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NY ブルックリンのアクセラレーター 「Urban X」とは? 最新のBatch07オンラインデモデイに登場した全7社の「街」に関連する注目スタートアップも紹介。(オンラインデモデイはスタンダードになるのか?)

Urban Xとは?

Urban X(アーバンエックス)はニューヨークのブルックリンを拠点としてmini(BMW傘下のミニクーパーで有名なブランド)とUrban Us(ニューヨークのアクセラレーター)によって2016年に設立されました。VCで言うとCVCのような、BMWと関係の深いコーポレート・アクセラレーターです。BMWと関係が深いので、モビリティ関連のみに投資しているのかと想像しがちですが、不動産、建設、インフラ関連、モビリティ、食品、水、エナジー関連の業界に属するスタートアップに支援しています。

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ブルックリンの文化に融合

ニューヨークではロウアーマンハッタンブルックリンがスタートアップの集まる場所と言われており、特にブルックリンは元々工業地帯だった地区に再開発が進み、ここ数年ではニューヨークでも最もクールな街と言われており、おしゃれなレストラン、カフェ、雑貨屋が集まり壁にはグラフィティが描かれ、物価もマンハッタンよりは少し安く多くのヒップな若者が集まる街として有名です。

Urban Xはそんな新しい文化が形成されているブルックリンを拠点にしています。テーマは「 Help making cities more efficient, liveable, and loveable」で「」というキーワードに関連するスタートアップに投資しています。なんだか動画がかっこいいのでご覧ください。マーケティングが上手いというか、お金かかってる感じがします。

アクセラレート・プログラム詳細

約6ヶ月間のアクセラレートプログラムでは毎回10つのスタートアップを採択して$150,000(約1,500万円)を投資し、6人の'EXPERTS-IN-RESIDENCE'と2,000人以上のネットワークを繋げて支援します。設立以来6回のプログラムを実施し50社以上に投資してきましたが、先週Batch 07のデモデイがオンラインで行われ参加しましたので、今回卒業した全てのスタートアップを紹介したいと思います。

ちなみにBatch 06のデモデイがブルックリンの会場で行われた際も参加しました、その時は倉庫を改造した100人程度が集まれるスペースに無料のフィンガーフード、ビールやワインなどのお酒が振舞われ、照明、音響、内装にこだわったイベントとなっており、やっぱりお金かけてるなーという印象を持つと共に、参加者の熱気がすごく、参加するだけでもワクワクしました。

デモデイをオンラインで開催することのメリット

今回のBatch 07はDemo Dayは完全にオンラインで行われました。起業家のプレゼンテーションはZoomやYou Tubeで配信され、900人が観覧したと報告がありました。前回の現地開催の際は多く見積もっても150人程度の参加者だったかと思いますので、オンラインで開催することのメリットとして、多くの投資家/スタートアップ界隈の人がアクセス出来ることがあるかと思います。YCのW20のBatchもオンライン開催でしたが、関係者のみ参加可能でしたので、彼らがもしオープンにデモデイを開催したら何人の人が集まるか興味深いなと思います。反対にオンライン開催のデメリットとしては、生で開催する臨場感が損なわれていると感じました。スクラムベーンチャーズの宮田さんも、生での開催について、

同じ場所に同時に集まり、エンジェルや投資家がトレンドや各社の状況を話しながら一気に投資を決めていくのがデモデーの醍醐味でした。

と言っていたように、オンラインでは、チャットで他の人と会話できたいり、他の人のコメントが見れますが、臨場感が大きく失われていると感じます。

プレゼン内容への質問に関しては、オンライン上のコメント、Twitterから受付され、一連のプレゼンテーションの後に、Urban Xの運営の方から読み上げられ、各起業家が回答をするという流れでした。One on oneセッションを希望する投資家は別途申し込みが可能であるのと、起業家に質問があれば直接出来るように連絡先も公開されているようです。

