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介護施設で転倒事故を減らす7つの方法

内容:テキスト2万字・解説動画56分・なんでも質問券

【自己紹介】松本健史(まつもとたけふみ)1972年大阪生まれ
関西大学法学部政治学科卒業 九州リハビリテーション大学校卒業 
佛教大学大学院社会福祉学修士課程修了 
理学療法士/ 社会福祉学修士 / 介護支援専門員 / Youtuber 
2000年熊本機能病院病院勤務
2004年NPO法人丹後福祉応援団勤務 地域リハビリテーションに従事する
2014年合同会社松本リハビリ研究所を設立
 日本全国で多くの介護施設でリハビリアドバイスをおこなう。日課でできる生活リハビリ「がんばらないリハビリ介護」を提唱し、介護現場ですぐに役立つと好評。また年間80回を越える従事者向け研修会の講師も務める。

2019年YouTubeチャンネル「がんばらないリハビリ介護」配信開始
 「転倒予防のすべてがわかる本」(講談社)など現在まで
      共著含めて7冊出版
 趣味:マラソン 読書 映画鑑賞(ドキュメンタリー系) 

※このnoteの内容と連動し、より深く解説した読者限定動画(56分)
がご覧いただけます。ぜひ有効に利用し、理解を深めてくださいね。
  ↓(テキストご購入でもれなく観れます)↓
動画版【介護施設で転倒事故を減らす7つの方法】56分

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【このnoteを読むメリット】

①利用者さんの転倒事故が減る
転倒事故はいろんな場所、いろんな時間帯、いろんな状況で起きます。
原因の究明が不十分であり、「原因不明」と記載している事故報告書もあります。究明があいまいなままでは、立てられる対策は「見守り強化」「声掛けをこまめにする」「センサーで早めに感知する」など紋切型になってしまいます。このような対策は再発予防効果が期待できません。本稿を読むことで転倒の原因を各種の要因に分け分析でき、チームで効果的な対策が立てられるようになります。

②リーダーが育つ
転倒事故をはじめあらゆる事故は施設のエラーメッセージなのです。1つの事故から学び対策を立てるためには、要因を探り、本人から聞き取ったり、職員から聞き取ったりした情報をまとめ予防策を立てる必要があります。またその予防策がうまく機能するように仕組化しなければなりません。よって転倒事故を減らすという取り組みからアナタの介護施設のリーダーが育つのです。これを読んでいただいた方がリーダーになっていただくことはもちろん、ぜひ新人を育てるツールにも、このnoteが役立つはずです。

③利用者の元気があふれる
転倒事故は利用者の元気を奪うもの。転倒をきっかけに、車いすになったり、寝たきりになったり、重度化が進行してしまうことが多いのです。
うまく対策が立てられなければ、悲惨な施設になってしまいます。「動かないでください」「寝ててください」と、とにかく利用者を動かさなければ事故は起きない、そんな考え方になってしまうのです。それでは本末転倒です。本稿ではまったく逆の方法で転倒予防を提示します。本人の疾患や生活歴、身体機能を知ったうえで本人の生活基盤を守ることを目標に、転倒予防対策を考えます。こういった対策は転倒した本人だけでなく、他の利用者の次なる事故の防止策にもなっています。この考え方を取り入れることができれば、利用者の元気があふれる施設に変えていけるのです。


④ケアの質が向上し、究極の人手不足対策になる
いま介護施設は人手不足で困っています。転倒事故があれば、ただでさえ業務に追われて時間がない中に、けがの手当てや医療機関受診、家族への連絡・謝罪、報告書の作成など追加業務も増えてしまいます。それに加え、歩けていた人が転倒により、歩けなくなってしまうなど「重度化」も進行してしまいます。私は人手不足の中でも介護の質を保つためには、「元気な人はその元気が維持できる」「重度な方に手厚い介護が行なえている」この両輪がうまく回っていることが大切だと思います。

