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動画で学べる『ふろフェッショナル』 〜入浴介助の達人になる7つの心得〜




はじめに

介護施設での入浴介助のプロのことを私は『ふろフェッショナル』と呼んでいます。

「え、そんなにお風呂のことって意識してなかった!」


「入浴も数ある介護業務の平凡な一つだと思ってた」


・・・という介護職さんもいるかもしれません。


しかし!ひとたびお風呂の介助をうまく行おうと思うと、普段の介護を振り返り見直しをはじめなければなりません。

そして普段の介護を入浴ケアの視点から見直すと、相手の動くタイミングを無視した自分本位の介護や服をひっぱるような乱暴な介護の間違いに気づくことができます。


入浴動作が生活動作の中で一番むずかしいと言われます。


そしてそのむずかしい入浴動作を適切に介助でき、肩まで浸かって温まる気持ちの良い入浴を実現する人のことを私は「ふろフェッショナル」と呼んでいます。


私はデイサービスで入浴介助を15年以上行ってきました。そこで半埋め込み式浴槽での「座位入浴」という方法がいかに利用者の身体の動きを引き出すことができるか、ということに感銘を受けました。最初はたくさん介助が必要だった方でもだんだんと浴槽の出入り動作が上手になる人がいました。そして残っている力を大切に介助すれば肩までつかる気持ちのいい入浴を取り戻せる、という場面をたくさん目の当たりにしてきました。


この難しい入浴動作が維持できるということは他の生活動作はほぼ維持ができます。いろんな施設をみてきましたが、入浴ケアの充実している施設の利用者は他と比べて元気なんです。

すぐに機械浴を使う施設では短期的には介助が楽かもしれませんが長期的には利用者の介護度が高まり、介護業務が大変になってきます。入浴ケアをただの日課のお風呂と考えるのではなく、利用者の元気の維持、職員のやりがい、仕事の負担の軽減にもつながるとても大切なこととして捉えていただきたいのです。



このnoteでは半埋め込み式浴槽を使った座位入浴を中心に解説していきます。

今まで私は入浴ケアを伝えるべく全国でセミナー「ふろフェッショナルになろう!」を開催し好評を得てきました。またたくさんの人に知って欲しいと思い、お風呂に湯を張って実践的におこなう介助方法をYouTube動画で撮影もしてきました。

今回はそのYouTube動画の中から、「これは入浴介護をする上でぜひ知っておいて欲しい」という選りすぐりの動画7本をピックアップしました。そして動画では伝えにくいことを文章でわかりやすく解説しました。動画で方法を理解していただき、解説でその技術の核心に迫ります。




このノートであなたの施設の入浴ケアが改善され、
喜ぶ利用者が増えれば、これほど嬉しいことはありません。




【 こんな方にオススメ 】
✅気持ちいい入浴で利用者に喜んでもらいたい
✅生活リハビリ浴槽がうまく使えていない
✅介護施設の入浴ケアを見直したい
✅利用者の力を大切にした介助を身に付けたい
✅浴槽の改修や福祉用具の導入を考えたい

もしあなたが上の項目に一つでも当てはまるのであれば、このノートがきっと役に立つでしょう。


では早速はじめましょう!


●其の一)入浴は生活動作の中で一番難しいと心得よ

入浴が生活動作の中で群を抜いて難しいということを肝に銘じることです。
そうすれば、油断せず普段の介護から、ご利用者の一挙手一投足を大切にせねばという気持ちで介助にのぞむことができ、入浴介助という本丸に切り込むことができるのです。

それでは入浴介助のどの辺りが難しいのか?その辺りに焦点を絞った
1本目の動画をみていただきましょう。

入浴介助にのぞむ皆さんへの強敵のいる場所と財宝のありかを示す地図となる動画です。そして、あと後に続く解説を読んでいただくとさらに理解が深まっていくと思います。

動画❶お風呂は生活動作で一番難しい!入浴介助の極意
  ↓(画像をクリックしてください)↓

「がんばらないリハビリ介護Ch 第16歩」より
まず上の動画をみてから下の解説をお読みください。
ご覧になりました?・・・いかがだったでしょうか?
それでは、この動画のポイントを解説していきますね。

動画❶のポイント
【 入浴が生活動作の中で一番難しい理由 】
①浴槽や床は濡れていて滑りやすいから
②利用者が裸で服などをつかむところがないから
③お尻が床に着くのは入浴のときだけだから
④立ち上がりの3条件を奪われるから

【 入浴が生活動作の中で一番難しい理由 】

①浴槽や床は濡れていて滑りやすいから
 浴槽や床は水で濡れてツルツルと滑りやすい。介護施設の利用者は動作が不安定な方も多いため、転倒、転落の危険があります。「滑りやすいですよ」という声かけと共に、安定した動作を身に付けてもらえるように普段の介護に配慮しましょう。
 
