マクダル・レノン

旧帝大院政治哲学修士の地方公務員。留学中に出会った香港人の学友をきっかけに香港の民主化…

マクダル・レノン

旧帝大院政治哲学修士の地方公務員。留学中に出会った香港人の学友をきっかけに香港の民主化運動にどっぷり。普通の人たちが通りで抗議活動をして、あちこちから催涙ガスや時に実弾が飛んでくる、そんな日常に何があるのか知ってほしくてnoteを始めました。

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  • 雨傘運動から立ち上がった2016年立法会選挙のまとめ

    2020年9月6日に控える香港立法会選挙。2019年から続く民主化デモの影響で大きな歴史の転換点となると思われていました。しかしながら強権的・脱法的手法により6月30日に中国政府が香港に国家安全維持法を定め、民主派の活動が封じられてしまいました。そして民主派立候補者の資格はく奪と選挙の延期。このような状況ではありますが、前回選挙でどのようなことがあったのか、振り返ってみたいと思いました。2016年に行われた前回の香港立法会選挙では、雨傘運動から立ち上がった若者たちが前回の立法会選挙を戦っています。立候補して当選したもの、敗北したもの、それを積極的に支えたもの、遠い外国からささえたもの。様々なタイプの若者を、友人としてずっと近くで伴走してきた同世代の筆者がメディアインタビューでは聞けない本音をインタビューしています。

最近の記事

【香港】周庭のTwitter再開、元立法会議員梁頌恒の投獄

2020年9月2日は2つのことが起こりました。 いずれもとても重要なことだと思いますので、それぞれについて書いていきたいと思います。 国家安全法違反容疑で逮捕された周庭(アグネス・チョウ)Twitter再開一つは香港版国家安全法違反の疑いで逮捕され、その後保釈されている周庭(アグネス・チョウ)さんがTwitterを再開したことです。 彼女のTwitterはフォロワー数50万以上を誇り、ほぼ日本語の投稿によって香港情報を伝えています。 6月末の国家安全法(国家安全維持法

    • 香港国家安全法で浸食される学問の自由:現役高校教員インタビュー

      2020年6月30日夜遅くに香港国家安全維持法が成立して2か月が経過した。 翌7月1日には2019年以来のデモ隊のスローガン「光復香港 時代革命(香港を取り戻せ、革命の時だ)」の横断幕を掲げた者が逮捕されたり、元デモシストの周庭(アグネス・チョウ)や民主派寄りメディアであるアップルデイリーの創業者である黎 智英(ジミー・ライ)が逮捕されるなど暴政が続いている。 香港を脱出する動きもあり、アメリカ下院外交委公聴会において香港の状況を映像で証言した羅冠聰(ネイサン・ロー)がイ

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      • 取材力の無い日本メディアが追いやった周庭(アグネス・チョウ)の逮捕

        いつもは客観的に、事実ベースで、法律や学説に依拠しながら書くことを心がけている。 でも今日は、少し思っていることをそのまま書きたいと思う。 日本のメディアにはいろいろ言いたいことがあって。 正直北京にいて中国政府からのメディアリリースの翻訳を日本の本社に送ってるだけの自称新聞記者とか、上海にいて中国メディアの報道を見てコピペ記事書いてる自称ジャーナリストとか。 外国のメディアが前線で体張りながら本当にジャーナリズムのために取材してるのに、日本のメディアはいつになっても

        • 香港立法会選挙へ立候補する民主派候補者に当局から政治スタンスを問うレターが届く

          国安法の支持とアメリカへの反対を強要7月25日、香港の選挙管理委員会から民主派の立候補者に対し、国家安全維持法の支持とアメリカの対香港措置への不支持等を署名させるレターが届きました。 現地報道によれば少なくとも9人の民主派立候補者に届いているということです。 公民党を率いるアルバン・ヨング(楊岳橋)は自身のフェイスブックで明らかにしている。 彼の選出地区である新界東の選挙管理委員は「香港基本法に照らせば、アルバン・ヨングが被選挙資格を有しているとどうして言えようか」と発

        【香港】周庭のTwitter再開、元立法会議員梁頌恒の投獄

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        • 雨傘運動から立ち上がった2016年立法会選挙のまとめ
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          国家安全維持法施行後の香港を記録する【最後の歴史とならないことを祈りながら】

