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20240426 漫画家と編集者 研究者と査読者

 先日鳥山明先生が亡くなられたとき,編集者の鳥嶋和彦氏との関係があまりにポジティブに語られることに対して,とり・みき先生が「漫画家と編集者は相棒みたいにいわれますが愛憎相まみれる関係で…」みたいなことをTwitter(現X)でツイート(現ポスト)されているのが妙に印象に残りました。探せないと思っていたのですが当該ポストを発見できたので引用します。

 ヤマザキマリ先生とそのことをテーマにトークショー2018年に行いその記録もあったようですが今では読めないのが残念無念。

 私自身,漫画家さんと編集者は「相棒」だと思っていたのですが,企画の段階で漫画家自身が好きなものを書こうと思ってもヒットや経済性の視点で修正をくらうだろうし,ボツ!と言われたら書き直さないといけないなど,「憎しみの感情」の源でもあるわけですからやはり愛憎の対象なのだろうなあと。
 これを研究者に例えると,一般的には漫画家と編集者の関係は「院生と指導教官」とか「共同研究者同士」の関係性に思われることが多く,「良い作品を作るために共に切磋琢磨しあう関係」のように思われているのだと思います。
 でも実際には,書いた論文に対してねちねち修正要求をくりかえし,A委員のコメントに従って修正したらそれについてB委員が否定してきたり,最初に言ってなかった要求を次回に出してきたりとかのイライラするやりとりを査読者とするのと同じようなやりとりを,漫画家と編集者はネームを通じて行っているのだろうなあと。
 そうした「漫画家と編集者のやりとりで作品がどのように変化してそれが期待された効果を得ているのか」などについては,漫画創作に関する主要なプロセスであると思うのでいろいろ研究されているのだろうなあと思ってCiNiiで「漫画 編集」で調べると1100件程度でちょっと多い…。なので「漫画 編集者」で調べると113件だったのでざっと眺めてみると「編集者側から書かれた漫画作成時のアドバイス」的な本が数点あるだけでした。
 
【書誌情報】
鈴木重毅 2023 「好き」を育てるマンガ術 : 少女マンガ編集者が答える「伝わる」作品の描き方. フィルムアート社

よしだ玲子 2022 漫画太腕繁盛記 : 女性元編集者が贈る一九八〇年代からの漫画家レシピ. 蒼天社,汎工房.
2022

 このあたり,漫画家側からの視点だと,『バクマン。』とか『まんが道』とか『アオイホノオ』とか『編集王』『重版出来』などを読めばいいのですかねえ…。
 実際に編集者のコメントの入る前の作品と入った後の作品での違いについて読者の反応などを実際に採集して比較したような研究ってどっかにないのかなあと。

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