Demo Day Batch 07

今回のDemo Dayはプログラムを卒業した7つのスタートアップの紹介がありました。YouTube上で動画が公開されてますので、雰囲気を感じたい方は是非ご覧ください。全部で1.5時間弱の動画ですが、お時間のない方は下記をご覧下さい。数が少ない為全て紹介します。

また、私の個人的な注目のスタートアップは3. Hades6. EVAです。

1. FIRMUS

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FIRMUSはマシーンラーニングを使った、建設プロセスマネジメントのSaaSです。建設業界ではとにかく無駄が多く過去の経験から学んで改善するというプロセスが確立されていないようです。FIRMUSではAIとマシンラーニングを使い過去の建設に関するデータから予想されるエラーやリスクをリアルタイムにアラートする機能を持っています。例えば米国の住宅建設業では設計上のミスで、建設の段階で設置した通気口の扉と柱がバッティングして開かないというようなミスが容易に起こってしまいます。設計の段階でそのような予想が立てられていれば、修正が30分で済むことを、長い時間をかけて建設の段階で直すという時間のロスが起こっています。これは、レビュープロセスが人為的に行われていることが理由で、FIRMUSでは3Dでデザインされた図面を使って、マシンラーニングによってエラーを見つけます。料金体型としては1つのプロジェクトにつき$5,000をチャージする予定で、EUと米国におけるマーケットサイズは$1.2ビリオン。競合はSOLIBRI、Xinaps、 BluEnt、 Bim consulting、 BEXEL、 BIM Consulting。どの競合よりもFIRMUSは多くのデータベースを有しリアルタイムにフィードバックすることが可能とされています。

コメント:マーケットサイズもはそれなりに大きく、今後も成長が見込めそうな市場ですが、競合との特徴の違いが多少分かりにくいかなと感じます。


2. CHARGELAB

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ChargeLabはオープンソフトウェアベースのEV充電プラットフォームで世界で最も使われている5つのタイプのEVチャージャーのうち、4つをカバーしています。EV業界が根本的に抱えている課題の一つに充電のインフラが十分に整っていないということがあり、ユーザーのエクスペリエンスも満足のいくものではないようで、ChargeLabはそれを解決しようとしています。要は、EVを充電するプラットフォームが全然イケてないので、新しいサービス作ろうぜというノリで作られたスタートアップです。Teslaは基本的には素晴らしいカスタマーサービスを提供しているが、それ以外のプラットフォームは欠陥だらけであり、アプリも使い辛いとのこと。ChargeLabのプラットフォームでは20秒間で充電の開始を目指しており、ノズルをチャージャーに差し込み、携帯電話でSMSを送信すると充電が開始される仕組み。EVチャージャーは$5ビリオンの市場規模で、競合はTesla、Chargepoint、evconnect、greenlots等。Teslaユーザーはスーパーチャージャーという大容量のすごい充電器を使えると同時に、その他の充電ステーションも利用が可能です。ただこのイケてるスーパーチャージャーはテスラ以外のEVには解放されていません。Chargepointはなかなかのアプリを作っているが、利用がビルのオーナーに限られコストも高い。evconnectとgreenlotsは複数のタイプの充電ステーションに対応しているが、アプリのUIがクソとのこと。ChargeLabは現在7つの都市に設置しており、$1百万のARR(Anual Recuring Revenue)を確保。ビジネスモデルはEVのドライバーに対して充電した電気にかかるコストの数パーセントを手数料としてとることに加えステーションの設置者にSaasモデルを提供しています。

コメント:ChargeLabはテスラ以外のEVの利用者に使い易い充電ステーションを提供すべく立ち上げられたサービスですが、既に年間$1百万の売上げを確保しているものの、競争環境が激しく、今後は如何に競合よりも先に多くの場所にステーションを出していけるかがキーとなると思います。また、充電ステーションというハードウェアを提供している為、ステーション出店コストがかかる為、急激な成長を如何に大型の資金調達が出来るかも重要かと思います。


