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魔王を倒せなかった勇者達の話①

みんなはRPGをしたことがあるだろうか。

基本的には悪の根元である魔王を倒す勇者の話が多い。

この話は魔王を倒した勇者達とは別の一行のお話…


「アロン。」

「…。」

このパーティ勇者アロンは頭のなかが真っ白になっていた。

「おい!アロン!」

「!?」

「大丈夫か?」

「あ、あぁ…。」

それもそうだ。俺達とは別の勇者達が魔王を倒したからだ。

「村に帰りたくない…。」

数十分前に遡る。


「お前ら…準備は出来てるか!」

「えぇ、万端よ。」

「これが最後の戦いになるんだよな…。」

「魔王を倒すために戦ってきたんだ…」

魔王の部屋を開いた。

「…!」

そこにはきっと魔王だったものが存在した。

「…は?」

「どうなってんだ…?」

経験値のオーブが辺りに散らばっており、部屋自体も焼けただれていた。

「あ、あそこ…。」

窓ガラスが明らかにあそこから脱出したであろう形で割れていた。

確かに室内では空間移動の呪文は唱えられない。そしてこんな大きな城を正攻法で下りるのは時間がかかる。

「それにしてもやりすぎだな…。」

「勇者達の圧勝だったんじゃねえか…?」

「どおりで道中の敵が少なかったわけだ…。」

「…え、どうする?帰る?」

「いや、え?でも…。」

俺達は今日この瞬間のために必死にモンスターを倒し成長してきた。

必死に作り上げてきたパズルの最後の1ピースを知らない誰かにはめられた気分だ。

「もしかしたら…強化形態とかあるかも知れないよ?」

魔法使いのローズが呟く。

「いや…でも。」

「それは無理だ。」

傭兵のエイドがきっぱり言いきった。

「なんでそう言いきれるのよ!」

「だってみてみろよ。」

正直かなりグロい。表現が難しいぐらいにぐちゃぐちゃになっていてギリ魔王の姿かどうかわかる位の感じだ。

「この状態から進化は不可能だろう。」

「なぁ、ちょっと一回外でねえか…。」

「レンジに賛成だ。ここは気持ち悪い。」

俺達は窓ガラスからではなく脱出玉をつかって城の扉前まで戻った。

そして今に戻る。


「なんで村に戻りたくないんだ?」

格闘家のレンジが問う。

「だってよ…村の住民になんて顔をすれば良いかわかんねぇだろ?」

「いやーでもよ。平和が戻ったってだけで村の奴らは喜ぶんじゃねえの?俺の街もきっとそうだろうし。」

(…!)

そうか…俺はいつからか、魔王を倒すことだけに着眼点を置いていた。元々は平和を取り戻すために村を出たんだったな…。

「そうだな…それを聞いて少し心が晴れたよ。」

「お?なら良かった。それならみんなが村戻る前に、俺達の出会った場所にいかねえか?」

「俺達の出会った場所…。」
















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