熊野。こっちの世界でちゃんと死になさい。

こっちへおいで。そっちじゃないよ。こっちだよ。

別の世界へ連れて行ってあげる。
あなた。迷っているんでしょ。

一度冥界へおいで。
こちらにくれば楽になるわよ。

そっちの世界で、そんなに無理して生きなくてもこっちにきちゃえばいいのに。一度死ぬことできるわよ。

一度、ちゃんと死んだらいいのに。
死ぬからもう一度生まれ変われるのよ。

でもね、あなたがこの世界にきちゃったら、もう一度出ていけるかは保証できないわね。それを決めるのは、あなた。わたしじゃない。わたしにできるのは、いまのあなたにちゃんと死んでもらうこと。

こっちの世界には、いろんな生きものがいるの。
日々日々、どうでもいいことで悩んでいるあなた。

もっと面白い生き物たちと出会えるわよ。

この世界にくるとね、すべてが交わっていくの。木と木。道と木。岩と道。岩と森。虫と土。土と森。境目がどんどんどんどんなくなっていく。「あなた」が、「あなた」だと思っているもの、本当に「あなた」なのかしら。そんなことを思い知らされるわよ。

そうしてね、この森を抜けた先には、「あなた」は「あなた」じゃなくなっているの。それはね、いまの「あなた」が死んだとも言えるし、「あなた」の思っている「あなた」が、実は「あなた」じゃないことに気付くことでもあるの。

そうして、次の人生が始まるのよ。
そんなことをおもって、今までに一体どれだけの人がこの門を通り、一度死に、生まれ変わり、次の人生を歩んでいったのか。

でもね、だれにでもそんなことが訪れるわけじゃないの。
あなたにだけ、特別にその秘密を教えてあげる。

ただ、歩くんじゃない。ただ、森を抜けるんじゃないの。ゆっくり呼吸をして、目をしっかり見開いて、まわりの森の中にあるものをしっかり見ながら、ゆっくり、ゆっくりと歩んでみなさい。葉っぱ一枚、岩一つ、木の皮、今まで見れなかったものに想いをはせて歩いてみなさい。

そうしたらね、あなたの周りの森たちが、精霊たちが、あなたに必要なことを教えてくれるから。精霊たちはね、いっつもきみたちと遊びたいの。こっちにおいでー。こっちの世界においでーって。だから、常にあなたたちにサインを送っているんだけども、ほとんどの人は気づいてくれないの。

精霊たちと友だちになってね。

え、こわいって。そうだわね。この道通るのこわいわね。でもね、怖いことが実はポイントなの。どうしてかわからないって。でもね、それはね、最後まで歩いた人にだけ分かるのよ。

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