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3センチ幅の金髪がくれた勇気

先日、美容院に行った。もう10年以上前、20代前半の頃から同じ美容師さんに担当してもらっている。仕事のグチも恋人と上手くいかないことも、何でも話せる友達のような関係性だ。
考えてみると、2~3か月に1度必ず会う人は他にいない。誰よりも私を定点観測していると言っていいかもしれない。

その人とこんな話をした。

私「今年こそ金髪にしたいなー」
美容師さん「それ5年以上前からずっと言ってるじゃん笑」
私「うそ??コロナ後じゃない??」
美容師さん「いや、もっと前から言ってたよ。で、コロナ禍になって会社の人に会わないからって言ってインナーカラーで金入れたんじゃん」
私「……そうだっけ……?」

コロナ禍の終わりが見えなかった2021年の夏、ずっとダークカラーだった髪に、インナーカラーで金色を入れた。インナーカラーとは、髪の内側を部分的に染めるヘアデザインのこと。
こめかみの横から耳の上の骨が出っ張っているあたり(奥歯をグッと噛むと動くところ)までの範囲を、金色に染めた。肩にギリギリつかないくらいのミディアムショートだったから、髪を下ろしているときは表面の毛に覆われて見えない。

でも顔周りの髪を耳にかけると、耳の後ろから3センチ幅くらいの金色の束が顔を出す。薬指一本分くらいの長さのそれを鏡で見るたび、なんだかちょっと強い女になれた気がしてニヤッとした。

何か理不尽なことがあっても笑顔でかわせる自信のような「無敵感」。
なんかこう、太ももにつけたベルトにピストルを忍ばせている峰不二子みたいなイメージ?いやもちろん不二子ちゃんの気持ちなんて知らんけども。

それにしても、どうして5年以上も前から金髪にしたかったのだろうか。

私は男女問わずK-POPアイドルが好きなのだが、彼ら彼女らは髪の色をコロコロ変える。この間まで黒髪だった女の子が金髪になって現れると、急に手が届かない別世界の人になったようで(最初からそうなんだけど)、その近寄りがたさにトキメいてしまう。

もしかしたら私はずっと、今いる場所とは違う世界に行きたったのかもしれない。その手段が金髪にすることだとしたら、あまりに安易で幼稚だけれど。

インナーカラーだけ金髪にしても、違う世界には行けなかった。でも謎の無敵感は手に入った。

今年こそ、この頭まるっと全部、金色にしたい。そうすれば、隣の島くらいは行けるかな。

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