」
「…いやオレん家、農家なんやけど。」
ヤバい、地雷踏んだ。
「ああ、じゃあ必要かもな。すまん。」
「……。」
スタートダッシュというのは肝心だ。
僕はただでさえ、一見汚い茶髪だが、美容師曰く角度によっては7色に見えるというイキった髪型をしている。
これで最初になんか調子乗ってるヤツとして煙たがられてしまうと、今後どんどんボロが出てしまう。
あんな感じだけど喋ってみたら人当たりの良い面白いヤツでいなきゃいけないのだ。敵は作っちゃいけない。
打開策の見つからないまま講義が終わる。
席を立つ隆志に僕は咄嗟に声をかける。
「今度、看護科の女の子と合コンあるんやけど、ヒマやったら来ん?」
隆志は一瞬怪訝そうな顔を浮かべて、「ヒマやったらな。」とだけ答えて去った。
大失敗だ。つまずいた。
これで隆志は他のグループに入るかもしれない。
ケンカ強そうなのに。
そしてその隆志の入ったグループが盛り上がっていれば、新一郎もそっちのグループに流れてしまうかもしれない。そうなればそのグループが農学部の1軍だ。
次の日の講義、僕は隆志の前の席が空いてたので村崎とそこに座った。
振り返ってもう一度話しかけようとしたができなかった。
あまりにも下からヘラヘラいきすぎると、それはそれで舐められる。
あくまでも対等な関係のまま、仲間にしなければいけないのだ。
そんなとき村崎が、何の気なしに隆志にはなしかけた。
「ペン使う?」
振り返ると、隆志は筆箱を忘れているようだった。それに村崎は気づいたのだ。
「あ、ああ。」
隆志は小声でありがとう。というとペンを受け取った。
村崎、お前は良い働きをしたかもしれない。
講義中、村崎がある紙を僕に差し出してきた。
その紙にはヤンキーの似顔絵が書いてあり、その上に「西中の尖ったナイフ、山本龍二」というキャッチコピーと名前が書いてある。
その下には「攻撃力1500 守備力800」という文字。
僕もノートを1枚破り、ヤンキーの似顔絵と情報を書く。
「狛江の狂った狂犬、真柴兄」
「攻撃力1700 守備力700」
僕と村崎の間で高校生のときからやっているオリジナルゲーム、ヤンキー遊戯王だ。
お互いにヤンキーを書いて、デッキを作り戦わせ合う。
今思えば何が面白いが全く分からないが、当時の僕らは何故かこれをゲラゲラ笑いながらよくテニス部の部室でやっていた。
村崎の書くヤンキーの絵とキャッチコピーが絶妙なのだ。
「攻撃、真柴兄は攻撃力1700だからオレの勝ちな。」
「うわー負けた。てか待って、お前これ。狛江の狂った狂犬って…2回狂ってんじゃん。」
「ほんとだ。ははっ…」
「ははっ。」
後ろから笑い声が聞こえた。
隆志だ。隆志が見ていた。
大学デビューを決めた僕は、こんなオタクみたいなダサいこと誰にもバレないように小声でこっそりやってたつもりだったが、隆志は後ろから全部見ていたのだ。
「なにしてんの、それ?」
隆志は意外にも楽しそうに興味心身といった感じだった。
「いや、これは…」
僕が戸惑ってると、村崎が今まで作ったデッキを差し出した。
「お前もやる?」
「やらんわ!」
隆志は笑いながら、ツッコんだ。
講義が終わり、隆志が村崎にペンを返して、僕に言った。
「前言ってた合コンっていつなの?」
こうして隆志は仲間になった。
オシャレで身長の高い関西人、新一郎。
イケメンでガタイがよくてケンカの強そうな、隆志。
そして、僕と村崎。
こうして農学部に目立ってる4人組のグループができた。
F4の誕生だ。
この4人で歩いてるととにかく目立った。
新一郎と隆志がイケメンで身長が高いっていうのがほとんどの理由だろうが、仲間に加えて欲しいと、どんどん他のイケてるヤツらも集まってきた。
人数も増え、僕のグループはあっという間に農学部の1軍になった。
