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(19) 父編。縁を切ってから赦せてハグができるまで。


縁を切った日。

前回の記事にあるように

お母さんからはあまり愛情を感じてこれなかったけど、
お父さんはまゆのことが大好きなのが伝わっていた。小さなころからわかっていた。

だけどわたしはそんなお父さんと縁を切ったことがある。

わたしが2歳の時に親は離婚したけど、その後もお父さんとは幼稚園から高校生まで定期的に会ってご飯に行ったりしていた。
いつもお父さんは、まゆが小さかった頃の話を嬉しそうにしてくれた。それがまゆも嬉しかった。

だけど、お父さんは、必ずと言っていいほど会う度に、お母さんの悪口を話していた。

まゆはお母さんもお父さんも好きだから、お父さんの話すお母さんの悪口を聞かされる度になんだか複雑な気持ちになっていた。
でもお父さんは決してまゆのことを悪くいうことはなかった。

縁を切るその日までは。

大学休学中のとある日、まゆは運転免許証の更新で新潟に来ていた。でも少しの滞在だったし予定もいろいろでお父さんに会う時間は今回は取れなさそうだなって思って、特に新潟に帰ってきていることを連絡しなかった。


そうしたらお父さんから連絡があり、新潟にいるのに連絡しないのはどうかと思うという内容と、さすがあの公衆便所みたいな女の娘だな、的な内容が送られてきて。まゆの中の何かがぷちんと切れた。


もともとお兄ちゃんが生まれたから両親は結婚したのに、「俺の子じゃない」とお父さんは言い出して暴力があったりで離婚に至ってて、お父さんはお母さんのことをよく尻軽女だ、みたいにまゆの前で話していて。

でもその論調に初めてまゆを巻き込んできた。
今までお父さんがまゆを悪くいうことなど一度もなかったのに、
生まれて初めてお母さんと同じものの言われ方をした。

腹わたが煮え繰り返るぐらい、腹が立った。悲しかった。憎くなった。泣いた。

どうしてこんな人が自分の父親なんだろうと思った。血がつながっているという事実に吐き気がした。
だから、縁を切ろうって思った。

最後、「縁を切ります」と連絡をしてすべての連絡手段を絶った。番号も着信拒否した。


地球一周の船でのNVCとの出会いのおかげで赦せた思い


父親とはそんな状態でわたしは地球一周の船に乗っていた。
そしたら、そこにソーヤ海さんという共生革命家という肩書のもと
パーマカルチャーやマインドフルネス、共感的コミュニケーションを伝え、活動している人と出会った。


共感的コミュニケーションはNVC(Non Violence Communication)というもので
非暴力的コミュニケーションとも呼ばれている。

人間のどんな言葉や感情にも
その裏には必ず「ニーズ(その人が本当に欲しいもの)」があって
そのニーズを伝えるということ、汲み取るということ、そのニーズで繋がろうというコミュニケーション方法だ。


そんなコミュニケーションを知った時、わたしは初めてお父さんの「立場に立って考えること」ができた。

相手の立場になるなんて
当たり前のこと。
そんな当たり前のことが恋人や家族など
近い存在であればあるほどにできなくなるのだ。

ひどい、ありえない、悲しい、腹が立つ、でしかなかったわたしが初めて、「どうしてお父さんはあんなことを言ったのだろう?」と思った。

共感的コミュニケーションのエッセンスに助けられ、わかった。

お父さんは「寂しかった」んだって。
まゆが大好きで会いたいといつも思っていたからこそ、連絡がなかったことが「悲しかった」のだと。
お母さんの悪口を言う時もまゆにひどいことを言った時も、それらはいつだってお父さんにとっての「嘆き」だったのだと。「SOS」だったのだと。


どうしてカッとなったら人として言っちゃいけないことを言えちゃうのだろう、って思っていたけど、きっと誰よりも、孤独で、寂しくて、悲しいのはお父さんなんだって思った。そう思えたら、どんなお父さんも赦せた。

初めてお父さんに寄り添えた。


そして再会



だから地球一周の船を降りてすぐにお父さんに手紙を書いた。
A4用紙3枚くらいにもおよぶ文量で。


あの時初めてお父さんにお母さんの悪口と同じようなことを言われて悲しかったということ
でも、船の中での出会いがきっかけでお父さんの気持ちを想像することができたこと
そんなお父さんに寄り添いたいと思えていること、いろいろあっても、あなたが父親でいてくれてありがとうって思っていることを伝えた。


