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労働力を確保、配偶者の社会保険加入が大きく変わりそう

最近、人手不足で困っているという会社の話をよくききます。

実際、帝国データバンク調べの倒産件数では、今年の4月は人手不足倒産が過去最多という記事が出ていました。

https://www.tdb.co.jp/tosan/syukei/pdf/2304g.pdf

この労働力不足を解消するひとつの切り口として、配偶者の年収の壁問題があります。

いまの制度では、配偶者の年収が一定以下であれば、税金や社会保険で優遇がうけられることになっています。

税金の優遇は、その年の年収が201万6000円未満であればうけられます。
最大の38万円分を受けようと思うと、150万円以下です。

社会保険の優遇は、配偶者のこれからの年収予測が130万円未満であれば、健康保険・厚生年金等の社会保険料を納めなくてよいというものがあります(会社員・公務員の配偶者のみ、個人事業主の配偶者にはこの優遇はありません)。

ただし、130万円を超えなくても、配偶者が勤めている会社で、配偶者自身が健康保険・厚生年金に入ることになった場合は、その優遇から外れます。

この入ることになる基準は、原則106万円です。

まとめると、この表のようになります。

厚生労働省 社会保障審議会
年金部会資料2023/9/21

103万円、106万円、130万円、150万円と、いくつもの別れめがあることがわかります。

その家庭の事情により、どれが壁になるかは違うわけですが、103万円の壁がいちばん高く、130万円にも壁があることがわかります。

「年収の壁」問題の視点
「103万円の壁」過剰に意識

この壁を越えないよう働こうと思えば、収入の調整が必要になります。

最低賃金も上がっていて、全体的に賃上げ傾向にあることを考えると、壁を超えない働きかたは、おのずと、労働時間を減少させます。

1000円の時給で1,030時間未満であれば103万円の壁は超えませんが、1100円の時給だと937時間を超えると103万円を超えてしまいます。

100円の時給アップで、93時間ほど働ける時間が減ってしまうわけです。
繁忙期を考えず年間均等に働いているとすると、12月はほとんど働けないことになります。

労働力不足のなか、それはきつい。

そこで、政府は、このうち130万円と106万円の壁について、手を打つことにしたようです。

106万円の壁は、現在101人以上の会社に勤める人、来年10月からは51人以上の会社に勤める人が、一定の時間以上働いた場合に社会保険に入ることになる壁。

社会保険に加入することになると、毎月給与から社会保険料を天引きされ収入が下がることになります。
それを補填するために会社が手当(これは社会保険料の対象外)を出す場合、政府がその手当を援助する。

これが、まずは106万円の壁を低くするためのための政府の策です。

次に130万円の壁。

130万円を超えると、配偶者は自分で社会保険に加入しなければならなくなります。

101人以上の会社である程度の時間働けば、健康保険・厚生年金に入れますが、そうでなければ自分で国民健康保険・国民年金に入らねばならないわけです。

国民健康保険・国民年金に自分で入ったとしても、130万円を超えずに扶養に入っていたときと、もらえる年金やつかえる健康保険制度は原則変わりません。

つまり、130万円の壁を超えることにメリットはないわけです。

この130万円というのは、原則、過去の年収ではなく、これからの年収についての話です。

つまり、仕事の繁忙などで一時期超えてしまうことがあっても、ある程度は多めに見てもらえることもあります。

この一時期というのを、2年はOKにしましょう、というのが、130万円の壁に対する政府の策です。

そうして収入の壁をまず低くすることで、実際にその壁を超えてみる人を増やし、超えてもなんとかなる、むしろ、超えてみてよかった、という人を増やしていくのが、政府の目的なのではと思います。

運用は大変ではありますが、変化に対して不安に思う人が多いという特性をもつ日本の社会にたいして、試してみてもいいかな、と思えるきっかけを与える良い策なのではないでしょうか。

開始はこの10月からを見込むということで、急ピッチにはなりますが、これからの動きを確認していきましょう。

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