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起業後にStartupWeekendに参加する意義

そんな事してないで小規模でいいから金になる事業を作れ。起業後とか、〇〇サービスで起業したとか、スタートアップを学ぶみたいな姿勢が正直ダサい。あくまで体験イベントなんだから、そんなとこにいないで、また大義ばかり抱いて金にならないことをやってもそれは事業ではない。メルカリ転売の方がまだマシなのかも。いいからこんなことしてないでちゃんと"事業"を作れ。

3年後の自分より

検索サービスで今年3月に起業した株式会社Rerightの松田です。

この週末3日間で起業体験するStartupWeekend(以下SW)に人生で2回目に参加してきました。1回目を終えたとき「もう参加することはないだろう」と思っていましたが、周りからの刺激を受けたかったり何か面白い人との出会いがあればと思い、地元近くの北九州-山口をつなぐ関門海峡での開催に応募したのでした。

ちなみに前回のSW東京WorkStyleでの参加のことは以下のnoteに書いています。

結果から言うと今回も参加して良かったなと思いますし、実際に面白そうな奴との出会いや事業検証における学びがありましたのでnoteに残しておこうと思います。

優勝は自分たちが正しいやり方で事業開発できたのかの尺度

今回も順位としては優勝という結果になりました。ただ前回も書いたと思いますがSWの優勝自体に価値はないと思っていて、これは優勝したから賞金が出るとか、その場にVCが来ていて資金調達の可能性が上がるとかではないこともありますが、あくまで3日間の起業体験イベントの成果なので、本当に大切なのは実際に世の中を変えるようなサービスや顧客に確かな価値を届けることだと思っているからです。実際にSWでの説明でも「優勝したチームは実際に起業しないことが大半」という説明がなされています。

そうは言っても、今回の優勝は「自分たちの検証方法や事業開発のやり方が正しかった」ということの証明だと思いますので、その意味合いでチームとしてとても嬉しかったです。

Hustlerとして自分のアイデアでチームは作れなかった

SWでは既に自分で勧めているプロジェクトで仲間集めをしてはいけません。今回、本業である検索サービスに無理に絞る必要は無いかなと思ってたのですが、ハスラー(ビジネス担当。ただハッカーやデザイナーと比べリーダー的なポジションを担う人が多いイメージ。通称ペテン師とも。詳しくはこちら)として自身のアイデアや人柄で人を惹きつけチームを作りたいと思っていました。

初日の1分ピッチで発表したのは『転売ヤー撲滅』というアイデア(というか課題)。これはもともと趣味やライフワークとして転売ヤー撲滅ハッカソンをしたいと思ってたので、もし今回良いチームが出来て本当に活動を続けるとしたらこれかなーと思い選択しました。具体的には本人確認を必須とするECサイトで、1人1購入しかできないようにし、また商品を匿名で追跡することで転売を検知・防止するようなことを考えていました。

しかし僕に集まってくれたのは1人。詳細を聞きにきてくれた人もいましたが上記の具体性の部分がフワッとしていたので仲間にはなってくれず、結局3人以上のチームを作れなかったので、バラけて別のチームに参加することになったのでした😢

人を集めているチームを見て思ったのは、「3票とも自分のアイデアに投票しました‼」という意気込みが感じられるピッチの人や、なんか純粋に自分が欲しいものをピッチしていて助けてあげたいなーと思えるような女の子だったりしたので、結構アイデアよりは人柄に集まっているイメージがありました(それに気付くと同時に悔しさで変な汗が大量に出てきました笑)

結局、参加したチームは「PCのマウスカーソル用のキャラ画像を販売する」という小学4年生の子のアイデア。親子での参加でしたので僕含めて3人のチームとしてスタートしたのでした。

