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シャドウボクシングの男

久しぶりにためにならないお話。英語の話でもありません。
昔住んでいたところの目の前が空き地になっていて、空き地の隣がまたアパートのような、どちらにしても一つのアパートには4世帯(個人で住んでもいいし、家族で住んでもいい)しか家がないので二階建てのお家のような形の賃貸で、わたしはその2階に住んでいました。
(私は人生で二階以上のうちに住んだことが一回もない)

その、空き地に夕方くらいにシャドウボクシングをするおじさんがいて、たぶん空き地の隣のうちに住んでいる人なんだと思うけれど、時々洗濯物を干しているとその男は空き地に現れます。シャドウボクシングの男と名付けてそのボクシングをいつも眺めていました。歳の頃は60は過ぎているように見えていたけど、ジャージ姿で1時間以上はボクシングしている感じでした。結構がっしりとしていた体つきだったので元格闘家かもしれないんですが本当のところはよくわかりません。
しゅっしゅっという感じで、まっすぐに拳を突き出し、シャドウボクシングをします。キックなどはしないし、他のトレーニングをしている感じはありません。ひたすらパンチの練習という感じでした。水色のジャージを着て、規則的にシャドウパンチを繰り出します。特に声を出す様子はありません。
ただ、前だけを見つめてパンチをします。その一心不乱な様子は少し恐いような不気味なような、ちょっとコミカルなような感じもしました。


夕方になると時々そのシャドウボクシングのおじさんを思い出すことがあります。今何しているのかなど知る由もないけれど、ちょっとシュールで面白かったなと思うんです。

その後の私は悩みが深くなり、窓の外を眺めることもあまりなくなり、さらにその後はヨガに夢中になりシャドウボクシングの男のことを考えることは無くなりました。だけどまた時は過ぎてなんだかふと、あのおじさんはまだ生きているんだろうか?なんであきちでシャドウボクシングをしていたんだろうか、もしかして元ボクサーだったんだろうか?名前くらい聞いておけば良かったかな?などと思い出してしまって、書いておきたくなりました。

どうでもいいのですがシャドウボクシングって肩こりに良いそうです。
運動不足の時、なにかしてみるのもいいかもしれないですよね。ボクササイズ。

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