お笑いオタクが作る大宮オートバックスお笑い劇場


最近、大宮のオートバックスによく呼ばれる。

オートバックス?オートバックスってカー用品とか売ってるところだよね?なんでそこに芸人が?

初めて聞く方はそう思うだろう。

ただ大宮オートバックスにはなぜか劇場がある。
大宮オートバックスの店長さんが重度のお笑い好きで、自ら店内に劇場を作ってるのだ。
カー用品を買いに来たお客さんからしたら意味が分からないだろう。急にお店の中に劇場があって、そこでお笑いライブをやっているのだ。
しかも今はコロナのせいで、お客さんすら入れてない。
YouTubeで永遠にライブしている映像だけ流している。
チャンネル名は「お笑いバックスちゃんねる」
アップしている動画数は600本以上。
チャンネル登録者数は現時点で、1.21万人。
お世辞にもバズってるとはいえない。


でもバズらない理由は、誰が見ても分かる。
企画が攻めすぎてて、お笑いを何周もしているからだ。

僕が最近出たお笑いバックスのライブも、「竹馬を自重トレーニングで追い込む30分」「竹馬がGAGひろゆきに30分質問されるライブ」「竹馬が30分コラムを読むライブ」「竹馬vsスマメロ」というバズる気の全くない、意味が分からないライブだ。
いずれもYouTubeでライブ映像がアップされてるが、再生回数は1000回から良くて2000回程度。
なんのためにやっているか分からない数字だ。

竹馬vsスマメロのライブにしても、スマメロさんというのは、そもそも様子のおかしい作家さんで表舞台に立っていい人じゃない。それを平気で動画に出して、あろうことか芸人と戦わせているのだ。

僕が出ていない動画でも、バズる気の全くない意味わからない動画は500本ほどある。
つまり600本以上あげている動画の内、ほぼ9割以上は意味の分からない動画ということだ。


動画の中には、ジェラードン西本さんとタモンズの安倍さんが、お互いの肛門に入れた10円玉を嗅ぎ合うという、世間にバレたら一撃で垢バンをくらうようなおぞましい動画もあるし、全然知らない若手に30分独演会やらせてスベらせることが目的の動画もある。

今はコロナの影響でお客さんを入れずに、YouTubeの無料配信のためだけにライブをやっているが、これにお客さんを入れてたと思うとゾッとする。
なぜなら、大宮オートバックスは大宮駅からも徒歩20分以上かかる僻地だ。
濃いお笑いファン以外にも、本当にカー用品を買いに来て、「あっ、お笑いライブやってるんだー。」くらいでふらっと入ってくる一見のお客さんもいるだろう。
そういうお客さんは、こんな意味の分からないライブを急に見せられたら、気絶してしまうはずだ。


一度、アド街ック天国さんが「大宮でお笑いライブをやっている」ということでTVカメラを持って取材に来たが、そのときにやってた「ひろゆきフィットネス」を見て、首をかしげて帰っていった。
当たり前だ。お笑いライブをやっているというから撮りに来たのに、30分ただただ筋トレを見せられたのだ。
おそらく「なんだこの素材は!」とTV局に帰って怒られてるに違いない。

ではなぜ、この「お笑いバックスちゃんねる」は一見のお客さんやTVの取材を無視して、こんな毒にも薬にもならないイカれたお笑いライブの映像を流し続けるのだろうか。


それは、悔しいけどハッキリ言おう。
面白いからだ。

そう全動画、全ライブ、面白いのだ。
僕ら芸人や、ある程度色々なお笑いを見てきて感度の高いお客さんなら分かってくれる。
本当に面白いのだ。

西本さん達がテレビじゃとても流せないような下品でイカれたことをしている動画も、東京吉本平場最弱と言われる、うるとらブギーズ八木さんが30分スベリ続けてる動画も、僕が芸人いや人間一面白くないと思っている占い芸人の桝方さんが人を巻き込んで30分スベっている動画も、全てが面白いのだ。

裏笑いといえばもちろんそうだ。
でも僕は裏でも何でもそれが面白いと思えればなんだっていいし、僕みたいな人は一定数いる。
だからこそ平日のまともな社会人なら働いてるであろう時間にライブ配信しても、リアルタイムで見てコメントしてくれるお客さんはいるし、お笑いバックスちゃんねるの全動画を見ていて、僕に「あれ面白かったですね。」とか話しかけてくるイカれた若手芸人もいる。

そして僕も気がつくと「お笑いバックスちゃんねる」を見ているときがある。
しかも、たまにあるお笑いとしてストレートに面白い動画より、誰かがスベったり汗をかいたりしてる動画にワクワクしちゃうようになってしまっている。
僕もお笑いバックスでは、毎回のようにスベらされて、汗かかされて、キレているが、僕に声をかけてきた後輩芸人のようにそんな僕の姿を楽しんでる人もどこかにいるんだろう。そんなことも考える。

僕はもうお笑いバックスにドップリ浸かってしまっているのだろうか。
いやそんなはずはない。
僕は元々、バナナマンの設楽さんのようにブレインとして平場でもクールに笑いを取りたかったはずだ。
こんな泥臭いのは今の僕じゃない。
そうに決まってる。
カリスマ的な道を歩むなら、お笑いバックスにはもう出るべきじゃないのかもしれない。


今年もキングオブコントの準決勝があった。
2日間ネタをしなきゃいけないキングオブコントでは、1日目の夜がめちゃくちゃ大切だ。
1日目のネタを終えた興奮を抑えつつ、2日目に備えて軽く頭の中でシュミレーションをして、早めに寝る。
ゆっくりとお風呂に入り、アロマを焚いて早めに布団に入る。
人生を変えてくれるかもしれないキングオブコントの2日目を前に、頭を無にして、リラックスしてるときに一通のLINEが届いた。


LINEは作家のスマメロさんからだった。

以前幕張芸人についてのコラムを書かれてたと思うのですが、その感じでお笑いバックスバージョンのコラムを書いてください。」


こんなときになんだ。
明日は準決勝だぞ。
せっかくお笑いのことを忘れてリラックスしようとしてたのに…!

でも僕は気がつくと、すぐに返事をしていた。



「もちろんです!是非書かせて下さい!」








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