本稿でお伝えする転倒予防の秘訣はあなたの施設の介護の質を上げることでしょう。そして質の良いケアは人手不足を補う一助にもなります。またそういった質の良いケアを実施する施設は、職員の離職率は低く抑えられると思います。
「あの施設の利用者さんはとてもいい顔をされていて、すごく元気だぞ」
そんな口コミが広がれば、入所希望の待機者も増え、経営の安定も期待できるでしょう。そして求職希望者も増える!この好循環につながるのです。

⑤解説動画でも学べる
本稿の内容を著者の松本健史自身が、文章では表現しにくいことも加えて解説したYouTube限定動画(56分)がご覧いただけます。
  ↓(サンプル動画)↓
https://youtu.be/I9rHE5IWhr8

サンプル動画約8分【介護施設で転倒事故を減らす7つの方法】


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⑥メール質問が可能
実行したけど、うまくいかなかった。こんな場合はどうしたらいいんだろう?現場でのお悩みがでてきましたら、メールでご質問をお受けします。
お気軽にメールをください。原則として3日以内にお返事をするようにします。(※本テキスト末尾の質問カードを参照ください)




はじめに

介護施設で働いていて感じてきたことですが、
元気だった高齢者の多くが転倒してしまい、
それがきっかけで「要介護状態」になってしまう人が多いんです。
こんなイメージ・・・

転倒→長期入院→寝たきり
転倒→閉じこもり→認知症
転倒→骨折治療→車いす生活


家族の方に
「いつから元気がなくなったんですか?」と聞くと
「半年前に転倒して頭を打ってからです」とか
「買い物に行って、その帰りにこけて骨折してからです」とか
転倒きっかけで要介護状態になってしまっているケースが
本当に多いことを実感します。
だから「転倒をいかに防ぐか?」は高齢者ケアに携わる専門職
にとって、とても大事なことだと思うようになりました。
そして老化について調べたり、転倒したという人に話を聞いたり、
僕の働いていたデイサービスで起こった転倒事故を分析したりして、
わかってきたことがたくさんありました。
当然ですが、人は歳をとります。
老化に伴う転倒リスクは、徐々に高くなっていきます。
一例をあげると疾病、視力の低下や筋力低下、反応時間の遅延・・・。
そして、これらを知ることで転倒のリスクが回避できることもあります。

本稿では介護現場の職員や介護する家族が知ることで、
確実に転倒リスクが減らせることを厳選して書いてみようと思います。
参考にしていただけると嬉しいです。

転倒の要因は大きく分けて3つ

転倒の仕方や原因はたくさんありますね。
そう100人いたら100通りのこけかたがあって、100通りの経過をたどる
といっても過言じゃありません。
でも、よくよく突き詰めると転倒の要因は以下の3つに分類できます。
それは「外的要因」「内的要因」「その二つのミックス」です。
「転倒事故が多くて・・・」と悩んでいる介護施設の方には、ぜひこの分類を知っていただき、起きた事故をまず分析してみてください。そうすると自然と対策が浮かんでくるはずです。
ではまず、その3つをみてみましょう。

●外的要因
 段差、すべりやすい床面、障害物につまづいた、人がぶつかってきたetc・・・。このように転倒が「ある環境」のせいで起きてしまうことを
外的要因と分類します。またこの外的要因も以前からある状況なのか、その時たまたま発生した状況なのか、と分けることができます。たとえば普段は普通に歩ける廊下が、その時ワックス塗りたてでツルツルして、すべりやすくなっていて転倒した、など。これを突発的要因といいます。

●内的要因
 視力低下で段差がみえない、筋力低下によるふらつき、バランス力の低下、反射神経の低下etc・・・。このように寄る年波に勝てず、若いころの身体機能なら転倒しなかったような「本人の身体機能」のせいでこけてしまうものを内的要因と分類します。またこれも突発的要因があります。普段ないようなめまいがして立ちくらみをして転倒してしまった、というような場合です。

