ものがたり) 残響 #4
それは人質であるわたくしの見張り役―――旦那様でした。
ほうほうの体で次の村までたどり着き、なんとか残りの人数をまとめて軍議を開いたとき、旦那様の仲間たちはわたくしのことを、殺してしまえ、と責め立てました。
人質としてなんの役にも立たなかったのです。
皆の意見は当然のことでした。
けれど旦那様は見せしめに殺すのは後でよい、と庇ってくださったのでした。わたくしの扱いは旦那様に一任され、結局、処刑云々の話はそのままうやむやになったのでした。
のちになって、どうしてあの時助けてくださったのかお伺いしても、お前はまだ小さかったから、とおっしゃって、目を細めるだけなのでありました。
あの村は果たして今でもあるのでしょうか、わたくしは知りません。
知ろうともしませんでした。
旦那様がわたくしを大事に扱ってくださることは実の家族以上で、それならばいっそ、山深い村に暮らしていたかつてのわたくしはあの夜襲の時に死んだものとして、これからは旦那様にひたすらお仕えしようと思ったのです。
わたくしを捨てた故郷のことなどは、わたくしのほうこそ捨ててしまおう、と。
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