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永井秀樹さんの連載を終えて

エスパルスのオフィシャル媒体で執筆させていただきもうかれこれ20年以上になりますが、サッカーは同じ場面が2度と繰り返されることはなく、毎年選手が入れ替わり、スケジュール的にはルーティーン化され、自分が取材した試合の分母は大きくなっていきますが、1試合を軽く捉えないように時々戒めます。

エスパルスではSTORYというかつてエスパルスを支えてくれた選手を取材したり、あえてライバルチームの選手へ話を聞きに行く連載企画があります。

今回は永井秀樹さんを3回連載で執筆しました。S級ライセンスを取得中でヴェルディの育成組織で仕事をしている立場です。当然申請はヴェルディにします。

永井さんはたった1年しかエスパルスに在籍していませんが、今もなおエスパルスサポーターとどこかで出会うと、感謝を伝えられるそうです。それほど永井さんが在籍したシーズン、永井さんの存在が大きかったという証拠です。在籍したのは1996年。エスパルスがナビスコカップでクラブ史上初のタイトルを得たシーズンです。宿敵ヴェルディからの移籍でした。限られた時間ではありましたが、どこまでも正直に、そして何処までも熱くエスパルスを語ってくださいました。

ただ、写真の都合もあり、3回連載にはここで切ってくれという時系列が存在します。大変失礼ながら、エスパルスから去って以降の永井さんの歴史はほぼ割愛です。心苦しく想いながらも、濃密に当時を蘇らせるために、古い動画を引っ張り出し、リアリティを持って描写できるところを絞って緩急をつけています。

そしてもっと問題なのは、クラブ会報誌で、育成年代の選手が読んでも、小学生が読んでも、タメになる話にしたいという気持ちで書いていますが、下手したら生まれてさえいない選手やサポーターに永井さんを実績を伝えなければいけません。古参サポーターからはそんなこと知ってるよと突っ込まれるのを覚悟で丁寧に永井さんがどんな選手でどんな実績だったのかに文字数を割く必要がありました。その分残せるエピソードが思い切り限られてしまいます。

読者にとっても何か気づきになって欲しいのですが、取材時間をくださった永井さんにも、取材を受けてよかったなと感じてもらいたい一心で、今回は永井さんが指導者としてすでにスタートしていることから、現在にフィードバックすべく、当時と今の指導者としての自分をシンクロさせながらの結末にしました。

誰のために、何のために。ともすると矛盾し共存できない状況の中で妥協や諦めの編集ではなく、全部を薄っぺらくまとめずに、どうにかし伝えたいことを、最大限共存させるのが、毎回私の中での戦いです。


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