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米国のベンチャーキャピタルにおけるスカウトという役割

先日、日本のベンチャー界隈の友人と会話をしてたところ、その友人があるスタートアップ企業をVCに紹介し、最終的にそのVCが出資を決めたという話しを聞いて「スカウトの役割を果たしてして素晴らしいね」というコメントをしたところ「何それ食べれるの?」というような反応が返ってきました。

日本ではあまり聞かないのだろうと思いますが、米国のVCではより一般的な職種である「スカウト」の役割をを紹介します。

スカウトって?

VCの投資条件に合致したスタートアップをVCに紹介することがスカウトの基本的な役割です。スカウトは沢山のスタートアップと繋がっていることがバリューになり、投資クライテリアに合致しているスタートアップをVCに紹介します。ディールが進み、運が良ければそのVCが最終的に投資を決めることがあり、紹介したスカウトの実績になります。スカウトという役割は、基本的にはインターンもしくはVCの外部のパートナー達が担っています。

全てのVCがスカウトを使っている訳ではありません。スカウトを持っている・使っているVCも、スカウトを雇いたい時には、既にVCが持っているコネクションの中で、スカウトとして役割を果たせそうな人に、自然な流れでその役割をオファーするということが多いかと思います。なのでスカウトの求人は世に中あまり出てきませんし、あまり知られていない役割です。

スカウトをチームとして持つ場合、チームのメンバーのバックグラウンドをバラけさせることによって、様々な種類のスタートアップにリーチ出来るようにし、より広範囲にカバー出来るようにしているVCもあります。

スカウトはトップMBAを卒業したばかりの若いプロフェッショナルやMBAを取得する前のプロフェッショナルが担っている場合がありますが、殆どの人がスタートアップでの経験を通じて業界への繋がりを持っていて、且つVCで働くことへの強い希望を持っている人達が多いかと思います。

20年前位と比べて、今はVCという職業はとても人気があり、VCへ就職する人の40%がハーバードもしくはスタンフォードの卒業生であるというアンケート結果が出ているほど、全米のトップ校の学生の憧れの職業となっています。その人気の職種に就く為に最初はスカウトから始めて、実績を出し認められた後に、プリンシパル等中の人になっていくキャリアパスを描いている人もいます。

また、通常のVCよりも投資する領域を絞っているVCや、CVCはスカウトを活用し易いです。CVCはベンチャー投資とは別に何かのビジネスを本業として営んでいる親会社がいて、その本業とシナジーを出せるスタートアップや本業をディスラプトするようなスタートアップに投資をすることが多い為、投資対象とする領域や業界が狭く、その業界にコネクションを持った人をスカウトとして雇うケースもあります。

スカウトは何をしないのか?

スカウトの役割はスタートアップをVCに紹介をすることであり、スタートアップを紹介した時点で、その役割を終えます。その為紹介した後にVCが投資するかどうかを見極める為のデューディリジェンスには参加しません。また、もちろん投資が決まった後のスタートアップへの支援も参加することができませんし、イグジットの具体的な戦略の実行などの紹介以降のフェーズには参加することが出来ません。その為、VCの根幹を担う役割というよりはやはりVCへのエントリー的な職業であり、副業としてスカウトをしている人も多いかと思います。

ジェイソン・カラカニスはセコイアのスカウトだった

米国を代表するエンジェル投資家ジェイソン・カラカニスは、2008年〜トップVCであるセコイアキャピタルのスカウトだったことで知られています。彼は元々起業家でもあり、オンラインマーケティングの会社を経営していて、彼自身デジタルマーケティングに強く、その強みを生かしてスカウトとして沢山のスタートアップにリーチをしていたとのことです。彼はその期間にUberに出会い、個人的にも投資をしてエンジェル投資家として大成功しました。

IndieVCのスカウトプログラム

Indie VCという2015年に設立されたVCが大々的にスカウトを募集していたので、紹介します。

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以下簡単な概要です。

2019年11月に試験的に200のスカウトと共にスカウト・プログラムを開始。さらに2020年から2021年にかけて段々と拡大する予定です。紹介したスタートアップにIndieが投資を決定したら、スカウトは現金を受け取ることも出来るし、希望によってはそのVCに一緒に投資が可能です。


コメント:日本のVCはスカウトの概念があまり浸透していないかと思いますが、これは日本のベンチャー企業の裾野があまり広くないことが理由の一つかと思います。

以前のブログでも紹介しましたが日米ではベンチャー投資の規模が10倍程度違います。米国にはシリコンバレーはもちろん、ボストン、ニューヨーク、最近ではテキサスなどにもスタートアップが集中して集まっており、一つの地域に精通したVCが他の地域でも深くカバーすることは難しく、別の地域では手薄になりがちです。(ただ全米の約40%の投資資金はシリコンバレーのスタートアップに注ぎ込まれます)そのような地理的にな理由もあり、そもそものスタートアップの数が多いので、スカウトの役割を持っている人の需要もありますが、日本のベンチャーはほぼ東京に集まっており、大阪や福岡にもスタートアップはありますが、日本の市場を狙っていくのであればやはり東京に拠点を置くということになり、スカウトの需要があまりないのかと思います。ただし、個人的には創業したてのVCなどはこのスキームを使ってスタートアップを募集することで、少ない人員でも多くのスタートアップにリーチしていくことが出来るのではないでしょうか。

Tiny Capitalのスカウト: 2020/07/16追加のツイート


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