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創作のかけら:「コマクサ」

⛰️

「あなたと私の二人共が、何の間違いも起こり得ないくらいに老いて、十分に枯れたら、もう一度会わせてくださるんですって。

まったく、神様も酷なことをなさるわよね。
せっかく、あれから私も、少しは綺麗になれた時期もあったと言うのに。
あなたにちっとも見てもらえないまま、散って萎びて茶色くなってしまうなんて切なくて。

でもね、
北アルプスで見た、コマクサのことを、
ふと思い出したの。

高山植物って、人間にも他の生き物たちにも
まったく気付かれないだろうなってところでも
全力で花を咲かせてるのよ。

『それがどうした。それ、なにか関係ありますか。誰にも見てもらえないからって、咲かないなんてあり得ないでしょう』

ハッとさせられたわ。

だから、私も、咲けるだけ咲いたら、笑って若さを手放すことにしたのよ。
老いれば老いるほど、あなたに会える日が近づくというのなら、悪くないわ。

とにかく、余計なものをとことん濾過して
純度を限界まで上げるおつもりだそうです。
時間、空間、順番もすべて粉々に砕いて。
望むところだわ」

🪷

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