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祖父の葬儀と桜

お見舞いに行った2日後、仕事中にブルッとスマホが震えた。母からのLINEという時点でもう察したが、やはり祖父が亡くなったという連絡だった。

翌日と翌々日に入っていた仕事の予定を謝って全部キャンセルさせてもらい、密かに準備していた礼服を車に積め、祖父の家のある長崎の田舎町の小さな斎場へ向かった。長崎は桜が満開に咲いていて、雨風に乗って花びらが車に貼り付いていた。しかし車ですぐに行ける距離って便利だ。まさか福岡に移住してよかったとこんなに早く実感するとは思わなかったな。

はじめ葬儀は親族だけの家族葬にするという予定だった。「予定だった」というのは、この町の風習と祖父の顔の広さを舐めていた我々親族の誤算であった。通夜が始まると、家族葬と言ってようが関係なくどこからか情報を聞きつけた町内の人たちが「ごめんくださーい」とどしどし押し寄せて来たのだった。

中には親族の誰も知らない人までいて、あれはただの葬式マニアではなかろうかと疑ったりするほどの盛況ぶり。口コミだけで噂が広がる人気店かよ。まあそれが祖父の人気を表しているようで、祖父らしい葬儀になったような気もする。

予期せぬ対応にドタバタしているうちに通夜を終え、ニセ親族たちがいなくなり本物の親族だけで食事をし、それから深夜の斎場でやっとゆっくりと祖父の顔を見ることができた。

祖父の好きだった日本酒を2杯注ぎ、祖父の側に置いて1杯を飲んだ。子供の頃、酔った祖父によく「腕相撲ばしようや」とか絡まれていたなあとか思い出す。寝ずの番をしようと思っていたのだけどさすがに疲れて少し寝た。

福岡に戻り、日常に戻る。街中の桜がこれでもか!これでもか!と咲いていたので花見に行くことにした。

・春日公園

・草場川の桜並木

・大濠公園、舞鶴公園

桜の摂取のしすぎでオーバードーズになるかと思ったがそんなこともなく、ただ歩き回ったり足漕ぎボートしたりで足が筋肉痛である。

大濠公園はさすがに人混みがすごかったけど、他はそれほどのレベルではなくてわりと快適。広場にシートを広げ皆それぞれ桜を眺めて楽しんでいる。花を見ながらお酒を飲むって素敵な風習だな。

あと、夜桜は夜というのもあってなんとなく怪しいカップルが多いぞ……と胸がザワザワした。私の後ろを歩くおじさんが連れている若い子にマッハ2でキスしたりしていたけど、まあみんな楽しんでるみたいでいいですね。

花見の文化は平安時代の頃からあったという。祖父の代も、もっと昔の人もこうして花見をしていたんだろう。これからは桜を見るたびに祖父のことを思い出すんだろうなあと思った。

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