20230411 新たな都市祭礼の担いの形の可能性 -西宮神社の講社組織について
野球が好きでプロ野球を見る人の多くが,「ファンの球団」を1つ有してその勝ち負けに一喜一憂するように,博多祇園山笠を好きな人も8つある櫛田入りする流の中から1つの「推しの流」が決まってきて,そこの櫛田入りタイムなどで一喜一憂するようになるものだと思います。
私の場合,もともと鯛が好きだったので,山笠をみる時も人形で鯛が作られることが多い恵比須流が気になって,基本的に山笠での一番の推し流れは恵比須流で,そこから恵比須様全般をひいきに思う自分が出来上がってきておりました。
そのため全国の恵比須様の総本山とされる西宮神社についてもいろいろと知りたいな~と思いつつも,西宮と梅田への電車代がほぼ同じなので「なら梅田まででちゃえ」となってなかなか西宮に途中下車する機会がないため,こちらにきてから西宮神社に参拝したことは一度しかありません。
でも,やはりもう少し深く知りたいなあと思っていたところに以下の論文が目に入ったので読んでみることにしました。
劉 勁聰 2015 西宮神社の講社組織に関する一考察―神輿奉賛講社の結成と運営を事例に―. 神戸女学院大学論集, 62(1), 51 – 61.
西宮神社と言えば正月の「福男えらび」が全国的に有名だと思いますが,それ以外の祭事については存在を知らず,かつ福男選びがどのような団体によってどのような準備を経て行われるのかなどについてはまったく知識がありませんでした。
この論文によると,西宮神社の祭事は「講社」という団体によって実施され,代表的な物として以下のものがあるようです。
まず驚いたのが,こうした祭事が「地域に根差した氏子集団」が共通して行うのではなく,それぞれの役割ごとで別の講社が結成されているということでした。本論文では,上にあげた6つの講社より,一番構成員の多い神輿奉賛講社について筆者の参与観察をベースに丁寧に解説されていくのですが,神輿奉賛講社の構成員については結構独特だと思ったので以下にそれについての記述を引用します。
多くの祭りが地域コミュニティを前提とし,祭の充実とコミュニティの充実が密接に結びつくがゆえに地縁や血縁関係を反映することが多いのにたいし,西宮神社の講社は「約縁集団」であるため,ある意味「神輿をしたい!」という人が神輿を中心に集まっていると考えられます。
これは東京の祭りでの神輿をかつぐ集団のあり方にも似ているようですが,東京の場合は「地縁に基づく氏子を中心とした祭集団」が存在し,それらが祭の裏方的なところをしっかりおさえることで,神輿を担ぐことを専門とする神輿集団を取り入れることができているという構造であったと思います。
ある意味,都市祭礼の将来のあり方を考えると,この西宮神社の講社的なあり方の方が地域で本当にその祭礼を好きな人たちが担うシステムを作りうる上で先進的なような気もするのですがどうなのかなあと。
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