●ミックス(外的要因+内的要因)
 そして前出の2つが絡まり合うミックスの状況(たぶんこのミックスが事例としては一番多いのではないでしょうか?)。人に話しかけられ、気がそれていた状態で、足もとの段差に気づかずつまづいて転倒した場合(下図)がそうです。人が話しかけたことと段差があったことは「外的要因」、気がそれて段差に気づかなかったのは「内的要因」といえるため、複数の要因が重なって転倒事故が起きた場合、外的要因と内的要因のミックスと分類します。

内的  外的

転倒事故の分析の仕方
 
もし転倒事故が起きた場合は、
①外的要因によるものなのか?
②内的要因によるものなのか?
③またはそのミックスなのか?
について考えるといいです。
介護現場ならぜひチームで、しっかり要因を考えてみましょう。
うまく原因を突き止めることができると効果的な再発防止策がつくれます。
もし今回の原因が段差につまづいて転倒したのであれば、
外的要因「段差」が原因です。そして対策を考えます。
その段差をスロープにするべきか?
段差部分にカラーテープを貼り、目立ちやすくするか?
転倒した方に、そのコースを通らないようにしてもらうか?
・・・など再発防止策を考えていくことができます。
 
また転倒した人に聞き取りをおこない「段差がよく見えなかった」言われたとしましょう。
それならなぜ段差が見えなかったのか?と検証します。
実は見えなかったのが視力の問題の場合もあります。その人の視力がここ数ヶ月で大きく低下していて、白内障の指摘を受けていたとわかった。
そうであれば、
「手術によって視力回復できないだろうか?」と眼科医に相談にいくことだって転倒予防対策なのです。(メガネの度数を合わせると転倒しなくなった!という方も・・・)
一つの転倒に対して、本人に聞いたり、状況を確認したり、はたまた目撃者に聞いたりして、しっかり起きたことに向き合うことで、対処方法が見えてくることがあるんです。

対策の立て方 「こんなケースならどうする?」(転倒事故応用問題)

では応用問題です。
「Aさんが廊下を歩いているとトイレからBさんが、車いすで勢いよくバックで出てきて激突し、Aさんが転倒してしまった」
このようなケースはどうでしょうか?

これはAさんにとって、Bさんが外的要因に当たりますね。だからBさんに気を付けていただき、トイレから出てくるときにゆっくり出てきてもらうように声掛けをします。そしてバックではなく、トイレ内で向きを変え、前進で左右を確認してから、廊下に出てきてもらうようにお願いします。

また歩行者側であるAさんにもトイレの出入り口付近は、このような危険があるため、トイレの扉と反対側の壁際を通行してもらうなど、生活の安全性を高める対策を考えます。
また歩行者は常に、衝突したりされたりして、転倒してしまうリスクがあります。バランスを崩しかけても立て直せる身体機能があるかどうか?はとても大切な要素と言えます。ですからAさんにはバランス体操をお教えし、リハビリメニューとして日課に取り入れていただきます。
このようにAさんにもBさんにも再発防止策を講じていくと効果的です。



みてきたように、転倒事故の予防には、対策する側がいろんな引き出しを持っておく必要があるんです。しっかり原因追及をしないと介護施設では職員がパニックになって、「動かないでください!」「歩かないでください!」と利用者の行動抑制につながってしまうこともありますね。
できるだけ行動は狭めず、環境を整えたり、身体機能に合ったアプローチをしたりして、工夫をしていきましょう。
本稿では大きく7つに分けて転倒予防に役立つ「引き出し」を提示しました。これを実行すれば、お悩みの転倒事故が格段に減りますよ。
それでは「その1」からみていきましょう。

現場でできる転倒予防(その1)
「環境を整えよう」

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京都北部、天橋立を望むきれいな町で介護現場の理学療法士をしています。「がんばらないリハビリ介護」というYouTubeチャンネルを更新中。励みになりますのでサポートしていただけると嬉しいです。