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【柳龍拳VS岩倉豪】世界一有名だった合気道(?)の動画を解説してみる:マンガへの影響と武田家裏の七家という伝説

かつてYoutubeで合気道といったら真っ先に挙がるのは柳龍拳VS岩倉豪の動画だった。

老人がブン殴られる動画なのでちょいセンシティブかも?

様々な流派を極め人を触れずに倒す達人といわれていた柳龍拳はほとんど何もできずに総合格闘家・岩倉豪の拳を顔面に受けてしまい、この日ひとつの達人に対する幻想が崩れ去ったのである。


時代背景

この一戦は当時としては新しいサービスだったYoutubeによってかつてないほど拡散された。最近では珍しくなくなってきたけど数百万も再生される動画は稀だった。

柳龍拳は「大東流合気 道 免許皆伝10段」「日本天心流合気道免許皆伝10段」といった流派名を名乗っていたため「大東流合気 柔術 」及びあらゆる「合気道」の会派にも謎の風評被害がもたらされてしまう。

昔はこの動画を観て「合気道なんて偽物なんでしょ?」みたいな話をされることが多かったのだとか。

いまだにFacebookなんかでは面白動画としてこすられたりしているので、当時を知る者として少し情報を補足して、より楽しめるようにしてみたい。

当時のおれは単なる大学生で、ただただこの動画を面白がって見ていたわけだけど、後に武道関係者から当時の裏話をちらっと聞いたりもした。

柳龍拳とは何者なのか?

まず最初に知っておくべきはぶん殴られた方。

北海道の僧侶であり、気功と武術を極め触れることもなく相手を倒す最強の男だというふれこみだった。

主に深夜のテレビで局所的に話題になっていたらしい。

大東流合気道免許皆伝10段
日本天心流合気道免許皆伝10段
神秘秘伝流合気道免許皆伝10段
龍神流気合術10段
柳流武術気功10段
大日本武徳会10段
テレビ出演10回

探偵ファイルより

60段と10回という華々しい(?)経歴をひっさげて弟子たちを転がしている様は未だにインターネットの片隅に転がっている。

そして、柳龍拳が他の武術家と一線を画していたのは宣伝するだけでなく、自分に勝てば100万円という賞金つきで挑戦者を募っていたことだった。

挑戦者はどこから現れたのか?

そんな中で名乗りをあげたのがインターネット黎明期の雄、探偵ファイルのライター山木氏だった。

「探偵ファイル」というのは今ではわりと大手の某探偵団体が運営しているウェブサイトで、当時は謎の面白記事を出す集団という感じだったのを覚えている。

そんなカオスなサイトで生まれたカオスな企画が「山木のホーリーランド」だ。

有名な不良マンガのタイトルで企画内容もほぼマンガのまま、町で記者が読者とケンカするというもの。

探偵ファイルより

その記事を書いていたのがキックボクシング経験のあった山木氏だった。

最初はカジュアル?に町で会ってケンカするだけだったが、やがて武器アリやプロの格闘家も参加し始めてレベルが上がっていく。

そんな中で探偵ファイルは柳龍拳に目をつけて山木氏を挑戦者にして挑戦状をたたきつけたのがすべての始まりとなる。

急展開

たぶん半分くらいはこんな挑戦受けないだろうなと思われていた矢先に、柳龍拳は自身のホームページでいきなり「それなら50万いますぐ振り込んでこい」と挑戦を受けたのだった。

探偵ファイル側もあわてつつ試合で「武器を使われた」「弟子が全員襲いかかってきた」などという噂もあったため、公開することを前提に話を進めていた。

参考:#探偵ファイル/あぶない探偵 (tanteifile.com)

そこから何がどうなったのか、いきなり山木氏から変更になった対戦相手が岩倉豪だった。ホーリーランドの方で山木氏に「ヨ~ガ柔術」という名前で格闘技の指導をしていたので、そのへんの絡みだろう。

そして伝説へ……

当日の様子は探偵ファイル側の記事も残っている。

「柳 龍拳」対戦結果&当日の様子 | 探偵ファイル (tanteifile.com)

これは後に当時mixiなんかで岩倉氏とつながっていたという人が思い出話に教えてくれたことだけれど、どうも当日の会場にはテレビ局が来ていた上に八百長の依頼があったらしい。

お互いに手を出さずに終わらせることで、双方とも格を落とすことなく引き分けにしようという話だ。

テレビ局的にはオイシーし、探偵ファイルも柳龍拳も話題づくりとしては十分だったように思うけれど、結果的には動画の通りになってしまった。ひとつの原因は岩倉豪が柳龍拳にビビっていたというのもあるのだとか。

参考:「なぜ柳龍拳と決闘することになったのか?」 You Tube回数400万越えの男・岩倉豪インタビュー | 巌流島 (ganryujima.jp)

まぁこの辺を信じるかどうかはアナタ次第。ホントかどうかはわかりましぇん。

この戦いの副産物

あんまり得した人のいない戦いだったけれど、これによって生まれたキャラクターを我々は知っている。

そう、バキシリーズの登場人物であり、暗殺術・空道の柳龍光だッ!

板垣恵介『バキ』より
リングの戦いからノールールへ
最凶死刑囚の日本代表として登場したのが柳龍光だった

作者の板垣先生も「名前は柳龍拳をモデルにしている」と語っているけれど、深読みするなら名前以外もモデルにされていると思う。

例えば柳龍光は塩田剛三をモデルにしているっぽい渋川剛気のライバル(合気道キラー)として登場している。確かに柳龍拳も色んな意味で合気道をキラーした気がする。

暗器、毒手などの暗殺術の使い手という設定は岩倉豪の想像上の柳龍拳みたいなものを膨らませた形とも考えることができてしまう。

彼は毒針や毒、試合の前から何らかの術にかけられるのではないかと懸念していた。

そう考えてみるとよく出来たキャラクターだと思うし、実際に本編でも色んな意味で人気キャラとなりスピンオフにも出てくるのでキャラクターとしては大成功だ。ある種の皮肉も効いている。

深読み

ちなみにこっからは完全に妄想なんだけど、Wikipediaによれば柳龍拳は武田信玄の影武者の家系だったということになっている。

柳によれば大東流合気道は(中略)武田信玄の家臣(影武者)であった大東久之助の直系武術だとされる。また柳姓は武田家直系の『姓』だと言う。
柳氏が武田姓ではないことや、家臣の武術を大名の子孫が受け継いたことになること等、不自然な点を指摘する向きもあるが、これについては、武田氏が後年居住していた伊勢神宮近辺の柳村に因んで改姓したこと、家臣と言っても(影武者という)異例の高い地位であったことを、説明としている。

Wikipedia『柳龍拳』より

もしも万が一それが真実だったとするなら、もうひとつある事実が見えてくる。

最近YouTubeの格闘家や武術家のチャンネルでよく見かける某A家は一子相伝で武田家に仕える裏の七家のひとつだという話を聞いた。

とういうことは当然、柳龍拳の家も裏の七家のうちの一家ということになるのではなかろうか?

ここから導き出されるのは、この世界にはまだあと五つも武田家に関連する裏の家が残っている……。(つまり枠があと5つ残っている!)

鳥山明『ドラゴンボール』より
この意味がわかるかな?

これから表舞台に残る裏の家系が出てくることがあるのか、新たな設定が生み出されるのか、これからも武田家からは目が離せませんね。



おわり!


マツリの合気道はワシが育てたって言いたくない?