20230331 祭と農業と心理学

 昨日読んだ論文は,特にその手間暇かけた方法論に感心して感想を書きました。そして今日最初に目に入った論文は以下のものでした。
 
栁田邦玲雄・松本 武・岩岡正博 2016 中部地方の森林組合における山の神の信仰形態の特徴と地域性. 中部森林研究, 64, 73 – 76.

 最初「お,昨日のは長野県の環境保全研究所のものだったけどきょうは中部森林研究ということで同じ地域の農業系の研究論文なんだな~」と地域と研究分野の偶然の一致に驚いていたのですが,もっとすごい一致が存在しました。
 それは以下の研究の方法を読んでいただけると分かると思います。

Ⅱ 調査方法
 調査は,中部地方の 126 の森林組合(2014 年 10 月現在)を対象に行なった。まず,組合の名称,所在地,電話番号をweb ページからリストアップした。次に,森林組合での祭行事の内容,山の神の特徴を聞き取る電話調査を行った。電話調査は,聞き取り調査用の原稿,回答の書き取り票を作り,表―1 に示す質問項目について聞き取りを行った。そして,祭行事の内容とその地域性を明らかにするため,祭行事の内容や山の神の特徴に関する結果と組合の所在地についてマッピングを行った。組合の所在地から緯度経度を求め,QGIS を用いて,国土数値情報の行政区域データ上に表した。

 今回の論文も126の森林組合に電話調査をするという気の遠くなるような手間暇をかけた全数調査…すごい。農学系はこのような方法論を取られることがおおいのでしょうかね。
 
 そして全数調査なので結果も基本的には上記のマッピングで物語るものとなっておりますので元論文をみていただくことにしてここでは図を引用するのは避けさせていただきます。
 
 隙あらば自分語りですみませんが私はいちおう元農学部の学生だったことがあったり,中部の農業大学校で農業普及指導員の資格を取る学生のために教育心理学の授業を担当したりしたことがあり,農学系の研究にも興味はあるのですが全然知らなかったので,祭の研究を探す中で農学系の論文に目を通せたのはラッキーな出会いでした。
 そういえばもう記憶がないのでソースを示すことはできませんが,農学の「農場系」の研究をされている方が,実験室などでできる研究と違い農場系の研究は「年に1回」とか「数年の結果」でしか論文を書けないのでつらいというか他の分野との業績との比較がしづらいようなことを書かれていた記憶があります。そのような分野で鍛えられていると,1年を待つしんどさに比べたら一度に聞いて回ればいい全数調査の方が気楽,という感じで頑張ることができるのかなあと思ったりしました。
 って,ここまで書いて,祭もだいたい年に1回なのですよね。そして私自身,「年に1回しかない祭について量的な変数を設定して研究する」のよりかは,さまざまな祭について集めた上で量的な変数で比較するアプローチの方に可能性を感じているので,ある意味農場系の研究と祭研究は似ているかもしれないなあと思い始めました。

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