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昆獣ミルメコレオちゃんの誕生によせて

カニ人界隈の皆様、あけましておめでとうございます。noteに生息するモジカキヘンタイニンゲンのパゴパゴです。パコパコではありません。2024年も宜しくお願い致します。

昨年の大みそかを〆切として行われた「第二部人虫族人気投票」はどうやら無事に終了した模様です。公式公認非公式WEBサイトに新たなハーフキッズが数人登録されていました。誠に喜ばしい事に私の推しである虫竜クインアントちゃんの子供、昆獣ミルメコレオちゃんも誕生していました。やったー! 拍手!!!

Twitter(現X)のアカウントがないので正確な順位は不明ですが、上位3位のどこかには入ったようです。大変めでたい。彼女に投票した同志ヘンタイニンゲン諸兄には最大級の感謝と称賛を贈りたい。そして共に祝杯をあげましょう。というわけで、早速上記のサイトから画像を引用させて頂いて、クインアントちゃんのお子様のお姿を拝見してみましょう。

ミルメコレオちゃんはクインアントとある種族の王との禁断の子だ。
世に出ると騒ぎになるから極秘とし隔離され育つ。
この子の声には聴いた者を操れる効果がある。
これは母親譲りで母親は同族限定だがこの子には制限がない。この特性を使い軟禁を抜け出し悪戯に勤しむ。
しかし両親と一部種族には効かない。

…………めっっっっちゃくちゃ性癖にぶっ刺さるデザインですね。驚きました。昆虫とネコ科動物のボディが見事な形で掛け合わされています。しっとりとして柔らかそうなシロアリの無毛の腹部とは対照的に、肩から腕、太ももにかけてのしなやかな筋肉を感じさせる曲線はゴワゴワとした体毛に覆われています。獲物を掴むための大きな手も可愛らしいですね。配色も非常におしゃれです。体の色もそうですが、母親のクインアントちゃんが身に付けているものと似た衣装にも品があって、彼女が普通とは異なる高貴な身分である事を感じさせます。腹部側面に気門のような突起が膨らんでいるのもいいですね。総合的に見て非常にエッチだと言わざるを得ません。これでテンション上げるなという方が無理な相談でしょう。

あと毛量がすごい。ブラッシングとか大変そうです。この毛は彼女の父親である「ある種族の王」から遺伝したものでしょうか。皆さん大体同じ予想をしているものと思いますが、おそらくお相手は人獣族の王、現時点ではスケッチ未登場の「ライオン」をモチーフにした個体ではないでしょうか。なぜならミルメコレオとは、我々の現実次元においてアリとライオンを掛け合わせた姿として語られる空想上の生物だからです。

現在手元にある資料がボルヘスの「幻獣辞典」のみなのでそこから引用させて頂きますが、フランスの小説家ギュスターヴ・フローベールの著書によると、ミルメコレオは「体の前半分がライオン、後ろ半分はアリで、生殖器が逆向きに付いている」怪物とされています。生殖器が逆向きについてるってどういう事だ……? ペニスだったら普通は前向きだから後ろ向き……? お尻から生えてるって事……? じゃあ女性器だったら……? まあそれはさておき、他には四世紀頃にまとめられたギリシア語の書物「フィシオロゴス」によれば、「ミルメコレオは父母両方の性質を受け継いでいる。父であるライオンは肉を食い、母であるアリは穀類を食う。その間に生まれたミルメコレオは母の性質のために肉を食べず、父の性質によって穀類を食べない。そのため栄養が取れずに滅ぶ」と説明されています。

