見出し画像

表舞台に出られなくても。

「先輩がいると、みんなの仕事が楽になりますよね~。」
前に、後輩に言われた言葉。
ふうん。そういう実感あるんだ。
ぼくは思った。
みんなの仕事が滞りなく進むように、もろもろ準備をすること。
お膳立てしておくこと。
それがぼくの仕事。
自分でもそれを念頭に置いて、仕事をしているつもり。

今さら聞けないけれど、さっきの言葉。
彼はきっとこれをほめ言葉としてぼくに言ってくれたのだと思う。
でも正直に言うと、ぼくは全然うれしくなかった。

「つまらない仕事してますね。」

あのときぼくには、そう聞こえてしまったから。

自分ではわかっている。
この仕事は組織には不可欠な仕事。
縁の下の何とやらじゃないけれど、スポットは当たらないけれど。
実績と同じくらい、みんなが日々無事に仕事を終えることができたかどうかが大切。

でもね。
ちょっと聞いてください。
だいぶ前から、ぼくの承認欲求が縁の下から出たいとぼくにプレッシャーをかけてきていたんです。
もうすこし脚光を浴びたいと。
「つまらない仕事してますね。」
これは、ぼくのなかから聞こえてきた言葉なんです。

「これはそういう仕事じゃないんだよ。表舞台に出られなくても、きっとどこかでだれかが見てくれているよ。」
ぼくはぼくの承認欲求に、懸命に語りかけました。
長いこと同じような問答をくり返し、ようやく彼はわかってくれたようで、元どおりぼくのこころの奥のほうへ帰っていきました。
でもやっぱり納得はしていないようで、事あるごとに彼はそこからささやくのです。ポツリポツリと。

「つまらない仕事してますね。」

そんな彼の声を聞いているうちに、ぼくは自分の仕事の成果を周囲にアピールするようになりました。

ぼくはこんなこともしているよ。
みんなのお膳立て、頑張ってるよ。
ねえ、見てくださいよ。

みんな、ぼくの言葉に耳を傾けてくれました。
立場の上限関係なく、ねぎらいと感謝の言葉をもらいました。
彼もきっと満たされただろう。
ぼくはそう思いました。

ところがある日。

「つまらない仕事してますね。」

彼のささやきが、まるで変わらない調子で聞こえてきたのです。

「...あなたの仕事がつまらないって言っている意味、わかりますか?」
彼はぼくに訊いた。
つかの間、沈黙。
彼は続けた。
「脚光を浴びたいとぼくは言いましたけど、こんなふうになりたかったわけじゃあなかったんですよ。みんなに注目されたいばかりに、あなたはみんなの仕事を奪っているんです。ほんらいみんながやるべきことを、あなたひとりで抱えて。そりゃあみんな喜びますよ。あいつは便利なやつだって。
みんながほんらいのパフォーマンスを出せるためのお膳立てがあなたの仕事でしょう。それをあなたは、みんなの仕事のハードルを下げることによって実現させようとしている。自分に仕事を集中させて、間違った方法でみんなの負担を軽減している。見当違いの自己犠牲でみんなから脚光を浴びているんです。ぼくに媚びてどうするの。自分に媚びて、どうするの。だから、つまらないって言ってんの。」

ぼくは、何も言えなかった。
自分のこころの声に、こんなにも打ち負かされるとは夢にも思っていなかった。
みんなのために、良かれと思ってやっていたこと。
それが、見当違いの自分本位だったなんて。

表舞台に出られなくても、きっとどこかでだれかが見てくれているよ。

ぼくが彼に言った言葉。
今は空しく自分に跳ねかえってくる。
これまで努力だと思っていたことは、いったい何だったのだろう?

何が正しくて何が間違っているのか、それは結局相手のためなのか、自分のためなのか。
見失ったまま進んでしまうことは、とても恐ろしいことだ。

あれからぼくは、自分の仕事のスタンスをすこし見直した。
手を出す範囲を決めて、そのかわりそのパートに関しては完全に責任を負う。ほかのことはみんなにちゃんと要求する。
ドライになったとは言われるけれど、それでもうまく回っているし、彼の声もあまり聞こえなくなった。

表舞台に出られなくても。

承認欲求は、正しい努力をしている自負で面倒をみて。時々ならいいけれど甘やかさない。
くすぶることもあるけれど、燃えつきてしまうより全然いい。
ゆっくりしっかりメリハリをつけて、日々を過ごしていこうと思う。

<おわりに>
勢いにまかせて書いていくうちに、自分との会話になってしまいました。
ほんとうはリスクヘッジについて書きたいと思っていたんですけどね。逸れて逸れて、ここまできてしまって。

承認欲求。最近よく聞かれる言葉ですが、簡単に満たす手段を知ってしまった今。
自分に嘘をつかず、負担にせずに。
うまくマネジメントしたいですね。

本日もさいごまでおつきあいいただきありがとうございました。
連休明け最初の週末、ゆっくりお過ごしください。

「みんなのフォトギャラリー」用。
「だいすーけ」で検索すると過去のものも出てきますので、記事のテーマに合いそうなものがありましたら、つかってやってください。

それでは、また。

いただいたサポートは、ほかの方へのサポートやここで表現できることのためにつかわせていただきます。感謝と敬意の善き循環が、ぼくの目標です。