松野尾 萌

元経営者、現在非常勤で大学講師 商社を経てソニーで経営戦略、営業・マーケティングを経験…

松野尾 萌

元経営者、現在非常勤で大学講師 商社を経てソニーで経営戦略、営業・マーケティングを経験し、英国、中国に赴任。 独化学メーカーの電子化学材料代表、米石油化学メーカー日本法人社長。 関東学院大学特任教授、早稲田大学大学院非常勤講師、同研究員、ベトナム貿易大学客員教授 個人として発信

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金融機関が国民に教える前になすべきこと

テレビ東京のWBS(ワールドビジネスサテライト)は、ビジネスマンや企業の幹部の視聴者が多い。
昨日(2024年4月25日)の放送では円安の問題が大きく取り上げられたが、私が今回注目したのは金融経済教育推進機構に関する話題だ。 この機構は、「投資立国」を目指し、普通預金を長期運用して国民資産を増やすために、国民の金融リテラシー向上を図る取り組みとのこと。 私は金融教育自体は否定しない。むしろ遅すぎるくらいである。しかし、問題は日本の金融機関が引き起こす不祥事が後をたたないことで

    • 入居金に6000万も払ったが…77歳で高級老人ホームに入った私が、わずか2年で「退去」を決意したわけ

      ライブハウスの創業者である平野悠さんが、わずか2年で高級老人ホームを退去したことが取り上げられた記事です。 私も昨年、この老人ホームを見学しました。五つ星ホテル並みの豪華な施設から太平洋が一望でき、お金さえあれば即入居したいと感じました。しかし、平野さんも同じ気持ちで入居したものの、それは決して施設や鴨川の地元を批判するものではありませんでした。 この記事から考えさせられるのは、「老いをどう受け入れていくか」という問いです。挑戦したいことが残っているか、それともすでに達成

      • 政府、資産運用業の海外勢参入促進 首相がNYで表明へ

        https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA182VH0Y3A910C2000000/ 本日の日経新聞記事で思い出すのが、8月31日に東京地裁に対して三菱フィナンシャルグループの三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対して集団訴訟が起こされた件です。まさにこの記事の「資産運用立国構想」に水を掛ける重大事案で、国も問題を座視できなくなっているのでしょう。  三菱とモルガン・スタンレーの二つのキラ星の名前を冠したこの会社ですら、取り扱っている金

        • 集団訴訟を起こされているが、その後どうなったのだろう?

           金融庁から5月に三菱モルガン・スタンレー証券は、無価値化したクレディスイスAT1債の販売額が国内で突出していることを事由にして報告を求めた。その後にどうなったかの報道が全くない。  一方で8月31日に同社はAT1債購入者から集団訴訟を起こされている。3月に起きた無価値化パニックが一段落して、専門家が改めて調べていくと、スイス金融機関発行のAT1債は、緊急時の政府介入や合併によって無価値化される条件であることが目論見書に書かれていることが判った。  ところが、三菱モルガン・ス

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        • 水野雄峰の一期一会
          1本

        記事

          資産運用で損失を出した方が馬鹿なのか?

          8月31日に東京地裁に対して三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対して集団訴訟が起こされました。これは、今後の国の「資産運用立国構想」に水を掛ける重大事案です。 https://www.jiji.com/jc/article?k=2023061900651&g=eco&p=20230619ds64&rel=pv  同社は三菱フィナンシャルグループのドル箱と言える稼ぎ頭ですが、今回の件は顧客に寄り添い、金融商品を知り尽くした上で、有利で安全な資産運用を勧めるべき金融機関への信

          資産運用で損失を出した方が馬鹿なのか?

          三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対する集団訴訟

           8月31日に東京地裁に対して三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対して集団訴訟が起こされました。これは、今後の国の「資産運用立国構想」に水を掛ける重大事案です。  同社は三菱フィナンシャルグループのドル箱と言える稼ぎ頭ですが、今回の件は顧客に寄り添い、金融商品を知り尽くした上で、有利で安全な資産運用を勧めるべき金融機関への信頼を揺るがす出来事です。  同社が販売した金融商品はクレディスイスが発行したAT1債です。顧客らは、長期視点で、株より安全な運用を目指し、同社の営業

          三菱UFJモルガン・スタンレー証券に対する集団訴訟

          3.11

          もう干支で一回りしました。12年。 当日は会社で会議を終え、自宅に帰れる社員は早退させ(その頃はそれがベストとされていました)、顧客や工場との連絡、社員の安全確認などを済ませました。 今夜は泊まりと諦めて、総務部のテレビで津波の映像を初めて見ました。衝撃を受けました。 その後も仕事が続き、昔から縁のある東北に行く暇もありません。ようやく一年後、旅行代理店の募集しているボランティアツァーで東北沿岸部を訪ねました。何の役にも立たないけれど、多少のお金でも落とそう、そう思ってのこと

          ドイツのGDPは日本を超える理由と対策

          ドイツのGDPが急激に上がっています。日本のGDPが伸びていないこと、また短期的には円安状況にあるため、なおさらドルベースで比較すると日本が落ちている状況です。ですので、近くドイツに抜かれて、世界第4位の経済大国に格落ちする事になります。 なぜ、こうなったのか。さまざまな要因があるでしょう。 日本政府は経済成長策、賃金上昇などの政策を採っています。その結果が早く出て欲しいと思いますが、同じような政策を既にドイツも行っている訳ですから、そう簡単にはドイツの追い上げから逃げきれ