3. HADES(注目スタートアップ)

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HADESはAIを使った水道管の検査ソフトです。アメリカとEUだけで、張り巡らされている水道管を距離にすると5百万マイル(約8百万キロで地球1周が4万キロなので200回地球を回れる計算)で、$50ビリオンが1年間に下水道の為に使われる金額だそうです。しかも、そのうちの10%は規制によって検査される必要があり、その方法は人為的で改善余地があり、そこにAIを投入して良い検査システムを作ろうというコンセプトのようです。

現在の水道菅の検査は、ビデオを使った検査や故障が起こった時の報告で欠陥を発見している現状であり、スピードが遅い、検査官の主観的によって検査される、人為ミスが起こりやすいという欠点があるそうです。Hadesはディープラニングを使い、検査ビデオから自動的に欠陥を検知して技術者にどのように修理をすれば良いかを伝えるサービスで、時間とコストの無駄を無くすメリットがあります。ビデオによる検査は1Mileにつき1週間かかり、しかもそのうちの25%は欠陥検知ミスとなっているそうで、年間の20%の配管工事は必要もないのに行われている状況のようです(金額にすると$1ビリオン)。競合はVAPAR、 Inloc Robotics、SewerAIそれらよりも高いクオリティで検査が可能とのことです。また、唯一地図を使って欠陥の場所を指摘できる機能を持っているとのことです。ARRは$30kで既にトラクションが出ているところも注目のポイントです。

コメント:ターゲットとしている市場規模は超巨大市場というわけではなく一見すると地味な業界ですが、抱えている問題がAIが得意とするデータ分析で解決出来そうなものであり、このソフトの普及が進むことにより業界のスタンダードとなり、ゲームチェンジャーになりうるのではないかと考えます。ポイントは競合と比べて如何に製品が優れているかかと思いますが、更に調べてみたいスタートアップです。


4. METALMARK(コロナウイルス系スタートアップ)

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METALMARKはウイルスも殺せる空気清浄システムのカートリッジを開発し、空気清浄システムとして販売するハードウェア系のスタートアップです。室内の空気汚染は室外と比べて5倍酷いという統計があるそうです。また、人間は生活の90%は室内で過ごし、室内には様々な有害な物質浮遊しているそうです。みなさんご存知かと思いますが、特にコロナウイルスは室内での感染例が多いです。METALMARKはカートリッジから吸い込まれた空気に含まれる有害な物質を除去し、吐き出し口から綺麗な空気を吐き出す(空気清浄機)システムとのこと。既存の同種の機械よりも約半分のライフタイムコストで、ウイルスや細かいレベルの空気汚染を取り除くことが出来る部分が特徴とあります。エアコン、空気清浄機、空気交換機含む市場は$260ビリオンと巨大市場をターゲットにしています。

コメント:コロナ系対策のスタートアップとして現在のトレンドとして、追い風が吹いているかと思います。ただ、METALMARKは現在は追い風ですが、要はランニングコストが安くウイルスも殺せる空気清浄機だと思いますので、大手のHVAC系企業が類似製品を同様の価格設定で出し、資本力を投入して攻勢をかけられると太刀打ち出来ないのではないかと思います。真似出来ない技術力若しくは、開発に時間がかかる技術を持っていれば環境によっていはM&Aでイグジット可能かと考えます。


5. UNETY

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UNETYは中小規模のビルオーナー向けにメンテナンス費を貸してくれるレンダーとのマッチング機能とコンサル機能を持ったアプリを提供するサービスです。商用不動産業界が抱える課題は、耐震性向上の為の資金を調達する為のファイナンス市場にアクセスがない状態で、通常は規模の大きな業者はコンサルタントを雇用することで、条件の良いファイナンスの機会を見つけることが可能ですが、ほとんどの規模の大きくない業者はコンサルタントに高い費用を支払うことができず、そのオプションがないそうです。ビルのオーナーが物件の住所をアプリに入力するだけで、Unetyのデータエンジンが適切な建設業者と資金提供社のリストを提供します。ターゲット市場は$120ビリオンと巨大市場です。Peer Street、RealAtomが競合。

