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ユーザインサイト発見のための5ステップ

¡Hola! マイコです。

会社ではプロダクトマネージャーをしつつ、社内DX推進や業務効率化といった社内コンサルタントのような業務もしています。

ユーザ(=支援先部門のメンバー)は、困りごとを自覚していることもありますが、困っていることが当たり前になってしまっていることも少なくありません。
後者の場合、ヒアリングをしても本質的な困りごとを突き止めることは困難です。

そこで私は、困りごとやインサイトを発見するために次の5つのステップを踏んでいます。この方法論はデザインシンキングの「共感」がベースになっていて(ステップ1と2)、私なりに少しアレンジを加えたものです(ステップ3以降)。アレンジ部分は、後半にお話しするラテンアメリカでの失敗と反省をアクションとして落とし込んだものです。

今のところ私の中では高い精度と再現性のある方法論です。少し時間を必要としますが、コンサルティングのように相手の懐に入り込んで行う数週間から数ヶ月のプロジェクトでは特に効果的です。

ユーザインサイト発見のための5ステップ

1️⃣実際に体験する/観察する
相手のやっていることを観察し、相手以上に知る。一緒に作業やるのが手っ取り早い。信頼関係構築にも効果抜群。
難しい場合は観察させてもらう。エスノグラフィのように観察するだけでなく発話法を取り入れてもOK。ちなみに私は観察が好き。
チームで仕事をしていたり、可視化したいときは、共感マップで文字に起こしておく。

2️⃣理解する
相手のやっていることと、やりたいことと、思っていること、置かれている状況を組み合わせて整理する。
具体的には、共感マップ上のパーツを組み合わせて、「この人は、今これをこんな風にやっている。でも本当にやりたいことはこう。だけどこういう状況・制限があるからこうなる。だからこんな気持ちでいる」という文を作る。ここである程度、自分の中で仮説は出てくる。

3️⃣愚痴・不満を傾聴する
仮説はできつつあるがグッと我慢。この段階では、自分から仮説をぶつけたりヒアリングはしない。信頼関係ができあがってくると、ふとした時に愚痴や不満がこぼれてくる。これらに丁寧に耳を傾けると、相手の困りごとの「始まりの村」への切符が手に入る。

4️⃣相手が自覚している問題を解決する
相手が愚痴っていたことや小さな困りごとを解決する。自分の仮説ではなく、相手が自覚している困りごとであることがポイント。信頼関係が一層強化されるし、「この人に話したら解決してくれるのではないか」と問題解決の期待感を持って接してくれるようになる。
また、この解決に対する反応を深掘りすることで、問題の本質に近づくことができる。

5️⃣仮説をぶつける
仮説やアイデアをぶつけてみたり、ヒアリングをしてみたり、プロトタイプを見せてみたりする。「あーそれ実はめっちゃ困ってるんだよね」とか「そうそう、これほしかったの!」と言ってもらえたら、よし、いいところまできた。あとは言語化したり可視化して、問題を形作る。
ここでようやく、デザイン思考でいう「定義」に入る準備が整う。

ラテンアメリカでの苦い経験

この方法論のもとになったのは、青年海外協力隊での失敗経験です。もう10年も前になります。
私は赴任先のホンジュラスというラテンアメリカの国で零細企業にマーケティングコンサルティングをしていました。その一環として近くの町のパン屋を支援していました。

意気揚々と観察し、ヒアリングや分析をもとに課題を抽出し、あれこれと現実的なソリューションを提案してみました。セオリー通りにデザイン思考を実践しているつもりです。
しかし、約束はすっぽかされるし、嘘はつかれるし、提案は何も実行してもらえない。笑顔ですべてスルー。

なんて非道徳的な人間なのだろうと、悲しさと腹立たしさとが入り混じった感情を抱いていました。

雨にも関わらず、約束の日に訪問したら「今日はいない」と門前で言われたこともありました。

ある日、「パン作り要員として協力したら拒否はされないだろう」と思い立ち、パンを一緒に作るだけの時間を過ごすことにしました。
ひたすら型を抜き、成形し続けます。
ほぼ無言でただただ手を動かし続けました。

するとパン屋さんに「これうまくできないのよね」と愚痴をこぼされました。
「それは、こうするとうまくできるんじゃないかな」と返すと、そのアイデアは即採用されました。

支援先のパン作りの様子。ゴマをふりかけています

これまでの論理的で「イケてる」提案はことごとく無視されていたのに、パン作りの小さなお悩み解決策は即採用。これは衝撃的でした。

その後も少しずつ愚痴られたり相談されたりするので、返していくと喜んで実行してくれました。

こんなやり取りを繰り返していく中で、ようやく私は自分の問題に気づきました。
すなわち、パン屋さんが何をしているかも理解していなかったし、困り事やニーズも理解していなかった。そして何より信頼されていませんでした。

相手の目線に立って考えれば明らかなのですが、つたないスペイン語しか話せない小娘が突如やってきて、自分たちのやっていることに対してあれこれと言ってきたところで、聞き入れる価値があるとは思えません。

そして最終的には、パン屋としては事業が成功したら援助がもらえなくなるので成功は望んでいなかったという結論に到達しました。

おっと。この記事は開発援助に対する云々ではないのでここで止めておきますが、私は相手の望んでいないことを一方的に押し付け続けてたんだなぁ、と納得したのでした。

ホンジュラスと日本は物理的にも文化的にも距離はありますが、人間の本質は同じ。
完全無視という分かりやすい反応をしてもらえたことに、今では感謝です。

ラテンアメリカの青い空を思い出しながら、また会社の同僚から向けにプロトタイプを作ってみたりしています。

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