アンケートではなく顧客候補への販売にこだわったのが良かったと思う

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SWの審査基準としては「検証」「実行とデザイン」「ビジネスモデル」の3つがポイントになっています。今回自分たちは何一つ製品っぽいものは開発していませんが、顧客候補になる方からのZoomやTwitterDM、街頭インタビューでのフィードバックを一番集めていたことが、審査基準の「検証」にて評価されたのではと思っています(審査員の方からのその点について言及はありませんでしたが)。

というのも起業の科学でも「この商品が欲しいと思いますか?」のようなアンケートは意味がないと言われていて、これはこの1年間、私が事業開発を進める中でも強く思います。

確かにアンケートは手っ取り早く、自分の知人たちに拡散しやすいし、欲しい欲しくないが一見数字で見えやすい形です。しかし私たち創業者が検証すべきは「実際に顧客候補がお金を払うのかどうか、それほどの課題かどうか」です。

アンケートでは顧客の前のめり感は感じられないですし、製品の説明も文面なので価値が伝わりにくく、また誤解されるリスクも大きいです。また対面でないので回答者は「〇〇円だったら買うと思う」のようなええ格好な回答をしがちです。しかしこういった人は実際にはほぼ買いません。

今回は最終的に「PCのマウスカーソルを好きなキャラクターに変えられるサービス」として発表したのですが、事前にアンケートでのニーズ調査は済ませていたこともあり、3日間のActionではTwitterDMで製品LPでの事前登録をもらおうと試みたり、Zoomインタビューでオープンクエッションで生の課題感を探ったり、町中に出て知らない方に売り込みをしてみたりという検証にこだわったので、そこが評価されたのかなと感じています。

結局スタートアップなんて、顧客の声をもとに真のニーズにピボットしてなんぼだと思うので、アンケートよりは生のフィードバックを早めに受けて何度も完了するのがやはり大事だと再実感したのでした。

初の路上インタビュー

今回、路上で見ず知らずの方にインタビューしたのは実は初めてでした。普段進めている検索サービスのインタビューでは知人へのZoomやTwitterDMでのやり取りがメインだったので、路上で見ず知らずの人に話しかけインタビューをすることはなかったのです。

製品もなく、起業や街頭インタビューの文化がまだまだマイナーな日本では中々ハードルが高いですが、結果的に1組の女の子からマウスカーソルのキャラクターの制作代行の受注のために相手に名前と連絡先をもらうことができました。

と、ここまでは最後のピッチで言ったのですが、実際にお金を前払いで受け取ってはいないので制作後に「いらない」とキャンセルされたり、そもそもLINEなのでブロックされる可能性もあります。

なので正直ベースで言って今回の連絡先ゲットはニーズがあることの証明にはならないはずです。ただ「そういった検証方法をしていたんだよ」ということをアピールすることはSWの審査という点においては有効でした。

本来は話をした段階で「そう、まさに今そんな課題で困っているんだ」とか「それ今すぐに使いたいのでどうすればいいですか?」のような前のめり感が理想なので、何度も何度も繰り返すしかないですね‥。

改めてすばやくローンチしないと検証できないと知る

上記のインタビュー結果も踏まえて、改めて「とにかく今すぐローンチせよ」の意味を痛感しました。

たとえ対面のインタビューでも「これを欲しいと思うか」というのは実際の製品やサービスがないと真の検証はやはり出来ないです。

ローンチするのはMVPと呼ばれる実用最小限の製品ですが、これは起業の科学や各種スタートアップ系のブログでは「サービスを紹介する1枚のウェブページ」や「製品のデモ動画と事前登録フォーム」などが有名な例としてあげられます。

しかし、やはり実際にお金を払って貰えるかどうかを確かめないと意味がないということを再実感し、MVPをとにかく早く構築し製品としてローンチ(誰もが使えるようにすること。別に広告やプレスリリースは必要ない)しないとダメですね。

MVPも、あたかも本当に機能する製品があるように見せかけるだけで十分なので、実際には何も出来てなかったり、多くが人力だったり、外枠だけの張りぼてだったりでOKです。ハスラーがペテン師と呼ばれるのはこのためです。

