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【815/1096】暗闇の中から抜け出す

そこは暗くて、真っ暗で、瞼をあけても光を感じることのないところだった。
温かく、守られているものに包まれているが、何も見えない。手で触れるということもなかなか不自由で、自分の頬を触るくらいが精いっぱいのようだった。
足は動く。なにかたたいたり、蹴ったりして、動くと何かにぶつかるがそれが何かはわからない。
水音のなかに音が聴こえるが、何を言っているのかはわからない。

とにかく、そこは暗くて窮屈だった。
とても窮屈で手足を伸ばすこともできなくて、苦しくなってきていた。
だから、ここではないところへ向かう。

うごめくもの、ドンドンドンという音。
それを合図に向かう。
上手く動けなくて、全身を使う。
肩や背中、お尻と言った全身をフルに使って、前へ進む。
前だか後ろだか、本当のところはわからない。
でも、こちらのほうだ、という感覚で進む。
狭くて窮屈で、動きにくい。
この通路以外の道はないのか?と思うけれど、どうもないらしい。
一本道で、正面突破するしかない。
通路に振動がある。
振動に合わせて動く。
この動きはどうしてできるのか?
自分で理解していないけれども、身体が知っている。
途中で止まれば終わる。
終わるわけにはいかないと警告が聴こえる。
ただ、進め、進め、と。
這うように、引きずるように、回転しながら動く。
真っ暗で何も見えない中を、
ただ、進め、進め、と。

温かく包んでくれていたものは、いつのまにか無くなり、自分を守るものはなくなった。
けれどもこのように動けるから、もうあれはいらない。
進んだ先に何があるかはまったくわからない。
が、進むしかない。
それ以外の選択肢は与えられていない。
あまりに狭くなっていくので、ここが通り抜けられる道なのか不安になる。
が、もう元に戻るすべはない。
始まったら、終わるまでやめることが出来ないのはわかっていた。

終わりがどこかはわからない。
けれども、ただ、進む。
進めと促され、それに従いながら、自分で動いて進んでいる。

真っ暗な暗闇から、真っ白なところに出た。
そこは、なんの窮屈さもなく、ただ開けていた。
ああ、白い。
光を感じる。
これが光だと、なぜわかったのだろう。
今まで一度も感じたことのないものなのに。

暗闇の中からひたすら進んで、抜け出した。
抜け出した先に待っているものは何か。
まったく未知のもののようで、それはわかっていることのようでもある。

暗闇から抜け出した。

朝だ。

ーーー
では、また。




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