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何処へ帰ろう

このまま明けないのではないかと怖くなる。
とっぷり暗い、未だ夜のような空に加えて、冷たい雨の降る午前7時前、仕事へ出かけるバスに乗り込んだ。

昨日まで、外を歩くだけでまだたっぷりと汗をかいてしまう残暑厳しい東京にいたはずなのに、たった10時間ほど飛行機に運ばれれば、秋なんてとっくに終わりもう冬が始まろうかという、カナダはバンクーバーにいる。

仕事が始まる前日の夕方に戻ってくるなんて時差ボケも辛いだろし、疲れも残るだろうから少し迷ったけど、半ば強制的に仕事に戻ることにしてよかった。
友達や家族が恋しい気持ちが高まったまま、こんなに暗くて心細くなるような夜をいくつも越える自信はない。仕事が始まれば、夜をさみしいと思う前には眠りにつかなくてはならないからきっと、大丈夫。

空港に着き、もう乗り馴れた電車とバスを乗り継いでシェアハウスに戻った時、帰ってきたと思ったのは、それにしても不思議な感覚だった。

東京に帰ったはずだったのに、バンクーバーにも帰ってきた。

初めてバンクーバーを訪れた時はこの地を好きになれるかどうかすら危うかったのに、むしろ嫌いかも知れないと思ったのに、いつの間にか「帰ってきた」と思える場所になっていたなんて。


まだ、もう少し、この街で暮らしてみたいと思う。挑戦してみたいと思う。
東京に帰りたい、って弱音を吐く時があるかも知れないけれど、どうか優しく見守って下さい。

まつりに美味しいコーヒーをご馳走してくださいっ