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バイモーダルという言葉になじみはありますか?

グラフにしたときに山が2つできるような分布をバイモーダルというそうですが、ITの世界でバイモーダルというと、ガートナーが提唱した概念のことを思い浮かべる方も多いかもしれません。

前回、英語ページへのリンクだけだったので、ここではバイモーダルITについて書いてみます。

・ビジネスのスタイルを管理するプラクティスである
・予測可能かどうかを基準にMode1とMode2の2つのモードに分けたものである
・Mode1:予測可能、既知の知見を活用できる。確実が求められる。
・Mode2:予測不可能、不確実な領域が対象。速さが求められる。

というもので、Mode2では、確実に実現可能になるようにしっかり計画して着実に実行しようにも、そもそも確実な計画が立てられない領域なので、短いサイクルで(例えばこういう機能なら売れるんじゃないかといった)仮説を検証しつつ、小さなものから作っていくアプローチになる、ということのようです。

前回、DevOpsに続けてバイモーダルの例を出しましたが、Mode1はウォーターフォール、Mode2はアジャイルやDevOpsと親和性が高いという認識の元、書いています。(アジャイルしているから必ずMode2に対応できている、Mode2なら必ずアジャイルしかやっていないはずだ、のどちらの意味でも書いていません。)

アメリカではビジネスの競争力に直結するのでMode2一辺倒になってきているとのことですが、バイモーダルの考え方がアメリカで注目を集めたのは提唱されてから2年ほどたった2016年頃だそうで、当時を中心に様々な意見がWeb上で見られます。

日本語で検索するとバイモーダルITを目指そう、という記事は見かけますが、「バイモーダルITからの脱却が必要?--CIOが追求すべきはスピード」(2017.06)のような更に次のステップを見据えた記事は、あまりヒットしないように見えたので、玉石混交かもしれませんが、見つけたものを拙い翻訳と要約ながら少しご紹介します。

雑誌記事 :
バイモーダルITは通過点、俊敏なビジネスへの足掛かり (CIO Magazine 2017.01)
モード1は「低速で安全なモード」、モード2は「高速で危険なモード」とされている。バイモーダルITというアプローチであれば、大規模で伝統ある組織にあるような「安全なMode1を捨てることはできない」いう考えのもとであっても、既にある基盤を犠牲にすることなくMode2の領域での試行錯誤を可能にできる。 とはいえAmazonとGoogleのようなマーケットの勝者は安全と速さを両立している。 革新的であるために速さは必要であり、通過地点でしかないところで妥協してはいけない。

コミュニティサイトの記事:
・バイモーダルITを正しくやるか、それとも全くやらないか (2016.05 DZone) 
組織を統合せずに、単純に、モード1の組織とは別に、反対の指向を持つモード2の組織を作るというだけでは大きなメリットが得られず、緊張と対立によって負の結果が生じる。単純な問題ではないので、簡単かつ安価な対応策に対しては、慎重になった方がいい。組織の長期的な成功は、戦術的・短期的な対応からではなく、熱心で賢明なリーダーによって育まれる継続的な改善の文化によって成される。

個人?ブログ:
・バイモーダルは誤解のある概念。顧客の無知を認識しよう (2016.12 Arc-E-Tect
ITについてアーキテクチャの観点から対応するときに、時間も含めて考えなければならないという提起こそが、バイモーダルITの概念の存在価値である。組織をMode1とMode2に分けて併存できることと、顧客が自分が欲しいものを知っていることが前提とされているが、それは違う。


【小ネタ 】
・Googleは何でもアジャイルでやっているのか?
GoogleはいかにもMode2っぽいですが、彼らの『社内ネットワークの一部』である大陸間海底ケーブル(!)を「短いサイクルで仮説を検証しつつ」敷設したりはしていないように思っていますが、実際どうなのでしょうか。
また、Googleではプロジェクト管理の標準として何を使うか(スクラムを使うべし、といったようなこと)を定めていないという記載を読んだことがあると思うのですが、今見つかりません。

・DevOpsで早さと品質は両立する
有名どころのレポートとして「2014 State of DevOps Report」があります。ここから辿れたのが本家?なのかもしれないですが、リンク切れでした。こちらからは辿れるようです。 Mode1とMode2では価値観も異なってくるので、品質の指標として重視するもの自体が、同じにならなくても自然かと思っています。
(Mode1なら「確実」→トラブル発生件数/率
 Mode2なら「早い」→MTTR(障害から復旧するまでの時間)と
                                        TTM(市場投入までの時間)  といったこと)

・トヨタ自動車の影響
Toyota Wayの話が上記コミュニティの記事に出てきますが、リーンやスクラムの話を読んでいると、トヨタ自動車の思想やトヨタ生産方式のことがしばしば言及されています。スクラムなどの「ふりかえり」に関連したところだと、Toyota Kataというものがあるそうです。トヨタ自動車での指導法に武道の型に通じるものがあるところからの命名のようです(書籍の著者による命名)。私自身はまだやったことはなく、知見がある訳でもありませんが、レゴを使っての紹介記事の画像が醸している雰囲気をかなり気に入っています。Toyota Kata rocks!!

今回はここまで。
(2019/12/05)


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