ちなみに看護科との合コンは散々だった。
始まる前はナースの卵だ!とみんなテンションが上がってたが、蓋を開けてみたら4人中3人の顎がしゃくれていて、1人は太っていた。
でもそれはそれで楽しかった。
外れだったなーと終わった後、みんなで笑い合った。
大学生なんてそんなもんだ。
今考えればとても失礼だけど。
そして、4月の後半。
一大イベントがあった。
新歓サークルというのだろうか、農学部の学科ごとに毎年先輩達が行ってくれてる新歓コンパだ。
F4結成のおかげで勢いに乗ってる僕は賭けに出た。
自己紹介でギャグをしようと。
これで自分の地位を確固たる物にしたかったのだ。
今まではプライドがあってできなかった。勇気もなかった。
全校生徒の前でギャグをする村崎を冷ややかな目で見てた。
でも今は違う。プライドなんてとうに捨てた。
全てはこの大学で成り上がるためだ。
結論から言うと、当日、僕はゆってぃのモノマネ1発でそのサークルの代表に上り詰めた。
細かい流れは覚えてないが、自己紹介の前、誰かが飲み物をこぼしたかなんかのときに、「小さいことは気にしなーい。それワカチコ、ワカチコー。」みたいなことを全力でやったのだ。そう、全力で。
プライドを捨ててキレキレの動きで全力でやったからか、宮崎がそもそもテレビのチャンネルが2つしかないようなお笑いの文化があまり根付いてない田舎だったからか、これがウケた。
「来年からの新歓はもうお前に任せるわ。」
先輩が笑いながら、そう言ってきた。
昔から信じてた「人とは違う面白い発想を持ってるオレ」なんてどこにもいなかった。
そこから僕は芸人のギャグとかをパクりまくって、とにかくその新歓コンパを盛り上げた。
新歓コンパが終わり、すでに農学部でも肩を切って歩くようになったとき、ある女の子のグループと仲良くなった。
農学部で1番可愛いと言われてる1軍女子グループだ。
可愛い子は可愛い子とつるむというが、見事に農学部の可愛い子がそのグループに集まっていた。
その1軍女子グループの1人と、自動車教習所が一緒になった僕は、今乗ってる勢いのままその子に話しかけた。
その子は僕たちのグループのことも知ってて、なんと僕はその1軍女子グループとのコンパをセッティングすることができたのだ。
目論見通りだ。目立ってたら女子は後からついてくる。
これには、男達はみんな食いついた。
我先にメンバーに入れて欲しいと僕に頼んできた。
僕はF4のみんなとあと2人くらいを選び、6人でそのコンパへいった。
そして、そのコンパで順調に僕らは仲良くなり、憧れのグループ交際が始まった。
オレンジデイズだ。柴咲コウと妻夫木聡だ。
新一郎はそのグループの中でも更に可愛いと言われてた女の子と付き合い、僕はその教習所で出会った子ですぐ童貞を捨てた。
ドリームだ。夢を叶えたんだ。
ゴールデンウィークの始まる頃には、僕はもう僕の思い描いてた夢の大学生活を手に入れたのだ。
そこからは順風満帆に過ごした。
新一郎が別れて、その一軍女子グループとは結局気まずくなりグループ交際は終わったものの、僕は1軍として大学生活を謳歌していた。
講義中も積極的にボケたり、学食でも誰に気を使うわけでもなく大声で喋ったり、調子に乗って過ごしていた。
夏はバーベキューに海、まさに楽園だった。合コンもたくさんあったし、女の子ともたくさん遊んだ。
リア充とは僕のことを指している言葉なんだなと思っていた。
でもやっぱり人間というのは欲深い生き物だ。
全てを手に入れたかに見えて、僕にはまだ欲しいものがあった。
そう、残りの工学部、教育学部の制覇だ。
気持ちはすでに戦国大名。
宮崎大学、完全天下取り計画だ。
③に続く
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