後述しますが、入浴動作では不安定になりやすいポイントがいくつかあります。そのポイントを知り、あらかじめ転倒・転落を予防する介助が必要なのです。それが介助される方の安心感につながるのです。


②利用者が裸で服などをつかむところがないから
 ふだんの介助で利用者の服を掴んだり、引っ張ったりしている職員さんは入浴介助が下手です。だって入浴時は誰も服を着ていないですもんね。だから引っ張るところをその職員は探します。そして脇の下などに手を入れて引っ張る、相手に抱きつかせて抱え上げるなど、ご本人の力を引き出せない介助をしてしまうのです。

ですから入浴介助がうまくいかないという施設は普段の介助から見直していく必要があるのです。
 


③お尻が床に着くのは入浴のときだけだから
 特に思い浮かべて欲しいのはお尻が地面につくという姿勢です。あの姿勢は車椅子生活をしている人にとって浴槽に浸かっている時だけなのです。ですから、お風呂のなかでいきなり頑張ってもダメ!立ち上がれません!
 日常の動作、とくに椅子からの立ち上がりの動作を大切にしていく必要があるのです。


④立ち上がりの3条件を奪われるから
「前かがみ」「足をひく」「適したイスの高さ」という立ち上がりの3条件があります。お風呂の中ではとくに「適したイスの高さ」がありません。
 お尻は床についているからです。その代わりお湯の中なので「助けてくれる力」が現れます。そう「浮力」ですね。この浮力を最大限味方につけるのが入浴介助ではとても大切になります。

 ですからお風呂の中での立ち上がりの3条件は以下のように書き換えられなければなりません。


 【 立ち上がりの3条件 (入浴編)】
  ①前かがみ
  ②足をひく
  ③浮力(←適したイスの高さの代わりに)

ぜひこの3条件を大切にしていきましょう。


●其の二)ふろフェッショナルの条件とは


動画❷ふろフェッショナルになろう!入浴介助の極意
  
 ↓(画像をクリックしてください)↓

「がんばらないリハビリ介護Ch 第224歩」より

はい、それではこの動画を解説していきますね

動画❷のポイント
【 ふろフェッショナルの条件とは? 】
①恐怖心を与えない触れ方ができる
②座位の安定に黄金の三角形を知っている
③麻痺など不自由な手足に配慮できる
④浴槽の出入りの介助を安全に行なえる

【 ふろフェッショナルの条件とは? 】

①恐怖心を与えない触れ方ができる
 滑りやすい環境で動作を行うため恐怖心があります。関わる職員は不安定な動作をする時には手を離さないことが大切です。もし利用者が不安定になったときも手を触れているとすぐ異変に気付き、すぐに両手で支えられるなど対処がしやすいです。


②座位の安定に黄金の三角形を知っている
 入浴動作をする時に利用者の安定のために黄金の三角形を意識してみてください。すなわち足の裏−お尻−手です。この三点がしっかり地に着いていると座位は安定します。そして三点を安定させるとそのうち一点を動かすことができます。

例えば、手と足の裏が安定しているとお尻を横に移動することができます。また手とお尻が安定していると足をあげて浴槽を越えることができる。

このように座位入浴を安全に行うには、三点を安定させることをまず意識してみてください。

③麻痺など不自由な手足に配慮できる
 
介助が必要な人でも脳卒中の片麻痺や人工関節などで左右の動きに差がいる人もいます。例えば左半身に麻痺がある場合、浴槽の出入りに左足は介助が必要で右足は自分で動かせる、そんな方もおられます。

介助の上手な人は動作の全過程のどこに介助が必要か?適切な箇所で介助を「合いの手」のようにいれられるとすばらしいです。 


④浴槽の出入りの介助を安全に行なえる
 浴槽の出入りはとても難しい動作の一つです。足が浴槽を越える時には、上半身は不安定になります。特に後方に倒れようとします。
 
この時、介助者は利用者の背中に手を回し、後ろに倒れないように支えます。「支えてるので大丈夫ですよー」と声をかけましょう。この安心感があるといいですね。せっかく入ったのに恐怖感を与えてしまうと「もう2度と入りたくない!」なんて言われて残念な結果になってしまいます。



●其の三)環境が大切と心得よ


動画❸入浴ケアの影の主役は半埋め込み式浴槽だ!
  
 ↓(画像をクリックしてください)↓

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京都北部、天橋立を望むきれいな町で介護現場の理学療法士をしています。「がんばらないリハビリ介護」というYouTubeチャンネルを更新中。励みになりますのでサポートしていただけると嬉しいです。