今回は「PCのマウスカーソルを好きなキャラクターに変えられるサービス」でしたが、まずSTEP1としてキャラクター画像の制作サービスとしてインタビューを行いました。なので実際に制作サービスを紹介するチラシをMVPとして制作すれば、よりリアルな検証が出来たのではと思います(もちろんこれだけではスケールしないですが)。

ユニークインサイト

ちなみにピッチの型として、創業者たちしか知らないユニークインサイト (まだ顧客自身も気付けていない潜在的な課題)を説明せよとよく言われます。

ピーター・ティールの『ZERO to ONE』の中でも「まだあなたしか知らない秘密を見つければ大きなビジネスチャンスなる」と言われており、このインサイトを探るのがユーザーインタビューの目的です。

今回は途中のアイデアのブレーンストーミングで「PCのマウスカーソルを育成できるペットにできるサービス」というアイデアに昇華させました。単にマウスカーソルの変更アプリやキャラクターの制作代行よりもスケーラブルにしたかったからです(僕はこの点を結構こだわりました)。

しかし(インタビューを通じて発見した訳ではないのですが)、そもそも多くの人はをマウスカーソルをこんなに自由に可愛いものに変更できる」ということを知らないことに気づいたので「一旦ただのキャラクターの変更サービスとしてスタートさせるべき」という判断になったのでした。

また「変更できるのは知っていても、方法が面倒でやりたくても諦めてしまう」という意見ももらっていたので「キャラクターの制作や拡張機能だけではなく、変更を3ステップくらいで簡単にできるインストールアプリの開発が必要だ」という判断にもなりました。

今回のインサイトはターゲットど真ん中の顧客から得たものではないですが、こういったことを発見できると、当初考えていた製品に不足しているものが見えたり、全く違うものを求めていることに、私たち創業者は気づけます。

チームづくりにおける目指すものや価値観の一致の大事さ

先の「スケーラブルな事業になることにこだわった」ことに関連しますが、チームづくりにおいて最初に目指すものや価値観の一致はマストだと今回実感しました。

私たちのチームは小学4年生の「PCのマウスカーソル用のキャラ画像を販売したい」という個人的な願望から始まったアイデアでしたので、僕がスケールのためにペットとしての育成サービスの路線を打ち出したときはリーダーであるその子は不満そうでした。

出会って2時間ほどで作ったチームですし、スタートアップの世界は仲間割れって普通にあることなので、僕自身は全く怒りや不満はなく、目指すものが違うなら袂を分かつのは仕方ないし、そういう経験を小学生であるリーダーにしてもらうのも良いかなーとか考えてました。

結果的に仲間割れすることは無かったですが、最初のチームづくりの段階でこういった目指すものや価値観の擦り合わせをしておくと無駄がないと思うし、良いチームになりやすいなと感じます。

・それを採算の合うビジネスとしてやるのか
・世界を変えるようなスケーラブルな事業を目指すのか
・そのためなら初期のアイデアを捨ててもいいのか


これらはぜひ最初に確認してみてください。

チームにおける心理的安全性

上記のような仲間割れの危機についても言えますが、個人的に今回チームにおける心理的安全性をかなり意識しました。

・アイスブレイクだから失敗したり間違ったアイデアで全然いいんですよ
・不満に思うことは何でも言っていい
・眠たい、つまんない、臭い、あの人が嫌い、気まづい、そんなことを正直に伝えられる雰囲気
・今回失敗したっていいじゃないか
・審査員にキツい突っ込みを食らってもいいじゃないか、そういうものだよ

言葉にせずともそういった空気感を常に出すように心がけていました。今回はリーダーという役割ではなかったですが、こういう「失敗しても何を言ってもいいんだよ」という空気感を出すことがチームの心理的安全性だと理解していまして、実際、今回は私自身がのびのびやれたと思いますし、チームメンバーとのケンカも起きませんでした。まぁ私と親子の3人チームだったのでもともと起きにくい環境ではありましたが(^^;)

