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「東京観光日誌」#11|銀座、築地(後編)|ショッピング、エンターテインメント

前回からのつづき。
もう2時近いのにお客さんがまだ随分いました。
「あら、久しぶりね。こっちの席が空いているからどうぞ」と元店主の奥さん。
「今日は珍しくお連れさんもいらっしゃって」と焼き台から元店主。
“元店主”というのはお店を後継人に譲ってしまったためです。今は本人曰く“アルバイト”で仕事をされているとのことでした。

・ ひょうたん屋さんの思い出

ひょうたん屋は1丁目がもともと本店という位置付けで、元店主の(既に亡くなられた)お母様が創業時から切り盛りしていました。お父様は戦争で亡くなられてすでにその頃からいません。お母様が戦後女手一つで子どもを三人育てられたと聞いています。その後、長女のお姉さんを除いて息子二人がお店を引き継ぎました。二人とも秀才で大学まで出ていますが・・ちなみに店主は早稲田大学出身です。
長男の店主がここ6丁目を開業し、次男さんが1丁目を引き継ぎました。6丁目開業からしばらくして私がアルバイトにスカウトされました。スカウトなんてちょっと照れるけど・・この近くの酒屋でアルバイトしていた縁です。昼間は酒屋、夜は鰻屋という時期がしばらく続きました。一応浪人ではありましたが、生活が大変だったし・・大学の資金も必要でしたからね。
おっと、来た来た「うな丼」です。

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Looks good ! では、いただきます。

アルバイトをしている時、鰻が足らなくなると築地の方へ行って仕入れ先から鰻を取りに行ったこともよくありました。食べはしても実物を触る機会はそうあるものではありません。ぬるぬるしてなかなかつかめない鰻のボディタッチ・・貴重な体験でした。
ひょうたん屋1丁目との連携で1丁目が忙しくなると加勢に派遣されたりもしました。その頃1丁目は常に満員でしたからね。そう、銀座中を自転車で動き回っていたのは1丁目や6丁目で出前に行ったりしていたからです。それに画廊を回るもの好きだったし。あちらこちらの銀座のビルや路地裏等に出入りしていました。

鰻どうですか? いつもと違うでしょう。関東では鰻を蒸してふっくら柔らかくするのが定番ですが、ひょうたん屋は関西と同じ腹開きで直焼き、炭火で丁寧に焼き上げるんですよ。東京では珍しい職人技が感じられるお店です。このことについて以前元店主に尋ねてみたことがあります。
「どうして関西風にしているんですか」と。そうしたら、
「蒸すのが面倒だから」という素っ気ない回答でした。
戦後まもなくの開業だったわけですので、さもありなんというところでしょうか。

今の店主は奥の方にいます。鉄ちゃんって言います。
「鉄ちゃん、今度予約を入れて食べに来ますね」
夜は(コロナのせいか)予約を入れないと入れてもらえないのですよ。
「では、また伺います。ご馳走さまでした」
元店主の奥さんとラインを交換して出発。

・ 銀座6丁目から8丁目へ

では、食事をしてエネルギーがチャージできたので、元気な曲を聴きながら8丁目の方へ向かいましょう。曲は「HONDA」。車のようなタイトルです(CMソングだったようです・・)。バンド(音楽プロジェクト)は「Friday Night Plants」。ボーカルのMasumiさんは、お父さんが日本人、お母さんがフィリピン人の日本生まれの女性です。

ノリノリで交詢社こうじゅんしゃ通りから再び銀座通りに出ると7丁目の角に・・ありました。元店主に連れられて初めて行った「ビアホールライオン銀座七丁目店」(写真下)。天井の高いホールで飲むサッポロ生ビール・・胃袋に響きました。

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元店主には当時銀座のお寿司も何度となくご馳走していただきました。おそらく自腹で行くには無理なところです。舌が肥えたのはそのせいかもしれませんね。本当に感謝しています。
銀座通りで8丁目まで行くと・・ここが博品館劇場です(写真下)。実はここの劇場には一度も入ったことがないのですが、銀座の劇場として有名なところです。興味のある公演があれば是非どうぞ。8階に劇場があって1階はおもちゃ屋さんになっています。

