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【386/1096】深呼吸ができなった話

386日目。今日はなんかよい日だった。こういう日が続くといいなと思う感じの日。


私が学ぶ呼吸・整体のワークで、一番好きなものが「深呼吸の衝動」である。

このワークをもう本当にできる限りいろんな人に伝えたくて、シェアリストにもなった。
今でこそ、「深呼吸で落ち着きを取り戻す」ということができるようになったが、私にとって、これはかなり最近になって習得した技術である。

緊張する場面で、ゆっくり深呼吸して心身を落ち着かせるということを、誰でも当たり前のようにやるのではないだろうか?
深呼吸は、いつのまにか自然に獲得して実行しているものである。そして、それを意識的に行うことで、おちつける。

ところが、その普通は誰でも自然に獲得する深呼吸を、私はできなかった。
深呼吸するとパニックになった。
中学生の頃にはもうその状態だった記憶がある。
部活の水泳部で、プールサイドでめまいがして倒れて、軽くパニックになったことがあるのだが、その時に、部活の顧問の先生に「深呼吸をしろ」と言われて、さらにパニックになったのだ。
その後、過呼吸で救急に運ばれた。
そういうことは、何度もある。

病院の検査で、緊張して力を抜くのに、「ゆっくり息してください」と言われて、もっと力んでしまい、「ゆっくり息を吐いて力を抜くんですよ」と言われても、まったく力の抜き方がわからない状態になった。

ため息はつけたので、深呼吸をしてと言われると、ほぼため息をしていた。

DV被害者支援のピアグループに参加していた時に、深呼吸できない人たちがたくさんいた。
そこで初めて、「解離している人に、『呼吸しろ』と促すと余計解離するので、言ってはいけない」という話を聞いた。
今から20年くらい前の話だ。

「解離」という言葉はいまでもあまりメジャーではないが、その頃は今よりもっともっと全然、認知されていなかった。

専門家と言われる、精神科医や臨床心理士の人たちもごくごく一部の人を除いて全然知識もなく対応できる人もほとんどいなかった。
当事者の話を専門家に否定されまくって、当事者がより苦しむというループが回っていた。

だから、当事者同士が一番勉強していた。
自分の身に起きてるから、切実だったし、今みたいに解離のことが書いてある書籍も全然なかったので(あってもものすごい専門書すぎて、素人が読むのはたいへんだった。今でもわりと専門書的なものが多いが。)勉強するのも大変だったけれども、自分の身に起きていることを話すことは、理解につながった。
アメリカに勉強しに行っている人もいたし、そこでアメリカの解離学会での話を聞いたりして、自分たちに起きていることはこういうことなのかと理解できることは、自分たちは「おかしい人」ではないのだという安心につながった。

解離症状を持つ人が、解離しそうなときは、足が地についているということと、細く息を吐くということ、そして、手足を動かすということ、なんでもいいから話かけつづけて、話をさせるといいことなどを学んだ。
自分たちがしてもらってよかったことで、覚えていることを話した。(解離している人は記憶がごそっと抜けるので、まったく覚えてないことも多い。)
私の解離症状はその場では比較的軽いほうだったが、深い呼吸をするのは恐かったし、パニックになった。

解離症状とは、簡単に言うと、「自分の身体感覚、感情を認知で切り離して対応する」ということである。

なんらかの原因で、自分の身体感覚(不快感情)を感じないように適応する必要があって、それに適応したために解離様式で制御している。
脳の情動脳と認知脳の連絡がつながっていない状態なのである。
だから、不快感情を認知により制御することが可能になる。
この解離は、まったく労力を要することなく、完全に無意識に行われる。
解離が自分の意志で出来るなら、解離性同一性障害の人が、人格を切り替えるのが意志で出来ることになってしまうが、実際にはそんなことは起こりえない。(映画などでそのようなストーリーのものがあるが、完全なフィクションである。)
なぜ、障がいかというと、自分の意志で制御することはできないからである。認知脳で制御してるんだったら、自分の意志で制御できるようにならないの!と当時は思ったのだが、そう簡単な話ではなく、できないものはできない。なぜならこれは、ボトムアップで身体感覚から上がってきているものを、本能で自動的に処理する回路だからである。
だから、その回路を使わないようにするには、別の回路を育てるしかない。

ちなみに、1歳に満たない子どもでも、自分の不快感覚を親が認知で制御するために、解離様式で適応するという方法を身に着ける。

例えば、泣いている子どもの泣き声が不快で、親がいら立ち、叱責を与えてしまったり、逆に泣き声に怯えて泣き止ませるために子どもにひれ伏してしまうなどしていると、子どものは解離様式で、不快感覚を切り離して対処するようになる。
この解離は、人間なら誰でもするものである。なぜなら、ここに適応しなければ、死ぬからである。子どもは、保護されなければ死ぬことを本能で知っている。

ただ、この解離様式は、一時だけでそのあと適切に対応されていれば特に問題のないものであるが、長いことずっと適応していると、さまざまな不具合を引き起こしてくる。
特に子どもの頃から、ずっとその状態が続いている場合は、人間関係にそのままダイレクトに反映されていくので、生きづらさそのものになる。
その話はまたどこかで書くことにする。

深呼吸できないのもそのひとつで、呼吸をすると身体とつながる感覚が生まれるため、身体をないことにして適応してきた人にとっては、未知の世界であり、恐い感覚が出てくることがある。
もしくは、深い呼吸そのものができないというタイプもいる。

しかし、深呼吸して身体がおちつく、安心する、身体感覚とつながるというのは、人間として、ものすごく大事な機能であり、この能力を育てることが回復に欠かせない。

できたら、この解離様式で適応している状態を、子ども(0~18歳くらいまでの時期)のうちに適切に対応されて、健全な適応に変化させることができるのがいい。
神経系がまだ成長期であるうちのほうが、回復が早いし、人生の傷も少なくて済む。

大人になると、脱学習+再処理が必要になってくるため、回復に時間を要することも多い。でも最近の研究では、脳神経系は死ぬまで緩やかに成長するらしいので、大人になってからでも回復することはできる。

そして、私はさまざまなセラピーやら、トレーニングで、意識的な呼吸ができるようにはなっていたけれども、本当に身体感覚につながると怖いので、認知によるイメージで補って呼吸していた。
そのことにも呼吸・整体で、深呼吸を学ぶまで気づいてなかったけれども、深呼吸とはものすごい身体感覚なのである。
内臓感覚レベルの共鳴である。
これを繰り返し体験することによって、自分の脳神経系の処理が書き換わる。回路が育つというわけである。

書き換わると、日常で意識的に深い呼吸をして、安心感を得て落ち着くということができるようになる。
深呼吸したらパニックになって過呼吸している状態からでも、必ず変われる。

解離様式で適応していると、身体感覚をお留守にするので、全身緊張状態になりがちである。
深呼吸ができて、緩めるようになるだけでも、楽になれる。

とりあえず、今日は解離という観点から、どうして私が深呼吸の衝動が好きかについて書いてみました。

では、またね。


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2022年11月5日(土)13:30‐15:00 対面(品川区)
https://tcshinkokyu1105.peatix.com/




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