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インドへ

何かを考えている。生きること、自由になること、私が好運であること、インドにいること。スズキの灰色のバンからま新しいものを見るように私を見る、正座した青年。彼を見つめる私と私を見つめ続ける彼。違う私たちとまるで同じなわたしたち。

息をしている。排気ガスの混ざった湿っぽい夏の風。まだ夏本番でもないのにジリジリと照りつける日差し。赤い車がやけに目にとまる、そんな昼頃。

見つめている。蛍光色の黄色い看板。読めはしない蛇みたいな文字列。同じようにこんがらかっている私の脳みそとシナプスたち。解きほぐそうとすればするほど絡まり合って元いた場所にすら戻れない。

感じている。バイクの足場に座る中型犬。彼の気持ち。私はなぜその犬を雄だと思ったのだろう。

震えている。静かに確かに流れていく時間と経験。あからさまに外国人の私にチップを強要するトゥクトゥクドライバー。レストランで伝票を確認する私に冷や汗をかく店員。小道をあるく野良、大型犬。そのすぐ後ろに響くビーサンの音。香港の格差を思い出させる贅沢なレストランバー。果物をそのままミキサーにかけて作られる新鮮なジュース。一本売りのタバコ、18ルピー。小学校の電流実験のように流れては止まる電流。カフェの電気もついては消え、またパッとついては消えていく。崩れかけのバノフィーパイを見つめながら考える。当たり前は造られたものだ。

車のヘッドライトしかない道路、空間。

思い出している。路端に咲くツツジの花。小学校の帰り道、に見たツツジの花と同じ色をしている。ツツジの頭をもぎ取って、暴力的に吸っていた。美味しいねと笑う友達の顔も印象的だ。

私達はよく過去を振り返る。美しかった自分を思い出す。純粋だった頃にふける。あの頃の美しさに、清さに、現在、どれだけの価値があろうか。きっと毛先ほどもないだろう。

インドへ。私へ。未来を見据えるのは怖いですか?あなたは現在を生きすぎているようで、私はたまに時空を歪めたくなります。過去に耽ったり未来に押し潰されたくなります。自分をそこに閉じ込めたいのでしょうか。多面的なあなたへ。少しだけ生きるのが怖い私へ。


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