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ブラジルの、いつも笑ってたおばちゃん。耳は聞こえず、体は男性だけど…

私は大学を休学して、しばらくブラジルに滞在し、ボランティアをしていた。その時出会った人たちの中に、何人か忘れられない人がいる。

その1人が、教会の小さな手芸のクラスで出会った、いつも笑ってたおばちゃんだ。(実は昔は、男性だったとは後で聞いた。)そのクラスは、あるボランティアの女性がやっていて、私は時々、お手伝いをさせてもらっていたのだ。

そのおばちゃんと初めて出会ったときは、正直、びっくりした。カラフルなスカーフにカラフルな服。指には、不思議な形の大きな指輪をほぼ全ての指にはめていて、爪は、黒いペンらしきもので塗ってある。頬には、全体に緑色のラメがまぶしてあってきらきら。なんとなく、がっしりした骨格。
そして耳は聞こえないらしい。

そんなおばちゃんに、どう接していいか初めは戸惑ったのだが、心配無用でむしろ、癒しになる人だったのである。

そのクラスに来ている人たちは、ほとんど皆、自分の家がなく、近くのシェルターで暮らしていた。そして皆、何かしらの問題を抱えていた。ドラッグの更生施設から出てきたばかりだったり、子どもを取り上げられてしまい、悲しみでずっとぼーっとしていたり、ドラッグのせいなのか、簡単な作業ができなかったり、すぐ諦めてしまったり…。

そのおばちゃん自身もシェルターで暮らしており、大きな部屋をみんなで一緒に使うため、トランスジェンダーの問題は度々起きると聞いた。耳が不自由で大変なこともあるだろう。

でも、彼女はいつも明るいのである。
うまくコミュニケーションが取れないこともあるけれど、特に気にする様子もなく、一緒に手芸をしたり、話してくれたり。「昨日、シェルターの同じ部屋に住んでいる人達が喧嘩して、椅子で殴り合いしてたよ」と教えてくれたこともある。(ちなみに、おばちゃんは笑っていたが、笑いごとでは済まず、一人はそこを出て行ってしまったらしい。)
かわいい物が好きで、色々見せると笑ってくれるのが嬉しかった。
私も、ポルトガル語があまり話せず、他の人とうまくコミュニケーションが取れないことも多かったから、なんとなく親近感があったし、おばちゃんみたいに、細かいことは気にせず、話しかけて見ればいいじゃん と思えた。
また、色々なことが考えていたように進んでおらず、悩んでいた時期でもあり、いつも明るくて、笑ってるおばちゃんはすごいなあ、そんな風になりたいなあ と思っていた。


思い出すと、なんだか、ほっこりする人、それがあのおばちゃん。
一緒に作った、キッチンに飾るニワトリがお気に入りで、「ちっちゃいニワトリ!」って言ってずっと笑ってたな。

おばちゃん、今日も元気で、笑ってるといいな。

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