今回これを意識したのは、少し前にそういう講義を受けたり、Google re:Work などのノウハウを読んだりしたのもありますが、1番は前回のSW参加時に「アイスブレイクでは伸び伸びとボケたり発表できたりしたのに、本番のチーム作りでは失敗を怖がって過度に真面目なことばかりを言ってしまった」という反省があったからです。

流石に今回、本番でもボケたりする余裕はなかったのですが、チームづくりの時にこの辺のアピールをもっとすると仲間を集められたかもしれません。

そもそも本番という言葉もどこかズレていて、失敗が日常茶飯事であり、それが学びであり、それがスタートアップの財産であるので、たとえ実際の起業時やサービスリリース時でも「失敗してもいいんだよ」という雰囲気を出すことが重要だと考えています。

ちなみに「たくさん失敗しよう」という言葉を言う人がいますが、私はあれは誤解を生むと思って反対派です。失敗を目的にするのではなく、「成功したいんだという強い思いをもって何度もチャレンジすることが大事で、その過程での失敗は糧になるのでどんどんしていいんだよ」というのが真の意味だと思っています。

起業済みだからこそのジレンマ

最後に既に起業済みの身として参加したことによるジレンマについて書きたいと思います。

SWでは既に進めているプロジェクトでの応募や仲間集めは禁止されています。そのためスタートアップ的な思考で起業済みなのであれば、1番やりたいこと以外のことでアイデアをピッチし仲間を集めることになります。そのため中々ピッチに熱が入りにくいというジレンマがあります。だって1番やりたいことは他にあって、既にやっているんだもん。

また最後の発表では何かの行動を促す目的で行うピッチ形式で発表をするのですが、もし最後のピッチの審査にVCやエンジェル投資家の方が来ていて「そのアイデアに資金を出すよ!」と言ってくれたとしても「いや、自分は本業の方に専念したいので…」となってしまうのでピッチに目的や熱意が欠けやすいというジレンマもあります。

「じゃあなんで本業ほったらかして、お前SWなんかに参加してるんだ」と言われそうですが、現在1人で事業を進めてきて限界を感じている身として仲間集めのきっかけになればという思いで参加しました。結果的にはこういうジレンマを抱えながらも参加することによる学びや良い出会いがあったので結果オーライだと思ってます‥許してください‥🙆‍♀️

SW参加者の起業率は15%程度らしいですが、過去の排出スタートアップや周りを見ると「もともと起業するのは決めていて、何かのきっかけやブランディングの一貫として参加している」という起業家が多いように感じます。

SWとしても「スタートアップを生み出すのではなく起業家(新たな事業を創り出せる人材)を生み出すのが目的」らしく、これきっかけでスタートアップが生まれる必要はないようです。

ただスタートアップ、というか事業によって世の中を変えたいと願う人がSWに参加する場合は、これまで書いてきたことを実践する場として、また普段自分たちがやっている事業開発や仮説検証方法が正しいのかどうかを確かめる目的で参加してみるといいのではないかと思います。

日頃こういったことを毎日やっている身としては、初参加が多いSWに自分が参加するのはちょっとズルかったかもしれません。周りは起業体験イベントよりも実際に学生で起業してビジコンや資金の出るピッチイベントなどに参加して優勝したりしてるので、本気を目指すならSWより前に起業してしまって最初からそっちに出たり、そもそも資金調達が必須ではないのならピッチコンテストなどに出ずプロダクト開発と顧客インタビューを通したPMF達成の工程を早くすすめるべきと思います。

半分日記のようなものでしたが、何か世の中を変える起業家の皆さんのヒントになれば幸いです!Twitterでも起業関連の情報発信をしているので、やっている人はフォローいただけると嬉しいです!


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