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お客様ではなく地域活性化の主体者になれる場所ー千葉県市原市月崎ー

「関係人口」という言葉をご存じでしょうか?
地方との関わり方を表した言葉で、お祭りやイベントに定期的に参加したり、副業で週末だけ地域の企業で働いたり、好きなかたちで地域と関わる人たちを指します。
移住者でも観光客でもない新しい関わり方として注目されており、内閣府が運営する移住応援サイト「いいかも地方暮らし」では、次のように説明されています。

いつでも行ける自分だけのかけがえのない居場所ができる。

地域の人たちにも(中略)隣の家にポッとあかりがともるような幸せをもたらすとともに、「関係人口」として地域に関わる人自身もライフスタイルを充実させることができる、両者にとって楽しい取り組みです。

いいかも地方暮らし公式サイトより

そんな関係人口がこれから増えていく予感がする場所。それが千葉県市原市月崎(つきざき)です。


1日の平均利用者数は5人!月崎駅ってどんな場所?

東京から電車で約3時間、菜の花で有名な小湊鐡道(こみなとてつどう)沿線に月崎駅があります。2両しかない列車に揺られて10分もすると、一面にススキが見えるのどかな場所。
時折車掌さんが車内を歩き、「次の駅前で大きなイチョウの木が見えます。台風で上の葉が落ちてしまったので下の方をご覧ください。」と、なんとも親切なアナウンスをしてくださいました。

トロッコ列車に手を振る車掌さん

小湊鐡道の各駅はクリスマスの時期になると駅前がイルミネーションで彩られます。また、駅から徒歩15分のところにある「いちはらクオードの森」は地元で有名なイルミネーションスポットです。

いちはらクオードの森のイルミネーション

ですが実のところそれ以外は伸びしろだらけ。
事実、月崎駅の1日の利用者数は平均5人。そんな月崎駅を「人が集まるきっかけにしたい」と活動する五味陽輝(ごみはるき)さん(以下、「はるきさん」と記載)にお話をうかがいました。

人が人を呼び仲間は70人に

プロジェクトのみなさん

はるきさんは横浜在住ですよね。決してアクセスの良い場所ではないのに、どうして月崎を選んだのでしょうか。

「知り合いが東京で民泊の開業を手伝っていて、そこで今月崎の活性化プロジェクトを進めているかすみさんと知り合いました。コロナ禍でプロジェクトが中断していたけど再開したいというお話を聞き、手伝わせてくださいとお願いしたのが始まりです」

外から来た人と地元の住民がつながる場所を作りたいと思う原点には、学生時代に訪ねた山口県萩市で「地元の人たちに家族のように受け入れられた経験が忘れられない」とはるきさんは語ります。

「学生時代に人との出会いを求めて日本一周をしていたのですが、地元の人と関わる機会は少なかったです。でも萩に泊まったとき、宿の人が散歩に誘ってくれて、夜一緒に歩いて。それが嬉しかったんですよね。それから何度も萩に行くようになりました」

取材に応じてくれたはるきさん

「あるときは地元の人が集まっているから一緒にご飯を食べようと誘ってもらい、みんながおかずを持ち寄って月を見る会をしたことがありました。これは私の地元では絶対にできないなと思って。そこから地方で人と人をつなぐことに興味を持つようになりました」

月崎プロジェクトに参加している人の多くは高校生〜社会人3年目くらいまでの若者たちです。最年少はなんと小学生。みんな人口減少や空き家などの社会問題に関心を持ち、仲間が仲間を呼び2年間で集まったメンバーは約70名。そのほとんどが月崎がある市原市以外に住む人たちです。
休日のたびにやって来てはマーケットを開催するための許可取りや場所づくりに励んでいます。

まずは草を刈るところからスタート

「余白のある地域だからこそ、若者やよそ者であってもアイディア次第でどんなふうにも盛り上げていけます。クリスマスマーケットだけでなくみんなでどんどん新しいことにチャレンジしたいです。それから『月崎に来れば誰かいる』というコミュニティとしての機能もありますね」

お客様ではなく一緒に盛り上がる新しい観光をつくりたい

最後に、これから月崎をどんな場所にしたいかうかがいました。

「まずは今の活動を持続させることが目標です。地方創生は一過性で終わってしまうことがあるのですが、そうはしたくない。ここに来れば毎週何か面白いことがある、そんな場所にして次から次へと関わる人が生まれていく状態にしたいですね。
そして月崎を訪れた人が『来て楽しむお客様』になるのではなく、みんなで盛り上がれるこれまでとは違う形の観光ができる場所を目指しています。まずは私たちに会っていただき、仲間に加わりたいと思っていただけたら嬉しいです」

地元民でも観光客でもなく当事者として地域を盛り上げていける。地域とのかかわり方にそんな選択肢があったのか、という発見がありました。
はるきさんの話す「新しい観光」に興味を持った方はぜひ一度月崎を訪れてみてはいかがでしょうか。

■イベント情報 ※終了しました
・クリスマスマーケット2023:2023年12月16日
・住所:千葉県市原市月崎701
・場所:月崎駅前
・公式Instagram:https://www.instagram.com/tsukizaki.gh/

人と森をつなぐ「森ラジオステーション」

もう一つ、月崎を語るうえで欠かせない場所があります。その名も「森ラジオステーション」。2014年に市原市で開催された「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」で製作された木村崇人氏の作品で、ここも人がつながる場所になっています。

月崎駅のそばにあり、かつて鉄道保線員の詰め小屋として使用されていた建物を森に見立てています。テーマは「人と森とのかかわり」。森のあちこちにマイクを設置して森の音をYoutubeで配信し、小屋の中には森との一体感を感じられる仕掛けも。

土間に敷かれたレールは窓の外へつながっている(森遊会サイトより)

本来は芸術祭が終わった後に取り壊される予定でしたが、地元の方々が「森遊会(しんゆうかい)」というボランティア団体を立ち上げ、維持管理を行っています。森遊会のメンバー、田村さんにお話をうかがいました。

「芸術祭の後、せっかくの作品だから残そうと私を含めて6人でボランティアを始めました。それが今では100人近くになりましたね。来てくれた人にご案内したり、月に1回定例会をして活動をノートに記録しています」

メッセージ帳を見せていただくと、コンセプトに共感して森遊会のメンバーになった方々のお名前と住まいが書かれていました。
鎌倉や調布など千葉県外の方も多く、なんとアメリカ・バージニアの方まで。

「映画の撮影場所に使われたことがあって、それをきっかけに来てくれた人もいました。ここのボランティアで知り合って結婚した人たちもいるんですよ」

人と人が出会うきっかけになる場所、月崎。その底知れぬパワーを感じるスポットです。

・名称:森ラジオステーション
・住所:〒290-0547 千葉県市原市月崎539
・公式Facebook:https://www.facebook.com/shinyukaimoriradio/

取材を終えて

はるきさんをはじめ月崎プロジェクトに関わる人たちは皆イキイキした表情が印象的でした。クリスマスマーケット以外にも、地元大学生によるガイドなど様々な活動を行っていらっしゃいます。興味を持った方はぜひ一度公式Instagramをチェックしてはいかがでしょうか。


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