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続くはずだったもの

続くはずだったものが途切れる。
予定されていた未来が来ないことを目の当たりにした時に、私たちは失ったものを認識する。

LINEは便利だ。登録されている友達の誕生日を教えてくれる。忘れっぽい私はこの機能を重宝している。
今日も何気なく私は誕生日欄をチェックした。

【誕生日の友達1 T島(仮名)】

私は思わず目を見開いた。

T島は、2年前に死んだ。
バイク事故だったらしい。詳細はわからない。彼は留年していたから、元同学年とは思われず私たちに学校から連絡はなかった。
葬式もお通夜も知らぬ間に終わり、友人のTwitter越しに訃報を知った。

T島は250cc4気筒の古いホンダのバイクを乗り回していた。福岡の実家まで埼玉から自走で帰省したところまでSNSで投稿していたから、その帰り道だったんだろうか。

T島はいつも笑っていた。博多弁で、歯に衣着せぬ物言いで、なにかと適当で明るく、他人に遠慮させない性格だった。
たまに一緒に勉強したりバイクについて語ったりしていた。
お互いあの頃は50ccの原付に乗っていてツーリングをしたいと言っていたね。(でも、都内で50cc2台でツーリングなんて絶対嫌だと思ってずっとはぐらかしてた。ごめん。)
私が先に二輪免許を取った。T島はあとから免許を取って、私より先に中型バイクを納車した。私もいつか絶対Ninja250を買うって言っていた。そんな話で盛り上がっていた。

何度もLINEした。
既読がつくことは二度となかった。

生きていたら彼は私と同い年、23歳。
きっと今ごろどこかに就職してふらっと適当に、それで幸せに生きていたはずだ。
あれからコロナウィルスが蔓延して業界は大ダメージを受けて大変だったなんて、彼は知る由もない。私が憧れのバイクを買ったことも知らない。

続くはずのものが途切れる。
それがすごく虚しいのだ。

お誕生日おめでとう、T島。

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