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確かな一歩だと信じたい、それがたとえおそるおそる踏み出したものだったとしても。

陽が落ちれば冬の名残を感じるけれど、もう春だ、と胸をはって言ってもいいだろうか。

まだ見ぬ出会いに心浮き立つ季節。だけれども、私はさみしい気持ちの方がまさってしまう。なんて子どもじみているのだろう。もう30歳の1年を終えようとしているのに。

そう、30歳になった瞬間から大きな砂時計をひっくり返した。
心に留まっていた、とあること。この1年間よく考えて、それでも留まったままならば30歳のうちにやろうと決めたのだ。

タイムリミットまであと2ヶ月のところで、ようやく決断した。その、とあることを5月の頭に実行することにした。私の生まれは大好きな雨の季節6月だから、こんなに間際にならないとできないなんてこの臆病者め、と自分に苦笑する。

でも、思いついたことはやってみないと気が済まない私が、こんなに何かに迷うことは珍しかった。いつまで考えてもノートにあれこれ書き出してみても、正しそうな答えにはたどり着かなかったし、正直を言うとまだ少し迷っている。棒の倒れた方の道に行くみたいに、誰かが決めてくれたらいいのに。


4月のはじめに、いま住んでいる旅人シェアハウス「えいとびたー」が解散になる。

これを機に同居人たちは拠点を変えたり、持たなくなったりする。みんな旅人だもの、そりゃぁ帰ってくる家は必要だけど、なんでずっと同じ場所に住んでいられると思ったんだろうね?(笑)
でもみんなで、せーの、またね、と出来るのはとてもすがすがしい。もちろん、やっぱりさみしいけれど、ふらっと誰かの住む街に、国に、遊びに行くことはできる。だってみんな旅人だもの。

(SNSではもう散々お知らせしていたのに、私だけ沈黙を守っていましたが、先に自分の言葉でちゃんとこのnoteを書きたかったのです。遅くなってごめんなさい。)

えいとびたーは初期メンバーと二期メンバー合わせて7人。家ですら全員が集まる日はほとんどなかった私達が、なんと全員集合してイベントを開催します。お世話になったみなさんにも直接、ありがとう、またねと言わせてください。▶詳しくはこちら

別れを彩る桜が咲き始めていて、もしかしたらちょうどよい季節だったかも知れないね。

そんな桜の見頃はいつかなぁと考え始めるこの時期はいつも、母校を思い出す。
上野公園の花見客をかき分け行く、大学までの道のり。印象深く記憶に残っている2度の春の日は、大学の合格袋を持って歩いたその日と、卒業式を終え、謝恩会もほどほどにバンドメンバーと大阪へ向かったその日。


希望に満ちみちたそんな春とは打って変わり、今年は大切にしていた仕事を一つ辞めてしまった。

恥ずかしい話だが、この1年ほど、人生にリセットボタンがあればいいのに、とずっと思っていた。さらに恥ずかしいことに、今も少し思っている。自分の人生が嫌になってたまらない夜が幾度もあった。

これ以上、自分のことを嫌いになりたくない。だから心に留まっていることをやってみるしかなかった。そして、もし、人生のリセットボタンが本当にあるとするならば、住む場所を変えることかも知れない。

そんな風にどこからか逃げるようにして、5月から少しの間、東京を離れることにした。
シェアハウス解散の発端は同居人が家を出たいと言ったからなので直接的には関係ないのだけれど、少なからず、踏ん切りのつかない私の背中を押して、いや、もはや蹴ってくれた形になった。

既に秋と冬にいくつか演奏の公演が決まっているので、その時期にはいそいそと戻ってくるけれど、心に留まっていることをやってみるために、ここではないどこかで、暮らす。

大切な人たちにすぐに会えなくなってしまうことや、東京にいるからこそ出来た仕事ができなくなってしまうことが、こわくて不安でたまらなくてめそめそしているし、こんなことをやります!がんばります!と言えないのはおそるおそるとしていてとてもかっこ悪いけれど。

どんな歩みでも、一歩を踏み出したことは変わらないと信じて。

東京を後にする前の4月にはライブがいくつかあって、一日コーヒーやさんもやろうと思っているので、そっと背中を押しに来てくれたら嬉しいです。▶出演情報


まつりに美味しいコーヒーをご馳走してくださいっ