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DigiDとマイナンバーカード

オランダの自治体のITについて調べようとしていたところ、DigiDというものについての記載を見つけました。
外国から来てオランダやドイツで働いている人たちのための英語メディアIAMEXPATによるものです。

オランダでは、納税、年金、福祉など、オンラインで行政サービスを受けたり、納税したりするのにDigiD(ディージーディー)という、デジタルの個人識別IDを使用するそうです。

日本でも住民登録がある外国籍のかたはマイナンバーを持っていますが、オランダでも、外国籍の人であっても、オンラインで納税するため、加えて、オンラインから行政サービスを受けるためにDigiDが必須だそうです。

DigiDは、マイナンバーの番号そのものではなく、マイナンバーカードの電子的な個人識別の機能の方に近いものと理解しています。
オランダでマイナンバー自体に近いのは、BSN(公共サービス番号)であり、その番号にリンクしたユーザIDとパスワードで個人を識別するのがDigiDです。


日本でのマイナンバーカードの浸透はまだこれからですが、オランダのDigiDでは2006年あたりから使われ始めオランダ語のWikipediaによると2003年リリースで2004年からこの名前)、政府機関、税務署、州・市町村、年金基金、警察、水道局、病院・薬局といった、何百もの組織で使われているそうです。

日本では2015年からマイナンバーカードの交付開始でした。
マイナンバーカードは、マイナンバー通知カードとともに送られてきた交付申請書を郵送すると、交付通知書が届きますので、届いた交付通知書と通知カード、そして本人確認書を持って交付場所に取りに行くスタイルです。郵送ではなくオンライン申請や証明写真機からの申請も可能で、3~4週間程度かかる郵便による申請と比べ、数日短くなるそうです。

一方、DigiDはオンラインで発行手続きが可能で、発行場所にとりに行く必要もありません。先ほどのIAMEXPATによると、以下のように取得できます。
(1)DigiDのサイトから住所、本人認証用に使うメール&携帯電話を入力
(2)多要素認証が必要な人は、それ用にSMSを登録
(3)ユーザIDとパスワードを登録
(4)メールかスマホにSMSのメッセージが届くので、記載されたコードを入力
(5)DigiDを有効化する最終の有効化コードが郵送されてくるのを待つ
 (5営業日以内に登録住所に送付される)
(6)有効化コードを入力すればDigiDが有効になる


DigiDではユーザIDとパスワードは煩雑ということで、スマホからPINコードという5ケタの数字を入力することで、認証を要求しているWebサイトにログインできるスマホアプリも用意されています。

サイトからログイン操作→表示されるQRコードをアプリから読み取り、
PINコード入力画面から入力→ログインという流れで動画による説明もあります


【雑感】
DigiDのサイト(英語)マイナンバーカード総合サイト(英語)とトップページにアクセスした際の画面ショットです。

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随分印象が違います。
ユーザーエクスペリエンス(UX)という言葉が浮かびました。

マイナンバーカードの方は、この絵の後に、説明や行政が知らせたいことが並んでいます。私のPCだとスクロール(PageDown)7回で最後まで読めます。
対して、DigiDの方は、ユーザがしたいこと、使っていて困ることへの情報提供のページへのリンク(DigiD登録、有効化、アプリダウンロード、FAQ、ユーザIDとパスワードの説明など)だけを集約しています。
スクロール2回で最後まで辿れます。

開始時期や利用範囲が違うので、単純な比較はできませんが、
前者は、マイナンバーカードがどういうものか、どう便利なのかを、何に気を付けたらよいのか丁寧に説明してあげよう意図なのでしょうか。
ちなみに申請方法のボタンをクリックすると、内閣府サイトにあるPDFが開き、日本語で、申請方法が2ページにわたって説明されています。

マイナンバーカードでオンライン申請と呼んでいるものは、交付申請書上の申請書ID(パソコンからの場合。上の画像のApply Onlineをクリックすると手続きのための日本語の利用規約画面が開く)もしくはQRコード(スマートフォンの場合)からアクセスするスタイルであり、起点が紙(オフライン)なのも大きな違いかと思います。

このような違いの背景にありそうなものとして思いうかんだのは次の3つです。行政と国民の関係性の違いもあるかもしれません。

(1)セキュリティの考え方の違い
セキュリティを守るために人間がどう介在すべきか、守るべきものは何か、といった考え方が違う

(2)Webデザイナーの役割・立場の違い
発注者の意向を反映して作るのか、デザインのプロのアイデアや提案を採用して任せるのか。(日本でも建築デザインの分野では後者なことはあります)

(3)SIerへの一括受託と内製DevOpsの違い
調達指示書に基づいて大規模案件としてウォーターフォールで開発する。
一方では、内製で、DevOpsへの適応を進めているシステムを、要望や状況に応じて部分ごとに反復改修・開発する。デザインやセキュリティを改良させる機会は後者が多い。

ユーザーエクスペリエンスについては、ある記事を思い出しました。
おもてなし幻想』という本によると「顧客に努力をさせない」こと、手間をかけさせないことが顧客満足度をもたらす、と2ページめに紹介されています。

セキュリティについては、重要なのは言うまでもありません。
IT分野がドックイヤーということはよく言われるように、ITのセキュリティ分野もドックイヤーで進化してきました。慎重を期する必要がありながらも、遅れた思想・技術ではそれ自体がリスクになりかねません。
DevOpsで日々改修する開発の仕方と、最初に決めたものを納期までに作るやり方では、後者のほうが古い考え方がベースにされがちです。年単位の大規模案件ならなおさらです。

マイナンバー関連システムの調達についての記事によると、2011~2012年に調査し、2014年くらいから本格的に開発を開始しています。
2015年交付開始ということは調査の4年後運用開始です。

技術進歩は加速していますので、もし現在の2020年に行った調査をもとにグランドデザインを描いて4年後に利用開始することを想像すると、開発している途中ですでに設計の根幹が時代遅れになる可能性も否めません。見た目のデザインや雰囲気の話だけではなく、どのように技術に追随していくかということも重要と痛感しています。

DigiDでは、パスポートや運転免許証を確認するためのものとして、NFCという近距離無線通信規格を取り入れた機能が使い始められています

【小ネタ】
[オランダの水道]
オランダの水道水は飲めるそうです。ただし硬水なのでミネラル分が多く、軟水に慣れた人はおいしくないと感じたり、おなかが緩くなったりする人もあるようです。

オランダでは、次のものが一般家庭での「水道代」にあたります。
・水の使用料
・国と州が水の管理するための税金
・市町村レベルで水を管理するための管理代
・水代に対する税金

アムステルダムの例だと、Waternetという水道会社が、周辺地域も含めて水サイクルを管理しています。同名のWaternetというサイトがあり、DigiDを使用して、支払いの管理ができます。また、引っ越し時の変更が出来たり、年間の使用量を確認できたりします。サービス内容に応じてDigiDが必要なものとそうでないものがあります。
また、水道のことで困った時の情報もこのサイトから提供しています。
この会社は、自治体の上下水道サービスと、水道会社を統合して2006年に設立されたそうです。

シンプルで美しいのでWaternetの画面ショットを載せます。

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Waternetは、Facebookなど、ソーシャルメディアを使った情報公開もしています。

[NFC]
かざして通信できる系の通信規格のことです。
Androidでは依然からサポートされていましたが、iPhoneはiOS 11からサポートしています。
日本でも決済を中心に、電子マネーや交通系ICカード、スマホなどで幅広く使われています。


今回はここまで
(2020/2/24)

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