なぜこんなヘンテコな性質がついているか。その由来は聖書の誤訳にあるとされています。旧約聖書のヨブ記第四章にこんな一節があります。「雄獅子は獲物を得ずに滅び」。旧約聖書の言語であるヘブライ語では獅子はlayishというらしいのですが、この語がギリシア語に翻訳される際に、なぜか古代ローマの著述家アイリアノスや学者ストラボンが記したアラビアの獅子を指す「ミュルメクス(myrmex)」という語がくっついた「ミュルメコ獅子」という新しいギリシア語が作り出されました。ところがややこしい事にミュルメクスは元々ギリシア語でアリを意味したため「ミュルメコ獅子=アリ獅子」と勘違いされ、さらに上記のヨブ記の一節も「アリ獅子は獲物を得ずに滅び」という妙な読み方をされたためにそこから空想が膨らんでいき、前述したヘンテコな性質を持った怪物ミルメコレオというファンタジーが生まれていきました。

このような由来を持つ「ミルメコレオ」という名を持つハーフキッズであり、かつ母親がシロアリ族の女王、父親が「ある種族の王」となれば、父親の正体がライオンモチーフの人獣族であるというのも、それほど牽強付会な説であるとは言えないのではないでしょうか。まあ厳密にいえば母親のモチーフはシロアリなのでアリではないのですが……ちなみにシロアリはゴキブリ目の仲間であり、ハチ目の仲間であるアリとは目レベルで違う種族です。よって正確にはアリライオンではなくゴキブリライオン……?

あと、個人的にすごく好きなのがこの子の能力ですね。「声で他人を操る」。呪術廻戦の狗巻棘とか天上天下の犬江新太夫典子みたいなエグめの能力です。母親であるクインアントちゃんも同じ力を持っているらしいのですが、同族にしか効果がない母親のそれに対して、ミルメコレオちゃんは同族以外にも力を及ぼす事ができます。対象範囲が広がっています。えげつないです。能力の深度や持続時間が不明なのでどちらが強いかは一概には言えませんが、いずれにせよ聴覚器官を持ち言語が理解できる相手には初見殺しとなり得るほどの強力な異能です。

投票用のファンアートとしてクインアントちゃんの二次創作小説を書く際、彼女が持つとされる「歯止めのきかない強烈な母性」を文章でどう表現すればいいのか悩み、私は最終的に「声」という要素にフォーカスを当てる事にしました。

「どうしたの。何の騒ぎです?」

声が聞こえた。それが鼓膜を震わせた瞬間、カニ人は泣き止むのをやめていた。その必要はないと感じたからだ。今置かれている状況も恐怖も何もかも忘れてしまいそうな、そんな優しさと慈愛のようなものを感じる声音。無意識に故郷であるマリアナ海溝をイメージしてしまうような、どこか不思議な懐かしさを覚える声。人垣をかき分けるようにして行列の後方から現れたのは、シロアリ人虫たちの女王──虫竜クインアントその人だった。

子宮にいる胎児に語りかける声、寝かしつける際の子守唄の声、絵本を読み聞かせる声、一緒に笑う声……母親は様々な場面で声を使ってわが子を育てます。子供にとってそれは何よりも身近な存在であり、それに触れる事で最も安心できる情報の一つでしょう。そこでクインアントちゃんの初登場シーンでカニ人がその声を耳にした際に、あたかも子供が優しい母親の声を聞いた時のようにリラックスした状態になるというシーンを挿入したのです(読んで下さった皆さんに伝わっていたかは分かりませんが)。だからミルメコレオちゃんの説明を読んだ時に嬉しくなりました。カニ人さんもクインアントちゃんの「声」には何らかの力があると認識している。抑えるべきポイントとしては大きく間違ってはいなかったのだ、と思いました。

見た目も能力も魅力的なミルメコレオちゃん。性格が明かされる機会はあるのか、彼女の冒険は描かれるのか……あれこれと想像するのが楽しみですね。今後の活躍に期待したいと思います。

次回の二次創作小説は前々から書きたかった海底警察モノに挑戦してみたいと思います。現在プロットを練り直している最中ですので、月内に書き上げられれば……くらいのペースでやっていきたいと思います。

それでは今回はこの辺で。

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