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小津安二郎監督の遺作『秋刀魚の味』-ヴィム・ベンダースのルーツに触れて。


先日、映画『PERFECT DAYS』鑑賞後、
その余韻に浸る毎日を過ごしている。

そんな中、ヴィム・ベンダースが敬愛し
『PERFECT DAYS』にもそのエッセンスが
詰まっているという、小津安二郎監督の作品が
気になり『秋刀魚の味』を鑑賞した。

まず、予告編を観たのだが・・
3分ちょっとで触れられる独特の雰囲気と、
言葉を駆使した繊細で豊かな表現が
とても好きだった。

*** 以下ナレーション ***

母なき娘にかける 父の愛情と夢が
抱きかかえられるような感情の中に
繰り広げられゆくドラマ『秋刀魚の味』

嫁ぐ日近き娘ごころの微妙さと
限りなく深い父の愛情の推移を描いて

庶民生活の世界を背景に
人生の歓びと哀しみを
ユーモラスなタッチの中におりこみ

人々の善意を静かにみつめ
人生の流れを克明に綴り

映画界の至宝 小津安二郎監督が
全生命的意欲をもって贈る

松竹映画が最高のスケールによって
隙のない演技人を駆使し
良き脚本の協力者 野田高梧と
共同執筆になる
待望久しき人間愛のドラマ

格調高き小津芸術の感動の巨編
『秋刀魚の味』

——————

観終わった後のなんとも言えぬ
じんわり感が、たしかに『PERFECT DAYS』
の時と似ていた。
老いと孤独をテーマにしていて、
この点でも近しいものがあるのかもしれない。

私が嫁にいくとき、父はどんな思いだった
だろうな、などと自分自身に重ねてみたり、
"娘ごころの微妙さ”にも共感した。

人はみな結局は孤独。
でもまさに、抱きかかえられるような愛情を
もらいながら生きているんだなぁとしみじみ。
きっと観た人それぞれが、登場する誰かに
心を重ねて観ることができる作品。

『秋刀魚の味』も大きな出来事や展開はなく
家族の飾らぬありさまや、駆け引きのない
人間模様を感じることができる。

『PERFECT DAYS』で共同脚本と
プロデュースを手がけた高崎氏がベンダース
監督との制作裏話を語っていたネット記事を
思い出した。

「映画って、本当は物語を追うこと
 じゃないんだ」
というベンダース監督の言葉が
印象に残っている。

小津監督の『秋刀魚の味』を見て、
そんなベンダース監督の映像づくりの
ルーツにちょっぴり触れられた気がして
嬉しくなった。

作りこまれた物語ばかりが評価されるけれど、
2時間の映画では描き切れない
”見えない時間の連なり”を想像し、
あれこれ想いをめぐらせるのが楽しい。

時間や国を超えて、”よいもの”が見い出され、
受け継がれていく。
それを辿ってみる映画の楽しみ方も
おもしろいな、と思った。

自分の中の”映画”の概念を変えられた
作品になった。
そして、時を描くベンダースの映画が
より好きになった。



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