          ドイツのGDPは日本を超える理由と対策

          外国人高度人材の招聘

          ご承知のとおり、2050年までには日本の労働人口は約半分になります。あと30年もある、ではなく30年しかありません。仮に労働人口が半分になると現在の富やサービスレベルが半分になることを全国民が享受するか、あるいは非常に大きな貧富の格差を受け入れるかのどちらかしか無いことも皆さんはご承知のとおりだと思います。 岸田総理は以前、外国人留学生を増やすという政策を出しました。私はベトナムを代表する大学にて教師をしておりますが、大賛成です。しかし、その後で、この政策はトーンダウンしてい

          外国人高度人材の招聘

          男女給与格差が大きな日本

          #ダイバーシティ ウクライナ出身の女性が、女性の健康をサポートして社会活動に参加しやすくなるアプス、コンサルティングの会社を日本で始めています。 OECDでも最低水準の男女平等レベルの日本。企業で本気で女性活躍の手法を検討されている部署の皆さん、いろいろな施策の一つとして彼女の試みも検討に加えていただきたいと思います。 因みに私が担当したW大のMBA、Innovation ManagementではIntervieweeとして協力していただきました。とてもしっかりした方です。

          男女給与格差が大きな日本

          新財政政策提言-MMTまるわかり

          MMTを初心者にも判りやすく、Q&A形式で解説した本である。 財源(税収)がなくても政府予算は組める、そして赤字国債が増えても財政破綻しない、減税を行なっても通貨発行できる。 従来の考え方だと、予算も無いのにばらまきをするのは無責任だとの非難がでるのが当然だった。しかし、最新の貨幣理論によれば、非難には当たらず、科学的にも妥当な考え方であることが分かる。 政府の赤字は国民の黒字。実は経済成長を遂げている各国の政府予算は黒字であるケースは殆ど存在しない。稀なケースとして200

          新財政政策提言-MMTまるわかり

          MMTとは何か <日本を救う半緊縮理論> 島倉原著 角川書店 その2

          20年以上前にあったいくつかの国債デフォルトはなぜ起きたのか。なぜ日本では起きないのか? = ロシア、イギリス、イタリア、タイなどでかつて起きている。 これらの国は、当時、固定相場制を採用していた、あるいは変動相場でも当該国がその通貨の実力以上に為替操作をしていたこと。自国通貨の国債でも実質的に為替固定にして外貨による発行と同じことをしていた。それにより防衛のための外貨が必要となるが、外貨準備が足りなくなると防衛手段が枯渇してしまっていた。日本は変動相場制を採用し、また外貨と

          MMTとは何か <日本を救う半緊縮理論> 島倉原著 角川書店 その2

          MMTとは何か <日本を救う半緊縮理論> 島倉原著 角川書店 1

          新書版の薄さでありながら、MMTの主張を網羅し、かつ客観的データで検証しているとともに、日本のいまの経済状況にどう応用できるかまで踏み込んで解説している。私のように中途半端に経済学をかじった人間にとっても平易であると同時に、信頼性の高いデータを利用しているので納得感もある、お勧めの一冊。いくつかMMTの本を読ませてもらったが、ケルトン教授の「財政赤字の神話」を読んで概略を理解したうえで、この本で確認していくのが一番よく理解できると思う。 内容は読んでいただくとして、一般的な

          MMTとは何か <日本を救う半緊縮理論> 島倉原著 角川書店 1

          ツキジデスの罠

          アメリカの学者グラハム アリソンが発表した考え方を紹介する。 ツキジデスの罠とは、新興国が力をつけるとそれを恐れた先進国との諍いが起こることを指す。 過去数百年の歴史を紐解くと15回戦争が起きたうち、11回はこの罠にハマってしまったからだとしている。 その一つが第一次世界大戦。パックスブリタニカを謳歌する大英帝国、イギリスと、新興の専制軍事国家プロセイン(ドイツ)との戦いがそれ。 更に第二次世界大戦も同様の構図である。もっとも、これは欧州の覇権と、アジアに於いては日

          ツキジデスの罠

          財政赤字の神話 ステファニー・ケルトン著、早川書房 その2

           前回は財政赤字の神話について、家計の場合は収入と支出の帳尻を合わせるのが当然だが、政府の場合はそうではない、という部分についてまとめた。今回はではお金とは何なのか。なぜ人はお金の価値を認めるのかの解説部分をまとめてみる。  税金は何のためにあるのか。まず水(通貨)がバケツ(民間の生産能力、つまり通貨を使う需要)から溢れ出て(インフレになる)終わないように、溢れそうになれば税金で吸い上げる、そのための安全装置である。また、税金は通貨で払わなければならない、だからこそ、通貨と

          財政赤字の神話 ステファニー・ケルトン著、早川書房 その2

          財政赤字の神話 ステファニー・ケルトン著、早川書房 その1

          #ネタバレ MMT(現代貨幣理論)を理解する 2021年1月現在、近代史にまれにみるパンデミックによって日本のみならず世界が危機に立たされている。命を守る医療制度の崩壊危機。自粛による様々な事業への負のインパクト。これに対する日本政府の対応は相変わらず遅い。経済が大事だからと、感染症対策の強化のための財政支出を恐れ、補償給付も後手後手に回り、却って感染症を長引かせている。人々は感染症の先が見えないために消費を絞るという自分を守るための当然の行動を取るし、コロナ後に来るであ

          財政赤字の神話 ステファニー・ケルトン著、早川書房 その1