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くさまくら

「私はみんなの“保健の先生”みたいになりたい」_____


これは宮田本人のグループ内での理想のポジションだ。2期生最年長としてグループに加入し、中高での保健委員やダンス部員としての経験を元に、2期生の中でも「お姉さん」のような存在として活動してきた。彼女が初期からメンバー、特に同期のメンタルケアに努めていたことは皆が知るところである。


そんな宮田であるが、3期生、特に森本にとってもかけがえのない「お姉さん」であった。


森本は加入当初ネガティブな性格で、「アイドル1年目は楽しいことがなかった」「家で毎日のように泣いていた」[1]と本人も話していた。そんな彼女が生まれ変わろうと決意したのが昨年の誕生日であるが、森本が変化した大きな要因の1つが宮田の存在である。


森本本人は、「壁を壊してくれた」と繰り返し話しているが、恐らくそれは宮田が“保健委員”だからだろう。書籍『日向坂46ストーリー』には、次のように書かれている。

「正論で解決法を示すのではなく、ただ相手の気持ちに寄り添うこと。その“共感”の力が、一番人を癒やしてあげられることを、彼女は知っていた。」[2]


先輩との関係に遅れをとっていることを自覚している森本の手を引き、輪に誘い込むという方法もあっただろう。しかし宮田は、森本に対し「ラフな感じで話しかけ続け」[3]た。

結果、森本は自ら生まれ変わることを決意し、2021年、さらに2022年と目覚ましい飛躍を遂げている。また、先輩との関係性も、加藤が「茉莉は言っていいんだよ」と発言した[4]ことに代表されるように、濃いものとなっていった。しかしその中でも森本にとって宮田は特別な存在であり、2人のエピソードを列挙するとキリがない。


もう少し、MM姉妹の話を続ける。

2人は、ポジションがシンメや隣になることが多かった。否、全てのシングル表題曲、アルバムリード曲においてシンメまたは隣である。シンメや隣のメンバーは必然的に話す機会が多くなるのは周知の事実であるが、宮田からのそれは人一倍強く、本人も愛萌ハラスメント、“マナハラ”と呼んでいる。マナハラを受け続けた森本は、次第に宮田に対してもあたりが強くなり、宮田のInstagramが一時凍結した時に爆笑したり、宮田の誕生日に遊園地に誘われても断ったりしている。森本の宮田に対する当たりの強さは、日向坂の先輩後輩の関係の中でも随一のものだろう。



少し話が逸れたが、恐らく宮田は、特に初期の森本の状況を汲んでいたのであろう。どこまで汲んでいたのかは本人のみぞ知るところであるが、“保健委員”として、迷える後輩に手を差し伸べる。それは彼女にとって当たり前のことだったのかもしれない。しかし彼女のその行動は、間違いなく森本を救い、ひいてはグループを救っていた。当の宮田は、森本に対し「あなたの存在があったから、私は背中を伸ばしてステージに立てた気がします」[5]と綴っている。宮田への恩返しが活動の原動力の1つであった森本にとって、この言葉に勝る言葉はないだろう。私はこの一文を読んだ時、涙を禁じ得なかった。互いによい影響を与え続けている、先輩後輩の、否、姉妹の1つの理想の形だろう。この2人は、いつまでも“MM姉妹”であり続けるのだ。宮田がこのように感じることができたのは森本本人の成長もあるだろうが、この話は年末にでも綴ることとしよう。


宮田の背中を見て育ったのは、森本だけではない。他の3期生3人も然りである。「3期生と宮田愛萌」というフレーズを聞いたとき、ミート&グリートの際の「定点カメラ」を思い起こす人は多いのではないだろうか。無論私もその1人である。定点カメラに複数のメンバーで来て、休憩の合間にお話する、いわば楽屋のような雰囲気が見られるというのが定点カメラの大きな魅力の1つだ。しかし、宮田は違った。休憩時間に入るとすぐに1人で定点カメラの部屋に来て、ひたすら自分の趣味について話す。私は定点カメラの大ファンで、基本的にミーグリの合間は定点カメラを見るのが習慣になっているが、宮田以外にひたすら1人で話している人を知らない。


前述のように、定点カメラの大きな魅力の1つは複数人での雑談が見られることである。つまり、定点カメラ部屋に誰かいるということは、定点カメラ部屋に行くハードルが下がるということでもある。そこでよく来たのが3期生だ。3期生(の一部)と宮田が話している姿は、定点を見たことがある人であれば一度は見たことがあるのではないだろうか。

私は、宮田なしには日向坂の定点カメラはないと思っている。“保健委員”の宮田がいたから、定点カメラのハードルが下がった。そして一度下がったハードルは上がることなく、宮田が体調不良でミーグリを少しずつ欠席するようになっても、3期生を中心に定点カメラは盛り上がりを見せている。3期生を推していなくても、定点カメラで3期生が会話しているシーンが好きという人も多いのではないだろうか。もしかしたら推し補正なのかもしれないが。


また話が逸れたが、「定点カメラに来ている」という事実が、何より宮田が3期生に慕われていた証拠だと考えている。宮田本人は無意識なのかもしれないが、その「お姉さん」としての姿は間違いなく3期生に響いており、それはこれからも変わらないのだろう。私は定点カメラで3期生のことを見るたびに、アイドル宮田愛萌のことを思い出すだろう。


本稿もそろそろ結びに近づいている。“保健委員”としてメンバーをお姉さん目線で見つつ、1人のアイドルとしてもファンに夢と希望を与え続けた、“宮田愛萌”という1人の人間が、次の夢のために旅立つ瞬間に立ち会えて、幸せだ。


日向坂には4期生が加入する。今度は、3期生が“お姉さん”になる番だ。“宮田愛萌”にはなれなくても、それぞれが、それぞれの理想を目指し、4期生に慕われる先輩になってほしい、今の3期生なら必ずなれると、私は信じている。


1人の森本茉莉推し、3期生推しとして、“保健委員”、“お姉さん”であり続けた宮田愛萌に最大限の感謝を込め、この文章を結ぶ。



[1] セルフ Documentary of 日向坂46 #7 2022年6月26日 TBSチャンネル1

[2] 『日向坂46ストーリー』 集英社 西中賢治 2020年3月30日 P240

[3] 日向坂46森本茉莉オフィシャルブログ お姉さん 2022年9月8日-

[4] サッポロ一番公式YouTubeチャンネル 「しし庵」 影山優佳・佐々木美玲・高本彩花

編 2022年5月12日

[5] 日向坂46宮田愛萌オフィシャルブログ 散る花が風と手を取り空高くとぶよとぶよと笑う我かな 2022年9月7日

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