コメント:ニッチな市場ながらも規模が大きく成長の伸びしろがあると思います。ただ、競合よりもどのような点で優れた価値を提供しているかが分かりにくい為、もう少し調べたいなとも思います。住所を入力しただけで、色々とサービスを受けることができるのは他の競合にはない特徴かもしれません。


6. EVA(注目のスタートアップ)

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EVAは医療業者向けにドローンステーションを提供するスタートアップです。EVAは車の普及にガススタンドや駐車場の設置が必要だったように、ドローンの普及にはインフラストラクチャーを整えることが必須と考えています。EVAはコンテナ型のドローンステーションで、最大で24台のドローンの格納が可能です。コンテナ型なので、ビルの屋上や野外への設置やトラックにコンテナとして積むことが可能で移動性にも優れています。ステーションはドローンによるデリバリーを可能にして、病院や研究所を繋ぐ役割を果たします。また、ステーション内に設置したデバイスで各ドローンのデータを取得することが可能です。ステーションの設置に月額料金$5,000を徴収し、クラウドサービスなどのオプション機能を利用するには追加の料金が必要となります。Skyport、Matternetが競合で、Skyportは大きいサイズのエアクラフトの為のステーションで、Matternetは単体のドローンのプラットフォームですが、EVAは複数の小型ドローンを発着させる為のプラットフォームです。既にAt&T、三菱ふそう、フェデックス、エリクソン等と協業のLOIを締結しているようで、ARRは既に$1百万に達しているそうです。

コメント:ドローンの市場は2018年の売上で$14ビリオン2024年には$43ビリオンになるそうです。成長市場をターゲットとしており、ステーションとしての競合が既にいるものの、コンテナとして移動が可能、複数のドローンを収納可能な特徴を持ったところは他にはなく、特徴が明確です。また、何よりドローンが空中を移動して薬を届けるような生活が普通となるような未来がくることにワクワクさせてくれるサービスであり注目のスタートアップとしています。日系の企業とも協業を開始しているようで、日本への普及も期待されます。

7. THERMA

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US国内で年間$150ビリオン相当の食料が廃棄されていると言われ社会問題となっており、これは人為的ミス、機器の不具合、電源の供給が整ってないことが原因でとされています。Thermaは IOTベースの24時間監視システムで、食料の安全性の向上実現し、廃棄量を減らします。本製品はデータを使った冷蔵マネジメントシステムを搭載しており、医療現場やレストランで使われます。Thermaは手のひらサイズのモニタリングセンサーを提供しており、冷蔵庫に設置することで室内の温度と湿度を感知し、異常があれば警告を発信します。月10ドルから利用可能で誰でも使えることがコンセプトの一つで、マクドナルド、スターバックス、セブンイレブンを含む5,500箇所で使われています。$32ビリオンがターゲット市場です。

コメント:日本の冷蔵のサプライチェインはクール宅急便や新鮮な食料を届ける文化が発達しており、IoTを使った冷蔵システムの管理は想像しにくいですが、相当な数が既に導入されており、成長しているスタートアップと言えるかと思います。

まとめ

以上7社(個人的おすすめスタートアップは3. Hades と6. EVAです)を紹介しました。今後はオンラインのデモデイがスタンダードになるのでは?と予想もされているようですが、(ロックダウンが解かれていることが前提)個人的には感染対策(マスク着用、人と距離を保つ等)をきちんとした上でのオンサイトとオンラインストリーミング配信を組み合わせた形式が両方の方法のメリットも享受できる一番良いのではないかと感じます。

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