          2020年6月30日の午前中に中国全人代常務委で香港国家安全維持法が可決され、その内容が明かされないまま、同一23時に香港で施行されました。 香港の法律にあるはずの英語版がなく、中国式の言葉遣い混合で書かれたその法案は、中国が作成した法案を香港風に少しだけアレンジしたハリボテそのもので、かえってそれが現在の香港を的確に表しているような気もします。 翌日、日本の産経新聞には1面トップで「香港は死んだ」の文字が掲げられましたが、このノートでは葬送も無く葬り去られた香港で、その

          国家安全維持法施行後の香港を記録する【最後の歴史とならないことを祈りながら】

          【香港版国家安全法全文翻訳】香港国家安全維持法の全条を和訳【国家安全法とは】その②

          第1条~第19条はこちらの記事へ 第三章 罪と罰第一節 分裂国家罪第20条国家分裂や国家統一の破壊を目的とする以下の行為を組織、計画、実施したもの、およびそれらに参加したものは、武力の行使および武力による威嚇の有無に関わらず罪となる。 (1)香港または中国のその他の地域を中国から分離させること (2)香港または中国のその他の地域の法的地位を違法に変更すること (3)香港または中国のその他の地域を外国の支配に置くこと これらの罪をおかしたものは、その主要な人物であるか、重大な

          【香港版国家安全法全文翻訳】香港国家安全維持法の全条を和訳【国家安全法とは】その②

          【全文翻訳】香港版国家安全法(香港国家安全維持法)の全条を和訳【国家安全法とは】その①

          タイトルのとおり香港版国家安全法(香港国家安全維持法)の全文を翻訳していきます。 ただし各条文ごとにどのようなことが書いてあるのかの和訳で、完訳ではありません(法律の完訳なんて恐れ多いことはできません)。 これを読んでいただくことで、香港版国家安全法のしっかりとした理解をもとにその法律自体の評価やこれから起こるであろう様々な事象を批評できるようになると思います。 香港国家安全維持法は6月30日夜11時に施行本法律は2020年6月30日の午前中に全人代常務委で162票の満

          【全文翻訳】香港版国家安全法(香港国家安全維持法)の全条を和訳【国家安全法とは】その①

          【速報】香港版国家安全法6月30日に全人代で可決後同日中に既に施行

          日本のメディアでは7月1日から施行と言っていますが、中国側でも香港側でも6月30日公布、同日中に施行と報じられています。※新華社が報じている中国側での施行令は本文後に掲載しています。 7月1日の返還日に一切の民主派活動を認めないという強い意志を感じます。 香港がイギリスから中国へ返還された日にあたる7月1日には例年大規模な民主化デモが行われています。 今年は民主派からのデモ申請が認められず、ツイッターデモ(インターネット上での抗議活動)が呼びかけられていましたが、今現在

          【速報】香港版国家安全法6月30日に全人代で可決後同日中に既に施行

          17【香港事情】中国の法治概念と西洋的な法治概念の違い【香港版国家安全法】

          中国全人代が”香港に代わって”香港版国家安全法を制定し導入する流れにあり、香港返還日にあたり7月1日より前に成立すると言われています。 国家安全法(または同様のもの)は世界各国に存在するもので、それ自体は問題になりません。 テロ行為や大規模な暴力行為など、国民の安全を驚かすおそれのある行為を取り締まるものです。 しかしながら中国において国家安全法が語られる場合、我々日本人が一般的に想像する方法で想像してはいけません。 そもそも法治の概念が異なるからです。 西洋的な法

          17【香港事情】中国の法治概念と西洋的な法治概念の違い【香港版国家安全法】

          16 香港版国家安全法制の内容をわかりやすく簡単解説【国家安全維持法の経緯と概要】

          6月30日に公布同日施行された香港国家安全維持法の全文和訳を行っています。 >【全文翻訳】香港版国家安全法(香港国家安全維持法)の全条を和訳【国家安全法とは】その① 基礎的な内容はこちらの記事もご参照ください。 >12 中国と香港の一国二制度、香港基本法、国家安全法について知っていただきたいこと >13 中国による国家安全法制の香港適用および中国経済について 国家安全法とは?中国における状況も確認 国家安全法(国家安全保障法)とは一般的にテロや国家転覆など非民主的な

