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料理で生きる人がコロナ後に握る武器とは?〜スキすぎてごめんなさい vol.2〜

4月21日に開催したclubhouseの内容を、少し遅れましたが記事にしますね。

①代々木上原のガストロノミーレストラン「sio」を率いる鳥羽周作シェフ
②「sio」の仕掛け人兼編集者を務める元料理人のオリタタクヤさん
③国内外合わせて8500人の生徒数を誇るオンライン料理教室「ラトリエ・ド・SHIORI」を営む料理家のSHIORIさん
④食とライフスタイルに関わるディレクターとして活動する私、山口繭子

の4人による月に1度のclubhouse「#スキすぎてごめんなさい」といいます。

テーマはもちろん食、食、食!

食への愛を熱量高めに語り合い、時にはゲストを交え、たびたび脱線しつつも初回(0回)から数えて3回目となりました。

今回のテーマは「目盛り」。いわゆるメジャーですね。が、これ、何を測る物差しかというと、ウエストサイズやトンカツの大きさではないんです。

料理で生きる者としての度量を測る目盛り

が、どの程度の細かさで稼働しているか。それを意識することの大切さについて、4人が自らの体験や思いを語り合いました。

例えば、居酒屋店で働いているとする。
唐揚げのオーダーが入り、マニュアル通りにきちんと美味しいものを作ってお客様に出すんですが
目盛り10という大きな尺で働いている人は、頼まれた通りに皿に唐揚げを盛ってサーブします。
ですが、これが目盛り5の人なら、例えばお手拭きを一緒に付けてサーブするとか、目盛り1ともなると食べた後の骨を入れる容器も準備するとか、とにかく、いろんなことができるわけです。同じ唐揚げを出すだけでも。

フリーのディレクターとして働いている私にとっての「目盛り」は何だろうと考えてみたのですが、ありますね、いろいろ。
例えばメールのやり取り一つとっても、自分なりに細かな自己ルールを作っていることに気づきました。

とにかく早く返信するとか。

すぐに返せなくても「メール拝受。●時までにお返事します」と返信し、相手に「あれはどうなっただろう?」と思わせたら負けと勝手に思い込んでいます。特に才能のない私にも、頑張ればできる唯一の営業努力こそがスピードだと思うからです。
他にも、
過去に話題に上った添付書類に言及するときは「お送りしたものと重複しますが」と断った上で再度添付するとか、
メールタイトルには、急ぎかどうかや案件名を入れるとか、
メールはとにかく短い文章でまとめるとか、
こういう部分については、割と私の中にある目盛りは細かいんじゃないかなと自負しています。

しかし、この目盛り。細かさだけを自負してても、この後はもたないかもしれません。アフターコロナの時代には、細かな目盛りを持って生きるのと同様、独自の目盛りを見出すことも必須となるんじゃないかなと感じます。

少し違う角度から語るなら、

市井(しせい)の人々が持つメジャーとは異なるメジャーをGETした人から、アフターコロナの世界が始まるのではないか
というような。

鳥羽シェフは言います。

相手がいないと成立しないのが俺たちの仕事。
料理の向こう側、つまり食べ手の存在こそが生きる理由であり使命感なんだ

と。

私はこの「料理の向こう側」や「作り手が立つ厨房の世界」が、今後はますます広がるんじゃないかなと思っています。

ちょっと話がそれるのですが、先日、料理界では大ニュースが発表されました。
ミシュラン三ツ星や「World's 50 Best Restaurants」1位の栄誉に輝いたニューヨークの名店「イレブンマディソンパーク」が、ようやくコロナ禍による閉店期間を経て6月に再開するにあたり、メニューをほぼ全て菜食にするというのです。

人気も実力も絶好調のファインダイニングが、肉や魚を使わないメニューに全面差し替えするのだと。信じられません。

が、シェフのダニエル・ハムもまた、この1年半ほどの苦難の時を経て新たな「目盛り」で自らの料理人キャリアを測り直したのだろうと予想します。
目の前にいるお客様の幸せを願いつつ、未来の地球の幸せとか自身が存在する理由とか、そういうものまでをオリジナルの物差しで測って、新たな飲食業のあり方を提案するダニエルシェフ。
私は何も、肉や魚を使わないことが未来の飲食業界が目指す姿だと思っているわけではありません。が、連日目にする日本のメディア報道では、飲食業の人たちの扱われ方はほぼ同じです。とってもかわいそうな被害者か、もしくはコロナ蔓延の温床を生み出す悪者か。

そこじゃない。コロナ後の世界で使える目盛りはそこにはたぶん、ありません

メディアも、そして飲食に関わる人たちも、自らの生活が今やカツカツになっている状況は非常に辛いのですが、「再び世界は元に戻る」と思っていては、次世代を生きるための新しい目盛りは手に入らないのではないでしょうか。

「見方を変えること」と「目盛りが指す値を見つめ直す」ことは同義です。

同じく、「#スキすぎてごめんなさい」に参加しているいる料理家のSHIORIさんは、コロナ禍に入って早々に代官山の料理教室をクローズしました。リアルな場所を手放し、代わりにInstagram経由のオンライン料理教室に切り替えたことで、結果、リアルではあり得なかった多くの生徒が参加できる料理教室が実現したといいます。
8000人を超える料理愛好者が、同じタイミングで視聴するインスタライブの料理レッスンとか(しかもその動画はその後フィードにも保存されるので、復習もラク)、なかなか壮観。テレビの方が影響力はあるのかもしれませんが、なんといっても感じられる熱量が違うでしょう。

私の目盛りは、これから何を測るのか

その細かさは誰のためにあるのか、その存在はコロナ後の世界に役立つものなのか。
ワクチン接種がようやくスタートする今の日本を生きる身として、再度自分の「目盛り」の検分に入る時が来ているのだと思います。

>鳥羽シェフのnoteはこちら
>SHIORIさんのnoteはこちら
>オリタタクヤさんのnoteは こちら

次回の「#スキすぎてごめんなさい」は6月7日(月曜)20時からclubhouseでお送りします。よかったら遊びに来てくださいね。

#スキすぎてごめんなさい  #COMEMO #食の仕事


フードトレンドのエディター・ディレクター。 「美味しいもの」の裏や周りにくっついているストーリーや“事情”を読み解き、お伝えしたいと思っています。