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・ 銀座8丁目から築地へ

では、ここから沿岸部(南東)の築地に向かって歩いて行きます。次に向かう所は「新橋演舞場」です。
音楽は歩くテンポに合いそうな曲にしましょうか。日本のロックバンドSachmos(サチモス)の「tobacco」がいいですね。ついこの間、メンバーの一人がお亡くなりになったと聞きました。バンドも今は活動中止だそうです。

右手に高速道路を見ながら御門通りを歩き。木挽町通りに折れます。こんなふうにこういう道を歩くのは初めてかもしれません。歩いている人も少ないですね。スマホのGoogleマップに導かれながら・・銀中通りに入って行くと・・いつの間にか「新橋演舞場」(写真下)に着きました。思ったより近かった。

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ここも残念ながら中には入ったことがないのですが、そもそも昔から演劇・舞台はあまり見る機会がありませんでした。おそらくここは演目から察するに年配の方が多く来そうです。もっとも私も“年配”になり、最近はこの手の世界にも興味が出てきました。機会があったら観に来たいと思っていますよ、はい。後ほど歌舞伎座の方も見ておきましょう。

采女橋うねめばしを渡りそのまま真っ直ぐに行くと、築地場外市場(写真下)に当たります。

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周辺をまわってみると、築地市場が豊洲市場に移ったせいなのか、コロナのせいか、それとも月曜日の午後のせいか、人がまばらであまり活気がありません。お店も閉まっているところが結構ありますね。
ここもよく来たんですよ。ここで何度かいただいたお刺身やお寿司はさすがに新鮮で美味しかった。ラーメンも昔ながらの味で立ち食いの美味しいお店がありました。しかし、そのラーメン屋さん(中華そば 井上)、どうも築地場外市場の大火事(2017年)の出火元になったためそれ以来営業は再開していないようです。単純な火の不始末が原因ではないということですので、何だかやるせないですね・・
え!? 何が原因だったか・・え~と調べてみると・・「伝導過熱」ということですね。どうも劣化した壁の内部から発火したとあります。人がいなくなった夕方に火災が発生したと書いてありました。不運です。

・ 築地本願寺で瞑想気分

さて、すぐそこが「築地本願寺」です。覗いてみましょうか。
そうだ、ちょっと待ってください。音楽を替えましょう・・トーンを落として静かな温かい曲がいいですね。
fantompowerの「blankets」にします。fantompowerさんはアメリカのミュージシャンであり、プロデューサーであり、コラージュアーティストでもあるようです。多才な人ですね。

築地本願寺の塀になりました。おっと、入るところがあります。正門ではないここの小さな門から入ってみましょうか。

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目の前にいきなり人物像(写真上)が現れましたね・・どなたでしょう・・親鸞聖人と書かれていました。親鸞さんというと浄土真宗を開いた方です。
斜め左先には築地本願寺本堂(写真下)が見えます。

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美しいお寺ですね・・お寺?・・築地本願寺は何だか不思議な建物に見えます。ここに来るのは初めてですが、ちょっと背筋を伸ばした方がいいような空間です。ただ・・親鸞聖人と結びつかない気もしますね。
どうもここは何度か建て替えられているようですよ。
「現在の本堂は1934年の竣工。古代インド様式をモチーフとしたこの建物は、当時の浄土真宗本願寺派法主・大谷光瑞と親交のあった東京帝国大学工学部名誉教授・伊東忠太による設計である。当時の宗教施設としては珍しい鉄筋コンクリート造で、松井組(現:松井建設)の施工により建築された。」とWikipediaありました。なるほど、お寺もこういう創作もありなんですね。そう言えば、自殺したX Japanのギタリストの告別式もここで執り行われました。
「南無阿弥陀仏」

本堂内部(写真下)も観てみましょう。ここで座ってゆっくり時を過ごしてみるのもいいですね。瞑想なんかしたりして。座ります?