          16 香港版国家安全法制の内容をわかりやすく簡単解説【国家安全維持法の経緯と概要】

          【2020年香港立法会選挙】雨傘運動から立ち上がった2016年立法会選挙のまとめ

          2020年9月6日に香港の将来を占う重要な立法会選挙があります。 (立法会選挙については次の記事をご覧ください→2020年9月の香港立法会選挙について) 香港の立法会選挙は4年に1回開催されます。 前回4年前は2016年。 2014年には多くの学生が普通選挙を求めて立ち上がった雨傘運動がありました。 雨傘運動に敗れた彼ら彼女らは2015年の区議会選挙、2016年の立法会選挙と政治の場へと戦いの場を移したのでした。 そう、昨年2019年から2020年にかけての流れと

          【2020年香港立法会選挙】雨傘運動から立ち上がった2016年立法会選挙のまとめ

          9-2 2020年第7回香港立法会選挙方式について発表

          立候補表明期間や選挙区ごとの定数が明らかに香港政府は6月12日の官報で2020年9月6日に予定されている香港立法会議員選挙の方式などについて発表しました。 それによれば立候補期間は7月18日から31日までです。 35席ある地域選挙枠では5つの選挙区に分けられ、各選挙区からの当選議席数は前回と同じで次のとおりです。 香港島6  九龍西6  九龍東5  新界西9  新界東9 全70議席のうち残りの35議席は29の職能団体から選出されます。 2020年香港立法会議員選挙を

          9-2 2020年第7回香港立法会選挙方式について発表

          15 中英共同声明と香港基本法を改めてしっかりと確認する(後半)

          香港基本法は香港のミニ憲法と言われています。 香港の法体系はこの香港基本法が頂点いあり、その下に条例があります。 注意しなくてならないのは、香港基本法自体は中国の国内法だということです。 それでは香港基本法の抜粋箇所を見ていきます。 なお、和訳はアジア経済研究所 資料 香港特別行政区基本法 に負っています。 香港基本法(関係箇所抜粋)第3条  香港特別行政区の行政機関および立法機関は、香港永住民が本法の関係規定に照らして組織する。 (ポイント) 中国が香港に導

          15 中英共同声明と香港基本法を改めてしっかりと確認する(後半)

          14 中英共同声明と香港基本法を改めてしっかりと確認する(前半)

          中国の全人代が突如として香港への国家安全法制導入を表明してから、盛んに香港の政治制度について議論がなされています。 このような場合、一次文書に目を通しておくことはとても重要です。 現在の香港の基礎となっている中英共同声明と香港基本法をしっかりと理解してこそ、国際社会としていかに中国共産党の行っていることが違法なことなのか指摘ができると思います。 最近香港に興味を持った人にも効率的に読んでもらえるよう、最近の話題に関係のある個所のみ抜き出しました。 前半は中英共同声明に

          14 中英共同声明と香港基本法を改めてしっかりと確認する(前半)

          13 中国による国家安全法制の香港適用および中国経済について

          本題に入る前に香港とアメリカの対比本題とは少しそれますが、面白い対比があったのでお届けします。 アメリカでは現在白人警察官により黒人市民が殺されたことについて、人種差別だと反対する抗議が起こっています。 これが暴動に発展し、市民は商店などで略奪を行っています。 一方、国家安全法制や国歌法に反対する市民の抗議活動が行われている香港では、市民排除のために出動した武装警察が商店へ押し入り略奪を働いています。 中国による国家安全法の香港への適用決定について28日に全人代によっ

          13 中国による国家安全法制の香港適用および中国経済について

          12 中国と香港の一国二制度、香港基本法、国家安全法について知っていただきたいこと

          新型コロナウイルスの影響で開催が遅れていた中国全国人民代表大会(中国の議会)が5月22日にようやく開幕しました。 例年は3月初旬に開幕していましたので、2か月以上遅れての開幕となります。 ここで香港版の国家安全法が議題に上がり、そのニュースは全世界を駆け巡っています。 香港の市民にとってもこれは全くの寝耳に水の出来事です。 感染症対策であるとか、経済政策について話し合われるのだろうと予想している人がほとんどでした。 このタイミングで中国側が国家安全法を香港に適用しよ

          12 中国と香港の一国二制度、香港基本法、国家安全法について知っていただきたいこと