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20231105 久しぶりにどんぴしゃの論文発見!

 十月は播州の秋祭りを見に行くだけで全然論文を読めなかったのですが,十一月に入ってようやく論文を読む時間ができてきた気がします。それで久しぶりにCiNiiで最新の論文を検索してみると…自分の興味関心にぴったりで正直「先越された~」と思った論文を発見できてほくほくです。 

森島 明日香・金 度源・大窪 健之 (2023). 祭りの行程への参加と地域愛着・世代間交流との関係性.  都市計画論文集, 58(3),  632 - 639.

 以下,上記論文の面白さの説明を以下に引用させていただきます。

1-2. 本研究の位置づけと目的
 これまで、祭りへの参加の有無や回数による分析、関与度による違いが地域やコミュニティ意識とどのような関係があるかを明らかにした既往研究があるが、具体的にどのように祭りに関与したのかを掘り下げて分析した研究はあまり見られない。そこで、本研究では関与の度合いで分けるのではなく、祭りの行程ごとの参加有無を調査し、地域やコミュニティ意識とどのような関係があるのかを明らかにする。ここでは、地域やコミュニティに対する意識として、地域愛着と世代間交流を取り上げることとする。

 私自身これまで祭の参加の有無と社会性発達との関係を検討してきましたが,参加の有無という2値では大雑把すぎるし,祭への関与を検討するための適切な測定方法を決めかねていて,どうすればいいのだろうと困っていたので,本論文によってその方針をさし示していただけた気がして非常にありがたかったです。
 本研究では,岐阜県の伝統的な祭である古川祭を対象に,その行程への参加を独立変数として地域愛着や世代間交流という従属変数との関係を検討していますが,行程を分類する際の以下の工夫が素晴らしいと思いました。
 

 古川祭の行程は大きく分けて6つに分類される。神事、奉幣祭、起し太鼓、御神輿巡行、屋台、準備・片付けの6つである。(中略)本研究では、地域愛着と関連性のある具体的かつ汎用的な祭りの行程を抽出することを目的としているため、6つの分類を一度ばらした後、ジャンルごとに新たに分類したもの(表2)を分析に使用することとする。本研究では、古川祭の行程を大きく 4 つの項目に分類した。分類するにあたって、関わり方が似ている行程同士をグルーピングした後、タイトルを付けた。(中略)4つに分類したタイトルの一つ目は、「代表者が参加する行程」。二つ目は、「奉仕をする行程」。三つ目は、「人手を必要とする行程」。四つ目は、「裏方の行程」である。「代表者が参加する行程」は、各台組の代表者が行うものや、厄年の人など特定の人が参加するもの、祭りへの貢献度が高いと認められて選ばれた者といった、誰でも参加できるというわけではない行程をまとめた。

 前半の6つの分類が祭の行事の内容での分類だとすると,後半の4つの分類は準備から終わりにかけての,祭りが持つ地域での関わり合いの機能からの分類だと思われて,この分類はかなりよい分類だな~と思いました。
 
 その後の統計分析については,文章で説明するよりかは論文で表を見てもらった方が早いのでここでは具体的には書きませんが,統計が苦手な自分なりの感想を書いてみたいと思います。
 
・構造モデルで「基本属性と祭に関する項目」と「祭の行程」の間にはパスが想定されていないが,「役員経験年数」と「代表者が参加」などには関係ありそうな気もするのでそこにパスを入れるモデルなども想定してもよいのではないか?
 
・共分散構造分析のパスで選好から感情への係数が0.96で祭の参加年数から持続願望への係数が0.004などであるがこれらの係数は標準化されたものか?
 
・地域愛着の項目は「選好」が6項目でαが.94,「感情」が5項目でαが.95,「持続願望」が2項目で.89とかなり数値が高く,かつ5件法で平均が4近くあるため,かなりの人が「最高の5」をいっぱいつけていた可能性はないか?みな地域愛着があるのは当たり前なのでその分布自体は納得がいくが,天井効果がでてしまうので地域愛着の3下位尺度間では内部相関が高いが他の尺度との相関がみられにくくなっていて,それが共分散構造分析のパスの様相に反映されていないか?
 
 最近正直なところ祭研究をどうしようか迷うだけでなかなか前に進めなかった自分に光明を与えてくれる論文だと思うので,今日はさっとみただけでNOTEを書きましたがまたじっくり読みこみませていただきたいです。

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