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・・今、西洋人が出ていきました・・(小声で)きっと瞑想しに来たんですよ。

・ 聖路加の明石町から歌舞伎座へ

今日は随分歩きました。見てください、歩数計は1万歩を超えています。大丈夫ですか?・・次はあまり行ったことがない聖路加の方へ足を延ばしてみましょうか。観光スポットではないですけどね。
音楽の方は先ほどのお寺の影響とラストスパートの意気込みを混ぜこぜにしてレゲイにしてみます。ちょっと疲れてきたせいかな・・。Hollie Cook(ホリー・クック)の「Postman」を聴いてみてください。

レゲイと言えばジャマイカですが、Hollie Cookはイギリス人で、何とパンクロックの代名詞セックスピストルズのドラマー、ポール・クックの娘だということです。ちょっと驚きました。え? セックスピストルズを知りませんでしたか・・そうでしょうね。実は私もそれほど聴いてはいなかったですが、彼女の母親はカルチャークラブのバックシンガーであり、ボーイジョージは彼女のゴッドファーザーということでした。この場合“ゴッドファーザー”は名付け親ということです。
こういう環境で育つ子ってどんなものかと、いろいろ想像してしまいます。彼女はポップではなく、パンクでもない、レゲイミュージシャンになってしまいました。♪

♪ レゲイの軽快なリズムに合わせてやって来ました。聖ルカ通りを通って聖路加のエリア・・ここは聖路加国際大学があるところです(写真下)。緑が多く見られる良い環境ですね。

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こちらが聖路加国際病院(写真上)。この辺住みやすそうです。確かこの辺りは中央区明石町でした。あれ!? この石碑(写真下)は何でしょう・・「日本近代文化事始の地、慶応義塾発祥の地、蘭学の泉はここに」とありました。

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奥の石碑には「安政五年福沢諭吉この地に学塾を開く、創立百年を記念して昭和三十三年慶応義塾これを建つ。」と刻まれていました。さらにその上の本を模した赤い石碑には「天ハ人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という有名な言葉がありました。福沢諭吉と慶応義塾ゆかりの地だったんですね。この辺りの昔の風景はいったいどんな様子だったんでしょうか・・想像すると面白いです。

では、最後は歌舞伎座を見て、今日の散策は終了としましょう。
音楽もこれでラストです。アメリカ・フィラデルフィアを拠点に活動するバンドLotus(ロータス)の「Spiritualize」を聴きながら参りましょうか。歩きながらでも瞑想ができますよ。

もくもくと歩いて、やっと歌舞伎座(写真下)に着きました。
ここは近いうちに入ってみたいところです。

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歌舞伎座は大正時代から今日まで4度建て直されているみたいです。現在のものは5代目だそうです。後ろにある高いビルも歌舞伎座のビルのようで複合ビルとして構成されているんですね。設計は何とあの隈研吾さんだったんですよ。

ここからだったら東京メトロ「東銀座」が最寄りの駅です。気を付けて帰ってください。またよければ、どちらかで散歩観光しませんか。話をしながら歩くのは楽しいです。
では、お疲れさまでした。さようなら。See you soon.

ひょうたん屋 6丁目
住所:東京都中央区銀座6-12-15
電話:03-3572-2511

ビアホールライオン銀座七丁目店
住所:東京都中央区有楽町7丁目9-20
銀座ライオンビル1F
電話:03-3571-2590
公式ページ:https://www.ginzalion.jp/shop/brand/lion/shop1.html

博品館劇場
住所:東京都中央区銀座8-8-11
電話:03-3571-1003

新橋演舞場
住所:東京都中央区銀座6-18-2
電話:03-3541-2600

築地場外市場総合案内所
電話:03-6264-1925

築地本願寺
住所:東京都中央区築地3-15-1
電話:03-3541-1131

聖路加国際大学
住所:東京都中央区明石町10-1
電話:03-3543-6391(代表)

歌舞伎座
住所:東京都中央区銀座4-12-15
電話:03-3545-6800(代表)

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