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ねことじいちゃん(映画版)

※写真は近所のボス猫です。

この映画に人間ドラマを期待してはいけない。

猫でお馴染みの動物写真家・岩合光昭氏がメガホンを握った映画。
流石プロの写真家なだけあってカメラワークは素晴らしい。
とある猫島の日常が牧歌的に撮られた映画なのだ。あくまでも主役は猫たちだから島民に何が起こるかはついでの事。

大吉じいちゃん(立川志の輔)と飼い猫のタマさん。
タマさんは今は亡き大吉じいちゃんの妻が拾ってきた猫だ。
タマさんを演じているタレント猫の「ベーコン」はアメリカンショートヘアだがよく田舎にいる大物のボスかって位に貫禄があってブサかわいいキジトラなのでお好きな人にはたまらない。
しかも岩合監督が唸る程演技ができる。

この映画で起こる人間ドラマはせいぜい喫茶店「シャルトリュー」に美智子(柴崎コウ)がやってきてリニューアルされるのとタマさんが想いを寄せている三毛猫のみーちゃんを飼っているサチ(銀粉蝶)が急死してしまう程度だ。
大吉じいちゃんは妻が遺したイラスト付き料理メモで喫茶店のメニューを教えたり、逆に美智子さんから洋食を教わったりする。

島の人々もわりと面白い。
「俺ァ猫が嫌いなんだ」と主張しているのにやたら猫に好かれてしまう釣り好きの巌ちゃん(小林薫)
嫌いだという割には大吉じいちゃんが心臓の病気で入院した際にタマさんを預かったので根はいい人だ。

巌ちゃんの逆で猫と仲良くしたいのに嫌われてしまう郵便局のお兄さん(柄本佑)
昔からいつも口喧嘩ばかりしているが本当はお互いに支え合っているたみ子とトメちゃん(田奈楽子&小林トシエ)
島民からは若先生と呼ばれている行動が空回り気味の診療所で働く若き研修医(葉山奨之)と皆どこかにいそうな人々だけどもキャラが濃い。

体調を崩した事で大吉じいちゃんは東京に住んでいる息子から「俺も住んでるしもっと医療がしっかりした東京に引っ越した方がいい」と提言されたが「この島にいた方が俺もタマさんも気分がいい」と断る。
ラストでタマさんのアプローチを拒んでいたミーちゃんは打ち解け、郵便局のお兄さんは猫に少しだけ触らせてもらえるようになった。

大吉じいちゃんとタマさんが桜を見ながら一緒にゆっくりと散歩をしている所で映画が幕を閉じるのは美しい終わり方で素晴らしい。

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