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私の友人 ーアレクサンダー ウズラック その①

音楽の知識も豊富だし、大学在学中でもすでに素晴らしいジャズピアニストであった彼。数少ない私より年上の同級生でした。

セルビアからモントリオールへ奥様と一緒に移民。今は2児の父でもある彼。
背も高くって、落ち着いていて。笑顔もチャーミング。そしてとっても優しい。

大学入学当初に手続きやら履修科目の登録やら、持ち前の大雑把な性格が故に出遅れていた私が最初に声をかけて頼りにした相手でした。以後、いまだに心の頼りにさせてもらっています。

このアレクサンダー、夏休みになるとクルーズシップミュージシャンとして出稼ぎに行きながら学生をしていました。2児の父でもある彼は、呑気に夏休みをのんびり過ごすわけにはいかないのです。家族を養わなくっちゃ!
クルーズシップミュージシャンは、4ヶ月、もしくは半年、長い人はもっと長いのかもしれませんが、契約の期間中お客様とともにクルーズ船にのって各地を回りながら、船内でのショーやイベント、バーなどで楽器を演奏する仕事です。一日数時間人前で演奏する以外はとりわけ課せられた仕事もなく、そしてお給料もそれなり。とりわけ駆け出しの演奏家やお金の無い音楽家や音楽学生にとって理想のような仕事のようにも見えます。

ある種の演奏旅行のような(夢の?)仕事から今年も帰ってきた彼はとある音楽に取り憑かれていました。皆様もご存知かと思います。一世を封した素晴らしいミュージシャン4人組。
ABBA。
幅広い世代に人気のあるABBAの曲目は、こういった仕事にはもってこいなのです。

例外もなく、もちろん船の上のアレクサンダーもABBAの演奏を求められたそうで。
真面目な彼は丁寧に耳コピで採譜までして、ABBAを連日海の上で演奏していたそうです。
そんな彼の頭にはS.O.Sの最初のピアノのフレーズがこびりついてしまったのです。
確かに、、、想像して見てください。あのキャッチーなフレーズを毎日毎日演奏するということを。いくらABBAが大好きだったとしても、さすがに常にあのフレーズが頭でなっているというのはちょっと。。。かわいそうなアレクサンダー。。。


無事に4ヶ月の仕事を終えて学業に戻ってきた彼は早速私たちに、
No more ABBA …. もうABBAは勘弁だと言いながら、自分が採譜した譜面をシェアしてくれたのでした。

連日、あのフレーズを弾ききったアレクサンダー、よくやった!!!!
父は強し!彼の忍耐力に乾杯!

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