手紙を送ってから初めて顔を合わせた時、
「手紙届いた?読んだ?」
と聞いたら
「読んだよ。あの時はごめんね」って真っ直ぐに素直に謝ってくれた。

お父さんのあんなに素直なエネルギーは初めて見た。
本当に悪かったなと思っているのが伝わってきた。

そうしてわたしたちは無事に和解ができた。
その和解の時の帰り際に、恥ずかしかったけど
勇気を出して「ハグしたい」とお父さんに言った。

だけどその時はお父さんが照れて?気恥ずかしくなったようで断られてしまった。
苦し紛れに今度一緒に温泉旅行でも行こうと誘われ、バイバイした。


それからまた数年。なんとまゆのお誕生日の日にとんでもなく久しぶりに
お父さんから「お誕生日おめでとう」と連絡が来た。しかもまゆの公式LINEに。
はてなブログ読んでたことは知ってたけど、まさか公式LINEにお父さんから連絡が来るとは思ってなくて、まゆはすごく嬉しかった。

お父さんのメッセージからはセッション業も歌舞伎町スナックもまゆの仕事、人生の全てを
そのままに理解し、応援してくれているのが伝わった。


ついに初めてのハグ



その誕生日の日の連絡がきっかけで数年ぶりに新潟での再会を果たした。
そしてついに私たちは一緒にお酒を飲み交わし、乾杯を果たした!


たくさんいろんな話をした。
お父さんから見た離婚の理由、結婚する時のお母さんの話、まゆの過去のブログの「生まれてきてよかったのかな」という言葉に悲しくなったんだっていう話、いろんな思いをお父さんはまゆに話してくれた。うれしかった。


いい感じのおばんざいやさんでご飯食べて飲んでいたら、クラブで働くお父さんのお友達が合流してきて、今からお店で働くというから
じゃあ一緒に行こうってなってお父さんとまゆで、お父さんの行きつけ?のクラブに飲みに行った。


綺麗な女の人たちに囲われ、お酒を飲むわたしたち親子。
こういう場に娘を連れてくる父親ってそうそういないし
こういう場に誘われたとて一緒に来ちゃう娘もそうそういないだろな
と思い、なんだかまゆらしい人生だなって、さすがまゆの父親だなって思えて笑った。


帰り際、キャストの女性たちが見送ってくれてる中で「最後ハグしよう」とまゆが言い、今回はお父さんはすんなりとハグしてくれた。


たぶん、保育園とかの無邪気に「パパだいすき!」の時期を抜かしたら物心ついてから初めてのハグだったと思う。


いろんなことがあった。
縁を切ったこともあった。
だけど今、こうやって、ハグができていること、本当によかったなあって思った。


自分と、親と、向き合ってきてよかった。
素直になる勇気を出してよかった。
そう、こころから思った。

私たち親子がハグをするのを見たキャストの女性陣に「ええ〜いいなあ!素敵〜!」と言われながら、わたしたちは笑顔でバイバイをした。

その親の元に生まれた意味、という名の人生の旨みを

あれから今でもお父さんからは定期的に何気ない会話や応援のメッセージが届いたりしている。
高校生の時、初めての海外がオーストラリアだったんだけどその海外研修費の40万円を払ってくれたのはお父さんだった。

まゆはあのオーストラリアでの経験が全ての始まりとなった。

海外がだいすきになったのも
異文化がだいすきになったのも
国際協力に興味を持つようになったのも
旅が好きになったのも
始まりはあのオーストラリアがかけがえのない時間だったからだ。

そんな体験をさせてくれたお父さんに心から感謝しているし
今でも誕生日の日や、たまにまゆにお小遣いを送ってくれる。

ずっとお父さんはまゆを愛してくれている。


縁を切った時だって、だいすきな気持ちがあるが故にそうなってしまっただけで
今までもこれからも、お父さんの愛はそこに在り続けている。

そんな確信が今のまゆにはある。

お母さんとの関係も
お父さんとの関係も
会う度に過去最高の愛を更新している。


それはまゆが
自分に正直で在り続ける限り
自分に素直で在り続ける限り
無限に更新し続ける「最高」なのだと思う。



親と腹割って話すこと
本当に思っていること
実は感じ続けてきたこと
そういうことを面とむかって話すことは
面倒くさがりがちだけど
気恥ずかしいけど
後回しにしがちだけど
最も自分の人生を軽やかにしてくれる行為でもある。


まゆのだいすきな坂爪圭吾さんという人が

「親子関係がクリアされたら、人生はボーナスタイムに入る」

という言葉を言っていたのだけどまさに今、それを感じている。


親に対して言えなかったこと
感じてたけど、ないことにしてきた気持ちとかは
まず自分と向き合わないとわからないし
自分が恋愛などの人と関わる時のパターンが親との関係から形成されていることなどは
ちょっと勉強しなきゃわからないかもだけど
そこの繋がりがわかると自分に起きるいろんなことがするするする〜っと紐解けたりするのだ。

意味があって、そこに生まれてきた。
意味があって、その二人が自分の両親なのだ。


その意味という名の人生の旨みを存分に味わい
わたしはただただ、親である二人に感謝を伝えていたい。



まゆをこの地球に生んでくれてありがとう
まゆの親になってくれてありがとう

愛しています。



まゆと、まゆのお母さんとお父さん
小学校の入学式のときの写真


とってもよろこびます♡