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虎に翼13話 絶妙な緩急!「なんだか早口言葉みたいね」

NHK朝ドラ「虎に翼」13話。
よねさんのこれまでのどうしようもない気持ちの刃で周りも自分も傷つけているような振る舞い、そして先週のラストで、上野のカフェに出入りしているよねの姿に、寅子の「恵まれている」ナレーションがかぶったときから、その重い過去は既定路線だったが、想像を超える重さだった。

このどうしようもないやりきれなさを、これから、よねは、寅子は、女子部の彼女たちは乗り越えていけるのか。
いってほしい。見守りたい。

今日の放送では、そんなよねの身の上話をしようとするマスターに、寅子がきっぱりいったセリフにも高い評価が集まっていた。

「よねさんの話を、よねさんがいないところでよねさんじゃない人から聞くのは、違うと思うんです」

作劇であるあるパターン、本人の事情を本人がいないところで知り、「そんな過去があったなんて知らなくてごめんなさい」から仲が深まるという流れを、このドラマはきっぱりと断ってみせた。

このドラマは、「スンっ」など、これまで視聴者がばくぜんと感じていた違和感を、言語化してくれる。
しかも、良いとか悪いとかの色のない表現をつかうところが、非常に巧みだ。

ここも、寅子は「違うと思う」と言っている。
「そういうことは良くない」と言っているわけではない。

しかも、私がとくにここがすばらしいシーンだと思う理由は、その後の梅子のセリフ
「ふふっ、なんだか早口言葉みたいね」
があるからだ。

寅子はけっして何かを誰かを批判しているわけではない。

でも、あの場で、マスターはたしかに話す気まんまんだったし、まわりもマスターが話しだしたら聞いていただろう。

だから、寅子の遮りに、緊張が走ったのは確かだ。

そこで梅子の、その緊張から皆を、視聴者を一気に「はがす」セリフが効く。

皆で、ふふっと笑う。緊張が解ける。

だから、崔さんも穏やかに「でも私もトラちゃんに賛成」とするっと言えたのではないだろうか。

緊張からの弛緩。
そういった場だからこそ、よねがみずから話し出すような流れを呼んだのではないかと思う。

緊迫した場をふっとゆるませ、皆をわれに返すチャーミングな一言。

梅子のような、そんな言葉がするっと出る人柄と、それが許される信頼関係があってこその場面。
現実にもこんな場面が増えれば、とってもすてきだと思う。


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